命を迎え入れる玄関 ― 胃に宿るインサイドアウトの知恵
命を迎え入れる玄関口
私たちが口にする一口の食事。それは、まだ「命」ではありません。
ご飯も、パンも、肉も野菜も、体にとってはただの素材にすぎないのです。
その素材を、「自分の命として使える形」へと変換する最初の場所。
それが胃です。
胃は、消化器官の一部であると同時に、命を迎え入れる玄関口。
ここでの働きが、その後のエネルギー、回復力、集中力、さらには感情の安定にまで影響していきます。
胃の働き ― 砕き、変え、つなぐ場所
胃は、単なる“袋”ではありません。そこでは常に、二つの重要な働きが同時に行われています。
① 大型ミキサーとしての胃
胃の壁は、分厚い筋肉でできています。食べ物が入ると、自動的に収縮と攪拌を始めます。
・固形物を細かく砕き
・液状へと変え
・小腸で吸収できる状態に整える
これが「胃粥(いがゆ)」です。
どれほど良質な食事であっても、砕かれなければ、命にはならない。
胃は、命への“下準備”を黙々と続けています。
② 化学研究室としての胃
胃の中では、強力な胃酸と消化酵素が働いています。
・胃酸(pH1〜2)は細菌を無力化し
・酵素(ペプシン)はタンパク質を分解する
これは破壊ではありません。再構築のための分解です。
食べ物を一度バラバラにするからこそ、私たちの体はそれを「自分の一部」として組み立て直せる。
胃は、命の素材を再設計する研究室なのです。
胃の神秘 ― 数字が語る驚き
数字で見ると、胃の働きの凄さがより鮮明になります。
- ・胃液の分泌量:1日2〜3リットル
- ・胃酸の強さ:pH1〜2(鉄をも溶かす酸性)
- ・収容量:空腹時約200ml → 食後 1.5〜2リットル
- ・消化時間:約3〜5時間
- ・胃粘膜の防御膜:1mm未満
これほど強力な酸を扱いながら、胃自身が溶けてしまわないのは、内側に備わった防御システムがあるからです。
胃は、強さと繊細さを同時に持つ臓器。
それはまるで、人生における「挑戦」と「自己管理」のバランスを体現しているかのようです。
感謝・感動・希望を持って
「お腹が空く」
「食べると元気が出る」
その裏側で、胃は一度も文句を言わず、一口一口を命へと変え続けています。
何気ない日常の食事が、明日のエネルギーになり、未来の体を形づくっている。
その事実に気づいたとき、胃という存在に感謝が生まれ、その精巧な働きに感動し、「今日の選択が、未来を育てている」という希望 が静かに湧いてくるのではないでしょうか。
インサイドアウトの視点へ
胃は、外から誰かに命令されて働いているのではありません。
自分の内側に備わった酸・酵素・筋肉・防御機構によって、完璧なタイミングで消化を進めています。
健康も同じです。
外から「何かを足す」ことよりも、内側にすでにある仕組みを信じ、邪魔せず、活かすこと。
胃を意識するとき、私たちは気づきます。
”命をつくる力は、すでに自分の内側で働いている”
これこそが、インサイドアウト健康文化の原点なのです。

執筆者塩川カイロプラクティック塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。