女性の眠りを守るために。ホルモン変動と睡眠不足を社会で考える
毎日忙しく過ごす中で、自分の睡眠を後回しにしていませんか?
仕事や家事、育児などやらなければならないことが重なり、気づけば睡眠時間が短くなっている。休日にまとめて眠っても疲れが十分に取れない。そんな経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
女性の身体は、月経周期や妊娠・出産、更年期など、ライフステージに応じてホルモンの分泌が変化します。その影響は体温や気分だけでなく眠気や睡眠の質にも及びます。つまり、女性にとって睡眠は単に生活習慣を整えればよいという問題だけではありません。
実際に、2024年の国民健康・栄養調査では、20〜50代の女性のうち6時間未満の睡眠時間で過ごしている人は32.4〜49.1%に上っています。多くの女性が十分な睡眠を確保できていない現状があります。
睡眠不足を個人の努力だけで解決しようとするのではなく女性の身体の特徴を理解し、仕事や家庭、社会全体で睡眠を大切にできる環境を考えることも必要です。
今回のコラムでは、女性ホルモンの変動と睡眠の関係、睡眠不足が身体に及ぼす影響を整理しながら日常生活でできる工夫を紹介します。さらに、カイロプラクティックの視点から脳と神経の働きや身体に備わる自然治癒力に目を向け、自分の身体を知ることの大切さを考えていきます。
■ 女性ホルモンの変化は、眠りにも影響している
女性の睡眠を考えるうえで知っておきたいのが、月経周期に伴う女性ホルモンの変化です。
女性ホルモンには、主にエストロゲンとプロゲステロンがあります。この2つのホルモンは月経周期に合わせて分泌量が変化し子宮や卵巣だけでなく、体温や気分、身体のさまざまな働きにも関係しています。
例えば、排卵後から月経前にかけてはプロゲステロンの分泌が増加します。この時期には基礎体温が上昇し、普段より身体に熱がこもりやすくなります。人の身体は、深部体温が徐々に低下する過程で眠りに入りやすくなると考えられています。そのため、排卵後の体温変化が寝つきや睡眠の感覚に影響する場合があります。
また、月経前にはホルモンの変動に伴い気分の落ち込みやイライラ、腹部の不快感、頭痛などが現れることがあります。こうしたPMS(月経前症候群)の症状があると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりすることもあります。一方、エストロゲンも睡眠や体温調節、気分などに関係しています。月経周期に伴う分泌量の変化によって睡眠の状態や日中の調子に違いを感じる方もいます。
さらに、妊娠中はホルモンの変化に加え、身体の負担や頻尿、姿勢の変化などが睡眠に影響します。更年期には、エストロゲンの分泌が大きく変化しほてりや発汗、気分の変化などによって眠りが妨げられることがあります。
このように、女性の睡眠は月経周期やライフステージによって変化する可能性があります。ただし、睡眠の悩みがすべてホルモンによって起こるわけではありません。生活環境や心理的な負担、貧血など、ほかの要因が関係している場合もあります。
特に月経量が多い方や強い疲労感がある方では鉄不足や貧血が隠れていることもあります。鉄不足は、むずむず脚症候群など睡眠を妨げる状態とも関係するため、気になる症状が続く場合は医療機関で相談することが大切です。
自分の睡眠の変化を月経周期やライフステージと合わせて振り返ることは、身体の状態を理解するための手がかりになります。
■ 睡眠不足は、身体だけでなく日中の生活にも影響する
睡眠は、単に身体を休ませるための時間ではありません。日中に得た情報を整理したり記憶を定着させたりするほか、心身の働きを維持するためにも重要な役割を担っています。
眠っている間も、脳や神経、内分泌系、免疫系などは働き続けています。身体は睡眠中にさまざまな機能を調整し、翌日の活動に備えています。一方、睡眠時間が不足すると日中の眠気だけでなく、集中力や判断力の低下、気分の不安定さなどにつながることがあります。仕事や学業でのミスが増えたり、普段なら気にならないことに強いストレスを感じたりすることもあります。
睡眠不足が続くことは生活の質を低下させるだけでなく、長期的には生活習慣病などの健康リスクとも関係します。睡眠は毎日の活動を支える健康の基盤の一つです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人はおおむね6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが示されています。ただし、必要な睡眠時間には個人差があり時間だけでなく、日中に強い眠気がないか十分に休めた感覚があるかなども大切な目安になります。
睡眠を確保するためには、まず起床時刻をできるだけ一定にし朝に光を浴びる習慣をつくることが役立ちます。朝の光は体内時計を調整し夜に自然な眠気が訪れるリズムを整える助けになります。
夕方以降はカフェインの摂取を控え、就寝前にはスマートフォンや明るい照明による刺激を減らすことも一つの方法です。入浴や軽いストレッチなど自分がリラックスできる時間をつくることも、眠る前の準備になります。
また、日中に適度な身体活動を取り入れることも大切です。昼寝をする場合は、長時間にならないよう20〜30分程度を目安にし夕方以降は避けると夜の睡眠に影響しにくくなります。
ただし、睡眠の時間を確保したくても仕事や家事、育児などの事情によって難しい方もいます。個人の生活習慣を見直すだけでは解決できない場合もあるため、家庭内で家事や育児を分担したり職場で休息を取りやすい環境を整えたりすることも必要です。
睡眠は、時間が余ったときに取るものではありません。心身の健康を維持するために必要な時間として日々の生活の中で大切にしていくことが重要です。
■ 睡眠を通して、自分の身体の働きに目を向ける
私たちの身体は、眠っている間も休むことなく働いています。呼吸や心拍、体温などを調整しながら日中の活動で受けたさまざまな刺激に対応しています。
こうした身体の働きを支えているのが脳と神経です。脳は身体の内側や外側から届く情報を受け取り、それらを統合しながら状況に応じた反応を調整しています。自律神経もその一部として活動時と休息時の身体の状態を調整しています。
睡眠には、体内時計や睡眠を促す仕組み、体温調節、ホルモンの働きなど、複数の要素が関係しています。つまり、眠りは一つの器官だけで成り立つものではなく身体全体の働きと関係しているのです。
カイロプラクティックでは、脳と神経を通じた身体の働きに着目し、身体に本来備わっている回復や調整の働きを大切にしています。こうした身体が持つ力を、カイロプラクティックでは自然治癒力という視点から捉えています。その働きを理解するためには、目の前に現れている症状だけを見るのではなく、身体全体の状態や日常生活の中で受けている負担にも目を向けることが大切です。
例えば、睡眠の悩みがあるときには月経周期によって眠りに変化があるのか、仕事や家事による負担が続いていないか、身体の緊張や疲労を感じていないかなど、さまざまな側面から自分の状態を振り返ることができます。睡眠の問題にはさまざまな原因があり必要に応じて婦人科や睡眠外来などの医療機関に相談することも大切です。
大切なのは、眠れないという結果だけで自分の身体を判断するのではなくどのようなときに眠りにくくなるのか、日中の調子はどう変化しているのか、自分の身体が発しているサインに気づくことです。
女性の身体は年齢やライフステージ、日々の環境によって変化しています。その変化を知ることは自分に必要な休息や支援を選ぶための第一歩になります。そして、自分の睡眠や身体の状態を大切にすることは自分一人の課題ではありません。家族や職場、社会の中で互いの健康を理解し、誰もが安心して休息を取れる環境をつくることにもつながります。
身体の内側に目を向け、自分の身体を知ることから健康を考える。その一人ひとりの気づきを大切にすることがシオカワグループの目指すインサイドアウト健康文化につながっていくと考えています。

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師の免許を取得後、整骨院に勤務。様々な講習会に参加している中で本来のカイロプラクティックの考え方に興味を持つようになり塩川スクールを受講する。カイロプラクティックで地域や社会に貢献したいという思いが強くなり、日本のカイロプラクティックの発展に尽力してまいります。