命をつなぐ呼吸の舞台 ― インサイドアウトで息づく、肺という生命の森
命をつなぐ呼吸の舞台
私たちは一生のあいだに、およそ 6億回 もの呼吸をしていると言われています。
その一回一回の呼吸を支え、酸素を受け取り、二酸化炭素を手放す舞台こそが「肺」です。
肺は、ただ空気を出し入れする袋ではありません。それはまるで、体の中に広がる 緑豊かな森 のように、空気を浄化し、命を育み続ける存在です。
私たちが意識していなくても、この森は休むことなく働き続けています。
肺の働き ― 森と風の浄化システム
肺は、自然界の仕組みをそのまま体内に写し取ったような構造をしています。
そこには「森」「川」「風」という三つの要素が、見事に調和しています。
森の木々(肺胞)
肺の中には 約3億個 の肺胞と呼ばれる小さな袋があります。一つひとつはとても小さく、目に見えるものではありません。
しかし、もし肺胞を一枚の葉だとしたら、私たちの胸の中には 3億枚の葉が茂る大森林 が広がっていることになります。
この葉一枚一枚が、吸い込んだ空気から酸素を受け取り、不要になった二酸化炭素を手放しています。
私たちは息を吸うたびに、この森で新しい命を受け取っているのです。
川の流れ(毛細血管)
肺胞の周囲には、無数の毛細血管が張り巡らされています。それは、森を流れる小さな川のような存在です。
酸素はこの川に渡され、血液に乗って全身へと運ばれていきます。同時に、体の中で生まれた二酸化炭素は、この川に集められ、吐く息とともに外へ流されます。
肺は、血液という川とつながる「命の浄水場」 でもあるのです。
風の流れ(気管・気管支)
空気が通る気管や気管支は、森に風を送り込む道のような役割を果たしています。
太い幹から細い枝へ。そして最終的に、肺胞という葉一枚一枚に風が届けられます。この仕組みは、自然界で風が森全体をめぐる姿とよく似ています。
肺は、森・川・風が調和した「自然の縮図」 として、命の循環を支えているのです。
肺の神秘 ― 数字が語る驚き
肺の働きを数字で見てみると、そのスケールの大きさに驚かされます。
呼吸の回数
人は1分間に約12〜20回呼吸をします。1日では約2万回、1年で約700万回、一生では 6億回以上。
つまり私たちは、一生のあいだに6億回、この「呼吸の森」と対話しているのです。
肺胞の数と表面積
肺胞は約3億個。その表面積をすべて広げると、約70㎡。
これはテニスコート1面分に相当します。胸の中に、これほど広大な森が折りたたまれている。それだけで、命の精巧さを感じずにはいられません。
酸素の交換量
1回の呼吸で吸い込む空気は約500ml。1日では 約1万リットル。私たちは無意識のうちに、浴槽50杯分もの空気を毎日入れ替えているのです。
酸素の利用先
吸い込んだ酸素の 約25% は、脳で使われています。考えること、感じること、憶すること。
そのすべては、肺から届けられた酸素によって支えられているのです。
呼吸は、体だけでなく 心や思考の土台 でもあります。
感謝・感動・希望を持って
深呼吸したとき、胸いっぱいに空気が満ちる感覚。それは、肺という森が静かに働いている証です。
眠っている間も、走っているときも、この森は一度も休みません。
その事実に気づいたとき、自然と感謝が生まれ、3億枚の葉が同時に働く精巧さに感動し、「私の中には、命を育む森がある」という希望が湧いてくるのではないでしょうか。
インサイドアウトの視点へ
呼吸は、外から誰かに命を吹き込まれて行われているのではありません。
すべては、私たちの内側に備わった仕組み によって、自然に続いています。
健康も同じです。外に答えを探す前に、内側にすでに備わっている力を信じること。
肺という「呼吸の森」に意識を向けたとき、私たちは気づきます。未来を育む力は、すでに自分の中に息づいている。
これこそが、インサイドアウト健康文化の真髄 なのです。

執筆者塩川カイロプラクティック塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。