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首の極端な可動域制限

首の極端な可動域制限

首が自由に動くようになった!

60代男性
主訴
首の極端な可動域制限、食いしばり、歯ぎしり、顎関節症、副鼻腔炎、腰痛
来院に至った経緯

仕事は約40年間デスクワークの仕事をしており、一日中会議かパソコン作業が続いている。そのため慢性的な腰痛があり、整形外科では腰椎5番が分離すべり症だと診断された。ぎっくり腰も何度も経験しており、お風呂に入る時間以外はずっと腰椎コルセットを巻いて生活していた。

20年ほど前から、顎がガクガク鳴り始め、食事中にも咀嚼時に顎から異音がして気になってしまうほどだった。この頃から、一緒に寝ている奥様から食いしばりや歯ぎしりを指摘されるようになった。また、学生時代から副鼻腔炎に悩まされていた。

来院3週間前から、急に首が動かなくなった。整形外科を受診してレントゲンやMRIを撮影するも、「それほど異常はありません。首の椎間板が少し薄くなっていますが年齢からの問題なので様子を見ましょう。」と言われてしまった。

首が動かなくなっていく状態は、日に日に酷くなっていき、年齢的にも仕事を引退する時期なのかもしれないと考え始めていた。そんなとき会社の部下からの紹介で当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    左仙腸関節の可動域制限

  • 02

    頸部全体の過緊張

  • 03

    頸部左側屈時と右回旋時の極端な可動域制限

経過と内容

整形外科で診断された腰椎5番の分離すべり症以外にも、腰部の椎間板にD3レベルと慢性的な段階が確認された。頸部の椎間板ではD6と慢性的な段階が確認されたため、週3回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。

3週目(3回目のアジャストメント)には、頸部の左側屈時と右回旋時の極端な可動域制限は少しずつ解消されてきた。また長年感じてきた腰痛にも変化があり、腰椎コルセットを外してもデスクワーク後に立ち上がるのが楽になり、寝ているときにも仰向けで眠れるようになった。

7週目(7回目のアジャストメント)には、頸部の可動域はかなり改善された。また副鼻腔炎にも変化が出始め、鼻の通りが良くなってきたと感じるようになった。

11週目(11回目のアジャストメント)には、奥様から就寝中の食いしばりや歯ぎしりの回数が減ってきたと言われるようになった。顎関節症にも変化が出てきて、食事中の咀嚼時の異音も気にならなくなり、大きく口を開けてもあまりガクガクしなくなってきた。

現在は、ほとんどの症状が安定したが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
16週目(16回目のアジャストメント)には、首の可動域はすっかり良くなり、腰痛もほとんど感じなくなった。また、今まで気にしていなかった睡眠の質がとても良くなったと感じるようになり、一晩眠ると翌朝には体力が回復しているのが分かるようになった。


考察

今回の首の可動域制限の問題は、第一頸椎の極端な可動域制限によるものだと考えられる。第一頸椎は特殊な構造(輪っか状)をしており、脳幹から出る脊髄が中を通っているとても重要な部位となる。そこでの神経圧迫は脳と体にとって大きな負担となってしまうため、これ以上神経に負担をかけないように頸部全体に重度の可動域制限をかけていたのだろう。

顎関節症もあったが、顎関節は人体の関節の中で最も小さな関節の一つであり、首のバランスの影響(特に第一頸椎)を大きく受けてしまう。アジャストメントにより第一頸椎が安定して結果、顎関節の安定にも繋がったのだろう。

骨盤部にも顕著な可動域制限がかかっていたが、人間の土台である骨盤部の乱れは第一頸椎にも負担をかける要因にもなる。人間の背骨は24個あるが、24階建てのビルと想定した場合、土台である骨盤部は建物で言うと基礎の部分にあたる。土台である基礎部分の揺らぎは、上に行けば行くほど大きな歪みを生む原因にもなってしまう。

また上部頸椎と骨盤部は、どちらも自律神経の副交感神経支配の領域となる。副交感神経は人間が睡眠時、あるいはリラックスなど休息時に働く神経であるが、寝ている間の食いしばりや歯ぎしりは交感神経のスイッチが切れずに、睡眠時にも常に緊張状態が続いていることを意味している。

副鼻腔炎の原因にもなるウイルスや細菌などへの感染、あるいはアレルギーの問題は、顆粒球の比率が関係してくる。顆粒球の一種である好酸球などは、交感神経が優位なときにその比率を増やすことが分かっている。今回は上部頸椎と骨盤部という、どちらも副交感神経支配の部位にサブラクセーション(根本原因)があったため、自然と交感神経が過剰に働き、さまざまなアレルギー物質に対して体が過剰に反応してしまっていたと考えられる。

腰痛に関しては、整形外科で診断された通り腰椎5番に分離すべり症があるため、腰部に対してはアプローチできないが、分離すべり症の多くは問題個所が分離してしまうほどの負担をかけている原因が存在しており、ほとんどの場合は骨盤部から負荷がかかった結果である。

今回の腰痛に関しても、腰部に負担をかけていた原因は骨盤からだったと考える。お風呂に入るとき以外は常に腰椎コルセットを巻いていた行為も、更なる骨盤部の不安定さを招いていた。腰椎コルセットを長期間使用していると、腰部や骨盤部周辺の筋力低下や関節の可動域制限の原因となってしまう。アジャストメントにより骨盤部が安定することで、腰部の安定性にも繋がり、腰痛が解消されたのだろう。

頸部レントゲン側面像では、頸椎5番の椎間板はD6レベルと慢性的であり椎骨の変性も確認されたが、触診すると明らかにハイパー(過可動性)、つまり動き過ぎな状態だった。この場合、ほとんどが上下の椎骨の可動域が低下しており、その結果人間の補正作用により動き過ぎる部位ができてしまう。動き過ぎた椎骨は関節面が摩耗してしまい、椎間板の損傷や椎骨の変性にも繋がってしまう。今回の症例は、首の可動域が制限されている=椎間板が薄くなっているところにアプローチとはならない典型的な例である。

しっかりとした検査の基、神経系を絞ってアプローチを続けたことが、今回の結果に繋がったと考えられる。問題となっている部位を見つけ出し、神経系を絞ってアプローチすることの重要性が分かる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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