

“カイロプラクティックを受けてよかったです”
海外育ちで8年前に仕事の都合で日本へ移住された30代の女性。
言葉の壁や文化・生活習慣のギャップから知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、来日後1年も経たないうちに心身へ不調が現れるようになりました。
特に深刻だったのが慢性的な腰痛です。一日中ズシッとした重みや鈍痛が続き、移動中の電車やバスで激痛のため立ち上がれなくなるほどの恐怖も経験されました。
さらに追い打ちをかけるように、左の後頭部から頭全体へ広がる頭痛にも悩まされるように。目覚めた瞬間から強い痛みに襲われるため、朝を迎えること自体が精神的な苦痛になっていました。
脳のMRIや脳波など精密検査を数ヶ月にわたり受診したものの、結果は「異常なし」。処方された痛み止めでしのぐ日々が続きました。複数の病院や整骨院、整体院を巡っても快方に向かわず、「一生この痛みを抱えて生きるのではないか」と不安が募る一方だったといいます。
解決策を模索する中で「カイロプラクティック」の存在を知り、情報収集を進める中で当院のWebサイトへ。骨や筋肉だけでなく「脳と神経の働き」に着目した根本アプローチに新たな可能性を感じ、ご相談いただきました。
背部の筋肉の過緊張
上部胸椎部に広く深いスポンジ状の浮腫感
仙骨中央から左仙腸関節を跨ぐように浮腫感
初診時にお身体の状態をチェックしたところ、骨盤周辺や胸椎2番(背中の上部)に強いむくみ(浮腫感)が確認され、後頭部にも強い筋緊張・こわばりが見られました。長年のストレスや姿勢の崩れにより、神経系や関節の働きが著しく低下しているサインでした。
6週目(6回目の施術)には継続的なアジャストメント(神経調整)を重ねることで、骨盤周り、特に動きが固まっていた「左の仙腸関節」の可動域が徐々に回復し、むくみも軽減していきました。
日常生活でも変化が現れ始め、歩行時の腰の違和感が消失。初診時の痛みを「10」とすると「4」程度まで落ち着き、回復の手応えを感じていただけるようになりました。
11週目(10回目の施術)この頃には骨盤の動きやむくみが大幅に改善し、あれほど苦しめられていた腰の痛みは「ほぼゼロ」にまで回復。さらに、後頭部の強いこわばりが取れてきたことで、「そういえば、いつの間にか頭痛も気にならなくなっていた」と、朝の苦痛からも解放されていきました。
14週目(13回目の施術)施術開始から約3ヶ月半が経過した頃には自律神経のバランスも整い、「夜ぐっすり眠れるようになった」と睡眠の質にも大きな変化が訪れました。
腰痛・頭痛ともに日常生活で気にならない状態を取り戻され、異国の地で抱えていた不安から解放されて大変明るい笑顔を見せてくださいました。
今回の症例では、腰椎レントゲン検査において骨棘(骨のトゲ)や骨の変形、椎間板の変性が認められました。しかし、臨床的にはこれらが直接の痛みの引き金になっていた可能性は低いと考えられます。
日本整形外科学会および日本腰痛学会による『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』でも示されている通り、画像や検査で明確に原因が特定できる「特異的腰痛」は全体の約15%にとどまり、残りの約85%は原因を画像だけで断定できない「非特異的腰痛」に分類されます。
本症例においても、ヘルニアや脊柱管狭窄症といった確定診断はなく、それらに特徴的な「下肢のしびれや脱力感」といった神経症状も一切見られませんでした。
そこで、ガンステッド・カイロプラクティックシステムに基づき詳細な生体力学的検査を実施したところ、痛みの根本要因(サブラクセーション)は左仙腸関節に存在することが判明しました。
具体的には、左の腸骨が前方かつ内方へと変位したまま固まってしまう「ASIN変位(前方・内方変位)」を起こしていました。これにより、左側の仙腸関節下部に明らかな組織の浮腫(むくみ)が生じ、見かけ上の脚長差(左脚が長く見える状態)が出現していたのです。
なぜ脚長差や筋肉の過緊張が解消されたのか?ということを考察すると
カイロプラクティックのアジャストメントは、骨の形状そのものを変形させる構造的変化を目的としたものではありません。では、なぜ施術を重ねることで浮腫が引き、脚長差や多裂筋・脊柱起立筋の過緊張が正常に戻ったのでしょうか。
骨盤の仙腸関節は、本来歩行時などの衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。しかし、ASIN変位によって関節の動きが完全にロック(FIX)されると、関節内の受容器(センサー)へ持続的に異常な負荷とストレス刺激が入力され続けます。その結果、関節内水腫や周囲の浮腫、腰仙部周辺の筋肉の防御的な過緊張が引き起こされます。
さらに興味深いのは「代償作用」の観点です。左側の仙腸関節が動かなくなった結果、身体のバランスを保つために反対側(右側)の仙腸関節が過剰に動きすぎる「過可動(ハイパーモビリティ)」を起こしていたと考えられます。
右側の関節を安定させようと、骨盤と肋骨をつなぐ「右の腰方形筋」が過剰に収縮・緊張し、右側の腸骨を上方へ引き上げていました。その結果として「見かけ上、左脚の方が長く見えていた」という機序が成り立ちます。
的確なアジャストメントを継続したことで、固定化されていた左仙腸関節の動きが回復。関節内の固有受容器を介した神経伝達が正常化されたことで、過剰に興奮していた腰方形筋や多裂筋、脊柱起立筋の緊張が解かれ、二次的に生じていた浮腫や脚長差も根本から解消されました。
カイロプラクティックでは脊柱(背骨)と神経の関係に注目が集まりがちですが、本症例は「仙腸関節の関節機能障害と、それに付随する神経受容器の安定化」が慢性腰痛の劇的な改善につながった、臨床的にも非常に意義深いケースといえます。
参考文献
腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)
Newman DP, Soto AT. Sacroiliac Joint Dysfunction: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2022 Mar 1;105(3):239-245. PMID: 35289578.
Neuman DP, Soto AT. Sacroiliac Joint Dysfunction: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2022;105(3):239-245.Grob KR, Neuhuber WL, Kissling RO. Die Innervation des Sacroiliacalgelenkes beim Menschen [Innervation of the sacroiliac joint of the human]. Z Rheumatol. 1995 Mar-Apr;54(2):117-22. German. PMID: 7793158.


執筆者細井カイロプラクティック細井 康隆
埼玉県さいたま市出身。2011年にスポーツトレーナーとメディカルトレーナーの資格を取得後、2014年に国家資格の柔道整復師資格を取得。接骨院・整体院での臨床と経営経験から多くのセミナー講師を務め、その参加人数は延べ2,000人以上を数える。その後カイロプラクティックと出会い、日本カイロプラクティックのパイオニアである塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.が主宰である塩川スクールで学ぶ。2025年に卒業し、埼玉県さいたま市大宮区にて細井カイロプラクティックを開業。現在は本物の技術を提供するカイロプラクターとして、臨床で多くの患者様と真摯に向き合い施術を行う傍ら、塩川スクールでインストラクターとして後進の指導を行っている。