生理前のイライラがなくなった!
中学生の頃から生理痛がきつくて、中学2年生までは痛み止めを飲んでいれば動けていたが、中学3年生になると痛み止めも効かないほどの下腹部痛に襲われた。そのため中学3年生以降は毎月生理の初日、2日目は学校を休んでいた。
高校生になるとPMS(月経前症候群)が酷くなった。生理の1週間前からイライラが止まらなくなり、物にも家族にもあたるようになった。授業中も集中力がないと感じるようになり、学年が進むにつれて情緒も不安定になった。
PMS(月経前症候群)は年々酷くなり、大学入学時には生理前になるとメンタル面以外にも、腰が痛くなったり、眠れなくなったりした。元々、中学生の頃から末端冷え性の自覚もあったが、それも大学生になってさらに酷くなった。
大学生活をしながらスーパーでレジ打ちのアルバイトをしていたが、生理前はレジ打ち中の腰痛が特に辛くて、酷いときには店長に腰椎コルセットを借りたこともあった。普段、腰痛はまったく感じず生理前だけだが、あまりにも痛みが強いので念のため整形外科を受診したが、レントゲンを撮っても異常なしと言われた。
社会人になってもPMS(月経前症候群)は治まらなかった。婦人科を受診したが、まだ若いからなるべく薬は飲まない方がいいと言われ、生活習慣の指導をされた。どれだけ規則正しい生活をしても、食事を見直しても、ヨガをやってみても何も変化がなかった。
やりたかった仕事に就いたため、仕事は大変だったがストレスはなかった。それでも毎月のように生理前になると感情のコントロールが効かなくなった。当然のように生理痛も収まる気配がなかったが、仕事は休むわけにはいかなかったので、生理の初日と2日目だけ在宅ワークにしてもらうことにした。
このままではいけないと思い、婦人科系に強そうな整体院や針鍼灸院に通ってみたが、何も変化がなかった。そんなとき、たまたま学生時代のアルバイト仲間から良さそうなところがあるよと教えてもらい、当院に来院された。
正中仙骨稜の強い浮腫感
腰部起立筋の過緊張
頚部左胸鎖乳突筋の過緊張
頚部や腰部の椎間板にはそれほど異常は確認されなかったが、首はストレートネックを通り越してスワンネック(逆カーブ)となっていた。初期集中期の段階では、週1回のケアからスタートすることにした。
5週目(5回目のアジャストメント)には、生理前の腰痛はそれほど気にならなくなった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。
11週目(8回目のアジャストメント)には、ケアを始めて2回目の生理では、痛みはあるものの薬を飲めば出社できるようになった。またお風呂で温めれば、冷え性はあまり気にならなくなった。睡眠の質も良くなった気がして、生理前でもよく眠れるようになった。
17週目(11回目のアジャストメント)には、生理痛はほとんど感じなくなり、人生で初めて痛み止めを飲まなかった。また生理前の情緒不安定な感じが、多少はイライラするものの、それほど気にならなくなった。
23週目(14回目のアジャストメント)には、生理前にも生理中にも不調はほとんど感じなくなった。睡眠もすごく良好で、一晩眠ると体が回復しているのが自分でも分かるようになった。仕事中の集中力も明らかに良くなり、仕事を楽しめるようになった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回のPMS(月経前症候群)の原因は、自律神経のバランスが乱れることで、女性ホルモンの分泌異常を起こしていたと考えられる。女性ホルモンは、脳と卵巣が神経によって常にコミュニケーションを取れることで、適切な量が適切なタイミングで分泌されるようにできている。
排卵から月経までの期間を黄体期といい、卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンの分泌量が多くなる。この黄体期の後半にエストロゲンとプロゲステロンが急激に低下すると脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こしてしまうといわれている。
通常、自律神経のバランスが整った状態であれば、このようなことは起こらないが、脳と卵巣を繋ぐ神経の流れが乱れているとホルモンバランス異常が起こってしまい、PMS(月経前症候群)に繋がってしまう。
エストロゲンやプロゲステロンなど女性ホルモンの急激な低下によって、今度はプロスタグランジンという物質が過剰に分泌されてしまう。プロスタグランジンの作用は、月経によって不要になった内膜や経血を体外へ排出する働きがあるが、このとき強い痛みを引き起こしてしまう。これが生理痛や生理前だけ感じる腰痛の原因となる。
検査では骨盤部と上部頸椎に反応が強く見られたが、どちらも副交感神経支配の部位なる。副交感神経部位にサブラクセーション(根本原因)があると、交感神経が過剰となってしまい、自律神経のバランスを乱してしまう。
交感神経が過剰となることで、休まるスイッチが上手く入らずに不眠症に繋がっていたと考えられる。また末端冷え性も交感神経が過剰になっている人の特徴でもある。交感神経の作用として、末梢の血管を閉じる役割がある。その状態が長期間続くと末梢の血管が閉じたままとなり末端冷え性となってしまう。
自律神経やホルモンバランスの問題と思われる症状の場合は、必ず問題となっている神経系を絞ってアプローチする必要がある。改めて神経の流れを整えて、体の情報を脳へ届けることの重要性が分かる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。