
”趣味に仕事に没頭できるようになりました!”
長年、左側の背中のつっぱりや左腕の不調に悩まされていた。
特に夕方以降になると、左の背中や腕が重だるく張ってくる感覚があり、1日の終わりには「疲れが背中にどっと溜まる」ような状態になるのが常だったという。
半年ほど前には、重いものを持ち上げた際に左腕に鋭い痛みを感じた。動かすたびに痛むような症状はないが、「これ以上悪化したら…」という不安が募り、日常動作にも慎重さが出てきていたようだ。これまで鍼や整体にも通ったが、受けた直後は楽になっても、数日もするとまた症状が戻ってしまうという繰り返しで、根本的に良くなる実感は得られなかった。
さらに話を聞くと、小学生の頃に左腕を骨折した経験があり、それ以降、体の使い方や左右のバランスに影響が出ていた可能性があるという。また、過去にはバイク事故にも遭っており、そのときの衝撃が今の体のクセに関係しているのではないかと感じていたようだ。
左の背中については、以前整体でその部分を押されたときに激痛が走った経験がある。それ以来、自分でも無意識にその部分をかばってしまい、仰向けになることも苦手になっているという。30年前に起き上がるのもつらいほどの腰の痛みを経験しており、当時、形成外科で「反り腰」と診断されたこともある。体の軸や重心のかかり方に関して、ずっと違和感を抱えてきたのだ。
運動に対する意欲は高く、できればジョギングやジムでのトレーニングも再開したいと考えている。しかし、今の状態では思うように体を動かせず、運動後に症状が悪化するのではという不安もあり、なかなか一歩を踏み出せずにいたようだ。
今回、カイロプラクティックを受けてみようと思ったのは、「表面的な対処ではなく、体の内側から整えるアプローチが必要なのではないか」と感じたからである。長年の積み重ねによる歪みや癖を見直し、自分の体と向き合いながら、運動を楽しめる体を取り戻したいという思いが、来院の大きな動機となった。
左の脊柱起立筋の緊張が背部まで走る
中部胸椎全体にブヨブヨとした浮腫感
左腕、左背部の痛みが強い状態
腰椎側面像、胸椎側面像において、椎間板の摩耗が局所に確認できるため、サブラクセーションが発生してから、かなりの時間が経過している。腰椎はD5,胸椎はD3〜4である。そのため、初期集中期として週に2回のケアを推奨するも、仕事の都合上でまずは週に1回とし、ケアをスタートした。
1週目(2回目のアジャストメント)では、初診時よりも左腰背部の緊張が取れてきた所感はあるそう。現に左の仙腸関節の動きは以前よりも出始めていて、緊張も取れてきている。
2週目(3回目のアジャストメント)では、初診時に見られた仙腸関節の可動域制限はなくなり、神経圧迫についても問題なくなった。腰椎5番の浮腫の方が目立つのでリスティングを変更する。左の腰背部の張り感は以前よりも減少傾向にある。左腕の痛みは落ち着いてきた。
7週目(8回目のアジャストメント)では、張り感で気になるのは肩甲骨下あたりでそれ以外はほとんど気にしていない。元々あったしびれも消失した。仕事終わり、就寝前の辛い凝りも感じなくなった。背部の筋緊張はほとんど見られない。
10週目(10回目のアジャストメント)では、首肩こりはほとんど感じなくなり、重たいものを背負っても負担を感じなくなったそう。腕の痛みも感じない。背部、頸部の神経圧迫も減少傾向にある。
現在は、大好きなカメラをこれからも続けられるように2週に1回のペースでメンテナンスをしている。
この症例は、左の背中から腕にかけての違和感や痛みが何年も続いていた方で、特に夕方になると「疲れが背中に溜まるような感覚」が強くなり、日々の生活にも影響を及ぼしていました。過去には左腕の骨折やバイク事故も経験しており、体の使い方のクセや左右バランスの乱れが、長期的に体に負担をかけていたと考えられます。
また、「仰向けで寝るのが苦手」「反り腰だと指摘されたことがある」「整体で背中に強い痛みを感じた」などの経験から、身体が無意識のうちに防御反応を強め、神経が常に緊張した状態にあることがわかりました。
このような症状の背景には、「交感神経」というストレスや活動に関わる神経の過緊張が深く関わっていると考えられます。交感神経は、背骨の首から腰にかけて分布しており、ストレスや過去のケガ、姿勢の崩れなどが原因で神経の通り道が圧迫されると、筋肉がこわばったり、血流が悪くなったり、自律神経のバランスが崩れたりします。
今回のケースでも、片側に出るしびれ、張り感、疲れやすさなどは、こうした神経の緊張によって引き起こされている可能性が高いと判断しました。
ケアの方針としては、神経の混乱を避けるために、交感神経と副交感神経(リラックスに関わる神経)を同じ日に同時にケアしないという考え方をベースに進めていきました。最初の2回では、まず体の土台となる骨盤を整え、土台が安定してから、交感神経が集中する背中〜腰のエリアに集中してケアを行いました。
3回目以降には、背骨や骨盤まわりの動きがスムーズになり始め、5回目の頃にはしびれや痛みが徐々に軽減。8回目の時点で残っていたのは、肩甲骨の下にわずかな張りを感じる程度で、10回目の時点では日常生活に支障が出る症状はすっかりなくなりました。
このケースからわかるのは、ただ筋肉をゆるめたり、姿勢だけを整えたりするのではなく、神経の流れ=体の「調整システム」そのものを回復させることがとても重要だということです。
特に、ケガの経験や長年の不調を持つ方では、体が常に緊張モード(=交感神経が働きっぱなし)になっていて、筋肉のコリや内臓の不調までもが、その影響を受けているケースが多くあります。
大切なのは、「体のどこが悪いか」だけではなく、「どの神経が乱れていて、どんな影響が全身に出ているのか」という視点で体を見ていくこと。神経を整えるケアを適切に選び、順序立てて行うことが、より根本的で再発しにくい改善につながります。
この症例は、まさにその考え方を実践したことで、長年の不調が改善へと向かった一例だといえます。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。