なんとなく疲れやすいのはなぜ?|女性の鉄不足と身体の酸素運搬
朝から身体が重い。
仕事に集中しようとしてもなかなか頭が働かない。
階段を上るだけで息が切れる。
そんな日が続いていても、「忙しいから仕方ない」「女性ならよくあること」と、いつものこととして過ごしている方もいるかもしれません。
仕事や家事、育児など、日々の役割をこなす中で自分の不調は後回しになりがちです。つらさを感じていても休むほどではないと思ったり、周囲に迷惑をかけたくないと我慢したりすることもあるでしょう。
しかし、こうした不調を我慢することが当たり前になっているとしたら、それは個人だけの問題ではありません。女性の健康課題は、日常生活や仕事で本来発揮できる力にも関わり日本社会全体が考えるべき課題の一つです。
その背景を知るうえで考えたいのが鉄不足です。鉄は血液が全身に酸素を届けるために欠かせない栄養素です。鉄が不足すると、疲労感や息切れ、めまい、集中力の低下などが現れることがあります。
日本の健康診断受診者約41万人を対象とした研究では、女性の約19.7%に貧血が認められました。20〜40代女性でも約17.9%に貧血があり、そのうち約6割は、過去に貧血を指摘されていなかった人でした。健康診断を受けた人のデータではありますが貧血に気づかないまま過ごしている人がいることを示しています。
女性の健康課題による社会全体の経済損失は、年間約3.4兆円と試算されています。この数字は鉄不足だけを対象にしたものではありませんが、月経や更年期などに伴う不調が欠勤や仕事の効率低下、離職などを通じて社会にも影響していることを表しています。
身体の不調を我慢することは本人のつらさだけでなく、仕事や暮らしの選択肢を狭めてしまうことがあります。だからこそ、不調を「仕方のないこと」と片づけず、身体の仕組みを知ることが大切です。
今回の記事では、鉄が身体の中でどのような役割を担っているのか、鉄不足が日常生活や仕事にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを整理しながら、女性の健康課題を個人と社会の両面から考えていきます。
■ 鉄が不足すると、身体の活動を支える酸素運搬に影響する
私たちが身体を動かしたり、考えたり、仕事に集中したりするとき、細胞ではエネルギーが使われています。そのエネルギーをつくるために欠かせないものの一つが酸素です。
呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、血液に乗って全身へ運ばれます。この運搬を担っているのが赤血球に含まれるヘモグロビンです。ヘモグロビンは酸素と結びつき身体の各組織へ届ける役割を持っています。
鉄はヘモグロビンをつくるために必要な成分です。鉄が不足すると、ヘモグロビンを十分につくれなくなり、酸素を運ぶ働きに影響が出ることがあります。その結果、疲れやすさや息切れ、めまいなどが現れる場合があります。
月経のある女性は、月経によって定期的に鉄を失います。月経量が多い場合や食事から十分な鉄を摂れていない場合には、鉄不足が起こりやすくなります。日々の忙しさの中で食事が偏っていると知らないうちに身体に蓄えられた鉄が少なくなっていることもあります。
ここで知っておきたいのは、「鉄不足」と「貧血」は同じではないということです。身体に蓄えられている鉄が減っていても、血液検査のヘモグロビン値が基準範囲内にある場合があります。鉄の蓄えがさらに減ると鉄欠乏性貧血につながることがあります。
疲れやすさや集中力の低下は、鉄不足以外にも睡眠不足や他の病気など、さまざまな要因で起こります。症状だけで原因を判断することはできません。いつもと違う状態が続くときには医療機関で検査や相談をすることが必要です。
鉄は、身体を動かすための酸素を届ける仕組みを支えています。日々の不調を単なる疲れとして片づけず身体の中でどのような働きが行われているのかを知ることは、自分の状態を理解する手がかりになります。
■ 不調を我慢することは、本人だけの問題ではない
体調が優れない日でも仕事を休めない。家族の予定を優先して自分の受診は後回しになる。集中力が落ちていると感じても周囲に気づかれないようにいつも通りに振る舞う。こうした経験は特別なことではないかもしれません。
不調があっても仕事や日常生活を続けている状態は外からは分かりにくいものです。欠勤するほどではなくても仕事の効率が落ちたり、いつもより多くの時間や労力が必要になったりすることがあります。こうした状態は、プレゼンティーズムと呼ばれます。
女性の健康課題による経済損失の試算には、仕事を休むことだけでなく出勤していても十分に力を発揮できないことや、離職なども含まれています。年間約3.4兆円という数字は、女性の不調が本人の健康にとどまらず、職場や社会の仕組みにも関わっていることを示しています。
もちろん、経済損失という数字だけで身体のつらさや生活への影響を測ることはできません。仕事の成果だけでなく家族との時間を楽しめるか、日常の活動に余裕を持てるか、自分らしく過ごせるかということも健康に関わる大切な要素です。
「女性だから仕方がない」「みんな我慢しているから」と不調を見過ごすのではなく、必要なときに休むことや医療機関に相談することを選べる環境が求められています。本人が身体の変化に気づくことと同時に周囲や職場が健康課題を理解することも重要です。
女性の健康を考えることは女性だけの課題ではありません。家庭や職場、社会全体で、健康を損なわずに日々の役割を担える環境を考えることにつながります。
■ 身体の変化を知ることから、健康との向き合い方が変わる
疲れやすさや息切れが続いているとき、まず必要なのはその原因を確かめることです。鉄不足や貧血が疑われる場合には、医療機関で検査を受け、必要な対応につなげることが大切です。
身体の働きは一つの仕組みだけで成り立っているわけではありません。呼吸や血液の循環、筋肉の活動、脳と身体をつなぐ神経系など、さまざまな働きが関係しながら日々の活動を支えています。
カイロプラクティックは、脳と身体をつなぐ神経系に着目しています。身体の状態を知ることは、自分に起きている変化を理解するための一つの視点になります。
身体について知ると、今まで「いつものこと」と思っていた疲れや日々の過ごし方を見直すきっかけが生まれることがあります。自分の身体の傾向に気づくことで食事や休息の取り方、受診のタイミングなど選択が少しずつ変わることもあります。
シオカワグループが大切にしている「インサイドアウト健康文化」は、こうした身体への理解を大切にしています。誰かに言われたから行動するのではなく、自分の身体を知ることで日々の選択や習慣に変化が生まれていく。その積み重ねが自分らしい健康との向き合い方につながります。
女性の健康課題を考えるとき、不調を我慢することが当たり前になってはいけません。身体の変化に気づき必要なときに休息や受診を選べること。そして、その選択を周囲が理解し支えられることが大切です。
女性の健康は、女性だけが考え対処するものではありません。家族や職場、社会全体が身体の変化や健康課題について理解を深めることで不調を抱えたときにも無理を重ねずに過ごせる環境につながります。
小さな変化が広がることで誰もが不調を我慢することなく、自分らしく健康に過ごせる社会につながっていくはずです。

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院中島 恵
新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師の免許を取得後、整骨院に勤務。様々な講習会に参加している中で本来のカイロプラクティックの考え方に興味を持つようになり塩川スクールを受講する。カイロプラクティックで地域や社会に貢献したいという思いが強くなり、日本のカイロプラクティックの発展に尽力してまいります。