カイロプラクティックと姿勢 ― 真っ直ぐが健康の条件ではない

カイロプラクティックというと、「背骨を真っ直ぐにするもの」「姿勢を良くするためのもの」と誤解されがちです。確かにケアの結果として姿勢が整うことはありますが、それは目的ではなく結果にすぎません。
カイロプラクティックが本当に目指しているのは、神経と脳の伝達を整え、身体が本来持っている治る力(自然治癒力)を最大限に発揮できるようにすることです。
背骨は真っ直ぐでなくても問題ない
人間の身体は本来、左右差を持っています。手足の長さや筋肉のつき方、姿勢の癖など、完全に左右対称の人はいません。したがって、脊柱が多少曲がっていても、それがすぐに「不健康」という意味ではありません。
大切なのは「背骨が真っ直ぐかどうか」ではなく、そこにサブラクセーション(神経伝達の異常)が存在するかどうかです。サブラクセーションがなければ、多少背骨が曲がっていても身体は十分に適応し、健康を保つことができます。
逆に、見た目に背骨が真っ直ぐで姿勢が良く見えても、サブラクセーションがあれば自然治癒力は妨げられ、不調や不具合につながります。
サブラクセーションと3つのストレス
サブラクセーションは、神経が身体的・化学的・精神的ストレスに適応しきれなくなったときに起こります。
- 身体的ストレス(転倒、ケガ、長時間の同姿勢など)
- 化学的ストレス(食事、薬、添加物、大気汚染、代謝産物など)
- 精神的ストレス(不安、心配、緊張など)
これら3つのストレスを完全に取り除くことは不可能です。
- 世界中のバナナの皮を拾って転倒を防ぐことはできません。
- 空気が汚れているからといって呼吸をやめることもできません。
- 24時間患者さんと一緒にいたとしても、ストレスをすべて取り除くことはできません。
だからこそ、神経の流れを整え、ストレスに適応できる状態にしておくことが重要なのです。
もちろん、物質的な限界もあります。橋から落ちればサブラクセーションは起こりますし、有害物質を大量に摂取すれば健康を損ねます。だからこそ、日常的な調整=アジャストメントによって神経系を整えておくことが、健康を維持するうえで欠かせません。
姿勢は「結果」である
背骨の調整は、単に背筋を真っ直ぐにすることが目的ではなく、神経の流れを回復させる手段です。神経が正しく働けば、身体は自然とその人にとって最適な状態に整い、その結果として姿勢も改善されます。
つまり、姿勢の変化は「目的」ではなく、神経伝達が整った結果として現れるものなのです。
まとめ
- 背骨は真っ直ぐでなくても健康でいられる
- 姿勢が良く見えても、サブラクセーションがあれば問題は起こる
- 3つのストレスは避けられないからこそ、神経系を整えて適応力を高めることが大切
カイロプラクティックの価値は、「背骨を真っ直ぐにすること」ではなく、自然治癒力を引き出し、日常をより快適に過ごせる身体へと導くことにあります。

執筆者塩川カイロプラクティック金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。