

2年ぶりにフルマラソン完走できた
健康維持のためにランニングを継続しており、フルマラソンへの出場を目標として身体づくりに取り組んでいる。
約10年前にぎっくり腰を経験して以来、腰に違和感が出現しては落ち着くという状態を繰り返していた。その都度、日常生活に大きな支障をきたすことはなかったため、様子を見ながら生活していたが、腰への不安は常に抱えていた。
昨年、長年ともに過ごした愛犬が亡くなったことをきっかけに、それまでにない強い腰痛が出現し、歩行も困難な状態となった。整体で施術を受けたことで症状は徐々に落ち着いたものの、この出来事を境に腰への不安はさらに強くなった。また、昨年はフルマラソンへの出場を予定していたが、腰痛のため思うように走ることができず、出場を断念せざるを得なかった。
現在もランニングは続けているが、長距離を走ると左臀部に痛みが出現するようになり、以前のように安心して走れない状態が続いている。さらに、約3年前からは冬場など身体が冷える時期になると右背部に痛みを感じるようになり、季節によって症状が現れることも増えてきた。加えて、長時間の運転では右手にしびれのような違和感を覚えることもあり、腰だけでなく全身のコンディションにも不安を感じるようになっていた。
これまで症状が出るたびにその都度対処してきたものの、根本的な改善には至らず、「また痛くなるのではないか」という不安を抱えながら生活を送っていた。しかし、もう一度フルマラソンを思い切り走れる身体を取り戻したいという思いは変わらず、再発を繰り返さないためにも身体を根本から整えたいと考えるようになった。
そのような中、身体をしっかりケアできる場所を探してインターネットで情報を検索していた際に当院を知った。当院の身体全体のバランスや神経機能を重視した考え方に共感し、「ここなら安心して身体を任せられる」と感じ、再びフルマラソンに挑戦できる身体づくりを目標として来院に至ったものである。
左仙腸関節の可動制限
左仙腸関節周囲の浮腫
左環椎横突起周囲の浮腫
レントゲン評価では、腰部レントゲン側面像では、L5が長期慢性的な段階が確認された。
頸部レントゲン側面像では、前弯カーブは減少傾向で、C6も慢性的な段階が確認された。
初期集中期では長期の慢性化が考えられてたため、週3回のケアが理想であったが、仕事の都合もあり週1回からケアを始めた。
3週目(3回目のアジャストメント)には、右背部の痛みは落ち着き日常生活は問題なくなったとのこと。
7週目(5回目のアジャストメント)には、運転を長時間運転しても右手がしびれることはなかった。
10週目(6回目のアジャストメント)には、5キロ走っても問題なかったが10キロ近くなると左臀部に鈍痛が出てきたとのこと。
14週目(8回目のアジャストメント)には、10キロ以上走っても問題なく、月間200キロ走れている。
44週目(14回目のアジャストメント)には、フルマラソンを完走出来たと喜んでいた。次はベストを出すためにさらに走りこんでいくと意気込んでいた。
その後も定期的なカイロプラクティックケアを希望しており、メンテナンスをしていくこととした。
こちらの方が症例のテーマが明確になります。**「主訴=左臀部痛(ランニング障害)」「副次的改善=背部痛・右手のしびれ」**という流れでまとめ直しました。
本症例は、長距離ランニング時に出現する左臀部痛を主訴とした症例である。骨盤の左右差による土台の不安定性が長期間続いたことで、ランニング時の衝撃や回旋ストレスを十分に吸収できず、左臀部へ負担が集中していたと考えられた。また、その影響は腰部だけでなく背部や頸部にも波及し、背部痛や右手のしびれといった症状も引き起こしていたものと考えられる。
初診時には、左仙腸関節周囲の浮腫、下部腰椎周囲の皮膚の乾燥、右背部起立筋および左胸鎖乳突筋の過緊張が確認された。体表温度検査では骨盤と後頭下に左右差が認められ、左仙腸関節と頸椎1番には可動制限が存在していた。レントゲン評価では、腰椎5番および頸椎6番ともに慢性的な変化が確認され、長期間にわたって骨盤や頸部へ負担が蓄積していたことが示唆された。
ランニングでは、骨盤は着地時の衝撃を吸収し、左右の脚へ効率よく力を伝える重要な土台となる。そのため、左右どちらかの仙腸関節に可動制限が生じると、歩行やランニングのたびに骨盤や腰椎へ繰り返し捻じれのストレスが加わり、臀部や股関節周囲の筋肉・神経へ過剰な負荷を与えるようになる。本症例でも、左仙腸関節の可動制限によってランニング時の荷重バランスが崩れ、左臀部痛を引き起こしていたと考えられた。
そこで、症状の出ている臀部ではなく、身体の土台である左仙腸関節を中心に神経機能の回復を目的としたケアを継続した。その結果、比較的早い段階で日常生活における背部痛は改善し、その後は長時間の運転でも右手のしびれが出現しなくなった。背部や下部頸椎へ直接アプローチを行わなくても症状が改善したことから、骨盤機能の回復によって身体全体のバランスが整い、二次的に背部や頸部への負担も軽減したものと考えられる。
主訴であった左臀部痛についても、ランニング距離が延びるにつれて徐々に改善が認められた。当初は5km程度では問題なく走れるものの、10km近くになると左臀部に鈍痛が出現していた。しかしケアを継続することで10km以上走っても症状は出現しなくなり、月間200kmの走り込みが可能となった。最終的にはフルマラソンを完走し、「次は自己ベスト更新を目指したい」と話せるまでに競技レベルが回復した。
本症例は、ランニング障害を局所の筋肉や臀部だけの問題として捉えるのではなく、骨盤という身体の土台から評価し、神経伝達を正常化していくことの重要性を示した症例である。また、骨盤機能の改善が主訴である左臀部痛だけでなく、背部痛や右手のしびれといった一見関連のない症状の改善にもつながったことから、身体全体を一つの機能的ユニットとして評価しアプローチすることの重要性を改めて確認することができた症例であった。


執筆者塩川カイロプラクティック金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。