更年期の身体の変化と向き合う|女性の健康を支えるカイロプラクティック
仕事に集中できない、急に顔がほてる、以前より疲れやすくなった。十分に休んでいるつもりでも、思うように身体が動かず、仕事や日常生活に影響を感じることはありませんか?
40代から50代にかけて迎える更年期は、女性ホルモンの分泌が大きく変化する時期です。ほてりや発汗、動悸、頭痛、疲労感、睡眠の問題、気分の変化など、その現れ方はさまざまで、集中力や判断力、日々の活動にも影響することがあります。
経済産業省の試算によると、更年期症状による女性の経済損失は年間約1.9兆円と推計されています。この数字は、症状による労働生産性の低下や離職などが、本人だけでなく職場や社会にも影響していることを示しています。
更年期の不調は、単に年齢を重ねたことによる変化でも、気持ちの持ち方だけで解決できる問題でもありません。女性ホルモンの変動は、脳の働きや自律神経による身体の調節にも関係し、さまざまな身体の反応につながります。
今回の記事では、更年期に女性の身体で起きている変化と仕事や日常生活に現れる影響について解説します。さらに、カイロプラクティックの視点から脳と神経の働きに目を向け、身体に備わる自然治癒力を大切にしながら自分の身体を理解することについて考えていきます。
■ 女性ホルモンの変化は、脳と自律神経の働きにも関係している
更年期の身体の変化を理解するためには、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」に注目する必要があります。
エストロゲンは、月経や妊娠に関わるだけでなく骨や血管、脂質代謝、皮膚、脳の働きなど、全身のさまざまな機能に関係しています。そのため、閉経に向かう過程でエストロゲンの分泌量が大きく変化すると身体にはさまざまな変化が現れることがあります。
一般的に更年期とは、閉経を挟んだ前後約5年間ずつ合わせて約10年間を指します。日本人の平均閉経年齢は約50.5歳とされていますが閉経の時期には個人差があります。更年期に入ると卵巣の働きが徐々に変化し、エストロゲンの分泌量も大きく変動しながら低下していきます。
この変化に深く関係しているのが、脳の「視床下部」です。
視床下部は、体温や食欲、睡眠、ホルモン分泌、自律神経の働きなどを調整する重要な領域です。脳の下垂体や卵巣とも連携しホルモン分泌の調節に関わっています。また、身体の内外から届く情報をもとに体温や心拍、発汗などの身体機能を調整しています。
通常、視床下部は卵巣から分泌されるエストロゲンの情報を受け取りながらホルモン分泌の調整を行っています。しかし、更年期に入り卵巣の機能が低下するとエストロゲンの分泌が不安定になります。その変化は脳のホルモン調節機構にも影響します。
この影響が分かりやすく現れるものの一つがホットフラッシュと呼ばれる突然のほてりや発汗です。
視床下部には、身体の深部体温を適切な範囲に保つための調節機能があります。更年期にはエストロゲンの変動や低下に伴い、体温調節に関わる仕組みが変化しわずかな体温の変化にも身体が過敏に反応することがあります。
その結果、突然顔や上半身が熱くなったり大量に汗をかいたりすることがあります。こうした反応には脳内の神経伝達物質や神経ペプチドなども関係していると考えられています。
また、自律神経は心拍や血管の収縮・拡張、発汗など意識しなくても行われる身体の働きを調整しています。更年期に伴う体温調節の変化は、こうした自律神経の働きとも関係し動悸や発汗、ほてりなどの症状につながることがあります。
つまり、更年期は単に女性ホルモンが減少する時期ではありません。ホルモン分泌の変化が脳の調節機能に関係し自律神経を含む身体全体の働きにも影響する時期なのです。
■ 更年期の不調には個人差がある。ホルモンと自律神経、身体の関係
更年期にはさまざまな身体の変化が現れますが、同じ年代であっても、症状の種類や強さ、続く期間は人によって異なります。ほとんど不調を感じずに過ごす方がいる一方で、ほてりや発汗、頭痛、疲労感、不眠などが重なり、仕事や日常生活に大きな影響を受ける方もいます。その違いを理解するためには、女性ホルモンだけでなく、自律神経や筋骨格系、生活環境など、身体に関係する複数の要素に目を向ける必要があります。
例えば、女性ホルモンの変動は、視床下部を介した体温調節の仕組みに関係します。そこに睡眠不足や心理的なストレス、仕事や家庭での負担が重なると、疲労感や気分の変化、睡眠の問題などが日常生活に現れやすくなることがあります。
自律神経は、心拍や血圧、血管の働き、発汗、消化などを調整しています。活動しているときには身体を活動に適した状態にし、休息するときには回復に向けた働きを支えています。
しかし、睡眠不足や長期間のストレス、生活リズムの乱れなどが続けば、休息を十分に取れず、身体の負担を感じやすくなることがあります。更年期のホルモン変動と、こうした日常生活の要因が重なることで、不調の感じ方にも違いが生まれます。さらに、身体の構造や動きにも目を向ける必要があります。
更年期以降は、エストロゲンの低下に伴って骨量が減少しやすくなります。また、年齢や活動量、筋力、これまでの身体の使い方なども関係し、肩や首、腰、関節などに痛みや違和感を感じる方もいます。こうした筋骨格系の問題は、姿勢や動作、日常生活の負担とも関係しています。例えば、長時間同じ姿勢で仕事を続けることや、身体を動かす機会が減ることは、筋肉や関節に負担をかける要因になります。
カイロプラクティックでは、こうした身体の状態を理解するために、神経系と筋骨格系の関係に着目します。背骨や関節の動き、姿勢、筋肉の状態などを確認し、身体全体の機能を捉えることを大切にしています。
更年期の不調は、仕事のパフォーマンスにも影響することがあります。睡眠の質が低下して疲労が十分に回復しなければ、日中の集中力や判断力に影響することがあります。突然のほてりや発汗、動悸などが起きれば、会議や接客、外出などの予定を変更せざるを得ない場合もあります。また、身体の痛みや疲労感が続くことで、仕事に集中しにくくなることも考えられます。
周囲からは普段どおりに見えていても、本人はさまざまな不調を抱えながら仕事を続けていることがあります。更年期の健康課題は、本人の努力だけで解決すべき問題ではありません。
つらい症状がある場合には、婦人科などの医療機関で相談することが大切です。症状や生活への影響に応じて、ホルモン補充療法や漢方薬、生活習慣の見直しなど、適切な対応を検討できます。更年期だと思っていた症状に、甲状腺の病気や貧血など別の原因が関係している場合もあります。
また、職場や家庭で体調について相談できる環境をつくり、休息や業務の調整、家事や育児の分担などを考えることも重要です。
更年期の不調を理解するためには、ホルモンの変化だけを見るのではなく、自律神経の働き、筋骨格系の状態、日々の生活環境まで含めて身体全体を捉えることが大切です。
■ カイロプラクティックから考える、脳と神経、身体に備わる自然治癒力
ここまで見てきたように、更年期には女性ホルモンの変化をきっかけとして脳や神経、身体全体の働きにさまざまな変化が関係します。
私たちの身体は、脳と神経を通じて身体の内側や外側から届く情報を受け取りその状況に応じて反応しています。体温を調節することも姿勢を保つことも身体を動かすことも、こうした情報の伝達と調整によって支えられています。
カイロプラクティックでは、脳と神経の働きに着目し特に神経系と筋骨格系の関係を大切にしています。
身体の状態を評価するときには、姿勢や背骨・関節の動き、筋肉の状態などを確認し身体の構造と機能を総合的に捉えていきます。背骨は身体を支える構造であると同時に脊髄を保護する役割も担っています。そのため、脊柱の構造や運動機能を理解することはカイロプラクティックにおける重要な専門領域の一つです。
ここで私が大切にしている考え方が身体に本来備わっている自然治癒力です。自然治癒力とは、傷ついた組織を修復したり身体の内部環境を一定に保とうとしたりする生体に備わった回復や調整の働きです。私たちが意識しなくても身体の中ではさまざまな機能が連携しながら働き続けています。
カイロプラクティックでは、身体を部分ごとに切り離して考えるのではなく神経系と筋骨格系、そして身体全体の機能のつながりを大切にしています。目の前の症状だけに注目するのではなく姿勢や関節の動き、筋肉の状態、日常生活で受けている負担などを確認しその人の身体を理解することを重視します。
ただし、更年期のほてりや発汗、不眠などに対してカイロプラクティックのアジャストメントが女性ホルモンの分泌を調整したり、更年期障害そのものを改善したりするという科学的根拠は確立されていません。背骨を整えることで自律神経やホルモンの働きが正常化すると断定することもできません。
更年期の症状が強い場合や日常生活に支障が出ている場合には、婦人科などの医療機関で適切な評価を受けることが必要です。カイロプラクティックも医療機関での診断や治療に代わるものではありません。
一方で、更年期を迎える時期には、肩や首、腰の痛み、関節の違和感、姿勢や動作の変化など筋骨格系に関する悩みを抱える方もいます。そうした身体の状態を確認し必要に応じて医療機関への相談を勧めることも、身体全体の健康を考えるうえで大切です。特に骨粗鬆症や骨折のリスクがある場合には身体の状態に応じた慎重な評価が欠かせません。
更年期は、これまでの身体の状態や生活習慣を見直す機会でもあります。以前と同じように動けないと感じたとき、それを単に年齢のせいにするのではなく何が変化しているのか自分にはどのようなケアや支援が必要なのかを考えてほしいと思います。
私は、健康とは単に不調がない状態ではなく自分の身体を理解し、その時々の状態に合わせて健康を考え選択していけることだと考えています。
仕事や家庭での役割を大切にすることと自分の身体を大切にすることは、どちらか一方を選ぶものではありません。自分の内側に目を向け、身体の変化に気づくこと。その気づきから行動を変え自分に必要な健康の選択をしていくことが、これからの人生を支える力になると思います。
そして、その一人ひとりの意識が家族や職場、周囲の人にも広がり互いの健康を尊重できる社会につながっていく。自分の内側から健康を考え、その価値を周囲へ広げていくことがインサイドアウト健康文化です。

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師の免許を取得後、整骨院に勤務。様々な講習会に参加している中で本来のカイロプラクティックの考え方に興味を持つようになり塩川スクールを受講する。カイロプラクティックで地域や社会に貢献したいという思いが強くなり、日本のカイロプラクティックの発展に尽力してまいります。