

頭痛と不眠も気にならなくなった
現在は午前中のみマンション管理のパート勤務をしているが、現役時代は海外や日本各地への出張が多く、長年にわたり多忙な日々を送ってきた経歴がある。学生時代にはサッカーやアメリカンフットボールに打ち込み、活発に身体を動かしてきた。体力には自信があり、大きな病気をすることなくこれまで過ごしてきたという自負もあった。
現在は犬を飼っており、毎日の散歩が日課となっている。散歩は健康維持だけでなく、生活の楽しみの一つでもあり、できる限り継続したいと考えている。
もともと仕事で身体に負担がかかった際には腰痛が出ることはあったが、休養や時間の経過とともに自然に軽快していた。しかし、約3年前から特別なきっかけもなく右股関節に痛みが出現するようになった。はじめは一時的なものと考えていたが、次第に痛みには波があることに気づいた。調子の良い時は問題なく歩けるものの、悪い時には歩行時に違和感や痛みが強まり、犬の散歩を休まざるを得ない日も出てきた。
さらに、右股関節の痛みが出始めた時期と前後して、肩こりや頭痛、不眠といった症状も現れるようになった。夜は寝つきが悪く、眠れても途中で目が覚めることが増え、十分に休息が取れていない感覚が続くようになった。痛みと睡眠不足が重なることで日中の疲労感も抜けにくくなり、体調全体が徐々に低下していくことを実感していた。
年齢の影響もあるのではないかと考えつつも、「年のせい」として片付けてよいものか疑問を感じるようになった。股関節の痛みは年々持続する時間が長くなり、不眠も慢性化しつつあった。このままでは日課である散歩が続けられなくなるのではないかという不安も生じ、何とか改善する方法はないかと考えるようになった。
これまで大きな治療を受けることなく過ごしてきたが、現状を変えるためには何らかの行動が必要であると感じ、インターネットで股関節痛や不眠、身体の不調について調べ始めた。その過程でYouTubeを通じて当院の存在を知ることとなった。動画や情報を閲覧する中で、単に痛みのある部位だけを見るのではなく、身体全体のバランスや神経の働きに着目する考え方に関心を抱いた。
一度診てもらいたいと思い、来院に至る。
右仙腸関節の可動制限
仙骨周辺の浮腫
後頭下筋の過緊張
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD6レベルで、頸の椎間板の段階は慢性的なD6レベルが確認された。
初期集中期では長期の慢性化が考えられてたため、週3回のケアから始めた。
3週目(6回目のアジャストメント)には、睡眠が以前より安定して取れていて朝すっきり起きれるとのこと。右股関節の痛みも1時間以内の散歩であれば問題なく出来るようになってきた。右仙腸関節の浮腫も減少してきて、右腰部筋緊張も軽減してきた。
5週目(9回目のアジャストメント)には、日常生活や長時間の散歩も右股関節は違和感を感じなくなってきた。前かがみの仕事が続いた際に腰部に張りを感じるが、次の朝には回復しているとのこと。右仙腸関節も可動してきて、S2レベルでの体表温度誤差もなくなってきた。L5の可動制限や体表温度誤差は残存していたため、L5に移行した。また週1の経過で診ていくこととした。
13週目(15回目のアジャストメント)には、。睡眠や肩コリもあまり感じなく疲れたとしても次の朝にはしっかり回復し。右股関節も問題なく愛犬とたくさん散歩もできていると喜んでいた。
現在も定期的なカイロプラクティックケアを希望しており、メンテナンスをしていくこととした。
本症例は、腰部および頸部ともに椎間板の慢性変化が強く、長期にわたる神経への負担が示唆された状態であった。初診時には仙骨周辺に浮腫が確認され、腰部全体の皮膚には乾燥感がみられたほか、右腰部起立筋および後頭下筋には明らかな過緊張が認められた。また右環椎横突起周囲にも浮腫が触知され、骨盤から上部頸椎にかけて神経機能の乱れが存在している可能性が考えられた。体表温度検査ではS2、L5、T7、後頭下に明らかな左右差が確認され、さらに右仙腸関節、腰椎5番、頸椎1番に可動制限が認められたことから、骨盤および上部頸椎を中心とした神経伝達の不均衡が全身の状態に影響していたと考えられる。
レントゲン評価では、腰椎および頸椎の椎間板段階はいずれも慢性的なD6レベルであり、長期間にわたる構造的ストレスが蓄積していたことが示唆された。このような慢性度の高い状態では、神経の回復には一定の時間と継続的な刺激が必要になるため、初期集中期として頻度を高めたケアを行ったことが、神経機能の回復を促す上で重要であったと考えられる。
ケアの継続に伴い、睡眠の安定や朝の目覚めの改善がみられ、右股関節の痛みも徐々に軽減していった。散歩などの日常的な活動が問題なく行えるようになったことに加え、右仙腸関節周囲の浮腫の減少や右腰部起立筋の過緊張の軽減が確認され、骨盤周囲の機能回復とともに神経伝達が整い始めたことが示唆された。その後、日常生活や長時間の歩行でも股関節の違和感が生じなくなり、前かがみの作業による一時的な腰部の張りも翌日には回復するようになったことから、身体の回復力そのものが高まってきたと考えられる。右仙腸関節の可動性が回復し、S2レベルの体表温度誤差も消失したため、評価の焦点は腰椎5番へと移行した。
さらに経過が進むと、睡眠や肩こりの不調もほとんど感じなくなり、疲労があっても翌朝には回復する状態が維持されるようになった。右股関節の問題もみられなくなり、愛犬との散歩を十分に楽しめるまでに回復したことから、骨盤を中心とした神経機能の安定が全身の回復力の向上につながったと考えられる。
本症例は、長期にわたり慢性化していた構造的ストレスが存在する状態であったが、初期集中期に十分な頻度でケアを行ったことで神経の回復が比較的スムーズに進み、局所症状だけでなく睡眠や全身の回復力の改善につながった一例である。


執筆者塩川カイロプラクティック金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。