強さと柔軟性は、体の奥で受け渡されている
靭帯と腱はリレー競技のバトンのよう
私たちが立ち上がり、歩き、走り、スポーツを楽しめるのは、骨や筋肉だけの力ではありません。
その間をつなぎ、力を正確に、そして安全に伝える存在があります。
それが、靭帯と腱です。
二つは、まるでリレー競技のバトンのように、「強さ」と「安定」を次へと受け渡しながら、私たちの体をしなやかに動かし続けています。
体を動かす、二重の仕組み
腱は、筋肉と骨を結ぶ“伝達役”です。
筋肉が生み出した力を、無駄なく骨へと伝え、関節を動かします。
ドアを開けるロープのように、腱があるからこそ、動きはスムーズに行われます。
一方、靭帯は、骨と骨を結ぶ“安定役”。
関節が必要以上に動きすぎないように制御し、体を守っています。交差点の信号機のように、自由な動きと安全性のバランスを保つ。
腱が「力を伝える役者」なら、靭帯は「舞台を守る裏方」。
この二つが揃うことで、私たちは転ばずに立ち上がり、複雑な動きを安心して行うことができるのです。
数字が教えてくれる、しなやかな強さ
アキレス腱は、直径わずか5〜6mmほど。
それでも、体重の数倍から10倍以上の負荷に耐え、ジャンプやダッシュの爆発的な力を支えています。
膝や足首の靭帯には、瞬間的に数百kgもの力がかかります。
それでも関節を守り、方向転換や着地を安定させます。腱の引っ張り強度は、鉄にも匹敵すると言われています。
しかも完全に硬いのではなく、しなやかに伸び縮みする性質を持っています。
靭帯もまた、わずか数%という微細な伸縮で、関節の可動域を精密にコントロールしています。
たった1〜2mmの調整が、自由と安定の絶妙なバランスを生み出しているのです。
当たり前の動きは、見えない支えの上にある
私たちが転ばずに歩けること。
ボールを投げられること。
日常の何気ない動作ができること。
それらはすべて、腱と靭帯が陰で支えてくれているからこそ成り立っています。
もしどちらかが欠けていたら、動きは不安定になり、怪我や痛みが絶えなかったでしょう。
その事実に気づいたとき、見えないロープとベルトに感謝が湧き、その強さとしなやかさに感動し、「私の体には、倒れても立ち直れる仕組みがある」という希望が静かに生まれてきます。
インサイドアウト健康文化の視点へ
腱も靭帯も、外から与えられて強くなるものではありません。
体の内側から、日々の動きや刺激の中で、自然に育ち、調整されていきます。
これは、健康や人生の在り方とも重なります。外側の補強や対処だけに頼るのではなく、自分の内側にある安定力と回復力を信じ、育てていくこと。
それこそが、本当の強さにつながります。靭帯と腱を思い浮かべるとき、私たちはこう気づけます。
強さと柔軟性を両立する力は、すでに自分の中に備わっている。
これこそが、インサイドアウト健康文化の象徴なのです。

執筆者塩川カイロプラクティック塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。