カイロプラクターが教える健康になるための考え方
カイロプラクティックの視点から、健康を考える上で2つの重要なアプローチがあります。今回のコラムでは、健康を維持するための考え方を探り、自分自身の健康観と比較してみることをお勧めします。
①菌やウィルスを減らす考え方
私たちの日常生活において、さまざまな感染症が脅威となっています。そのため、菌やウィルスは敵と見なされ、抗生物質やワクチンを用いて根絶を目指すことが一般的です。このようなアプローチは、現代社会における殺菌、除菌、抗菌の慣習につながっています。
確かに、抗生物質やワクチンは菌やウィルスから身体を守り、病状の悪化を防ぐ効果があります。しかし、最近では薬剤に対する耐性を持つ病原菌が増えてきており、かつて効果的だった薬剤が突然効かなくなるケースも見られます。
この問題の根本には、病原菌が生存のために進化し、薬剤に耐えるよう変異することがあります。薬剤を使用しても病原菌を100%死滅させることはできず、生き残った菌がさらに強力な耐性を持つようになることが問題となっています。
このような状況を考えると、菌やウィルスを単純に減らすことだけを目指すアプローチには限界があることがわかります。
菌やウィルスにも生命があり、環境の変化に適応して生存しようとする性質があるため、完全に根絶することは困難です。特に新型インフルエンザのようなウィルスは、その進化の速さが人間の対応を上回ることがあります。
例えば、ウィルスの進化速度は、人間の進化に比べて非常に速く、わずか1年で人間の100万年分の進化に相当すると言われています。また、大腸菌などの細菌は20分ごとに分裂し、10時間で690億個に増えることができます。このような速度で進化する生物に対しては、ワクチンや薬剤の開発が追いつかないことがあります。
農業の分野でも同様の問題が起こっています。土壌に撒かれた強い農薬は、すべての病原菌を排除することができず、薬剤耐性菌が生まれることがあります。しかし、自然栽培を行う農家では、菌が土壌の浄化に必要な役割を果たしていると考えられています。
このように、菌やウィルスとの戦いではなく、共生を目指すことが、真の健康につながると言えるでしょう。菌やウィルスも自然界の一部として存在し、私たちの生態系に影響を与えています。そのため、敵対するのではなく、共存の道を探ることが重要です。
②身体の抵抗する力を高める考え方
私たちの身体は、抵抗力を高めることで感染症に対抗することができます。では、免疫力を高める考え方について掘り下げてみましょう。同じ環境で暮らしていても、感染症にかかる人とかからない人がいるのはなぜでしょうか?
実は、病気になる原因は病原菌そのものではなく、身体の抵抗力、つまり免疫力に大きく関わっています。免疫力を高めるためには、脳が身体の状態を正確に把握することが重要です。私たちの身体は、病原菌が侵入してきても、神経を通じて脳が瞬時にその情報を受け取ります。
神経は、侵入してきた病原菌の種類や場所、数などの詳細を脳に伝え、身体はその情報に基づいて抗体を作り出し、病原菌と戦います。真の免疫力を得るためには、実際に菌やウィルスに感染し、本物の抗体を作ることが重要です。そして、その抗体を次世代に受け継ぐことが、私たちにとって最大の財産となります。
菌やウィルスも生存をかけて活動しています。私たちの身体を利用して繁殖することで、自らの命を繋いでいます。もし私たちの命が失われれば、菌やウィルスの命も絶えてしまいます。
したがって、菌やウィルスを排除することが健康を手に入れる唯一の方法ではありません。むしろ、神経の流れを正常に保ち、免疫力を高め、菌やウィルスと共存することが、真の健康を実現する鍵となるでしょう。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。