痛くて開けられなかった口が開くようになった!
3年前に出産をしたが、高齢出産だったため帝王切開での出産となった。出産後、授乳が完全に終わって半年ほど経つと生理痛がきついなと感じるようになった。それまで生理痛を感じることはほとんどなかったが、薬を飲まずにはいられないほどの下腹部痛を感じるようになった。
赤ちゃんの夜泣きがすごくて眠れない日々が続いていたが、子供が成長して夜寝てくれるようになっても、自分が眠れなくなっていることに気づいた。寝入りがとにかく時間が掛かるようになってしまい、朝起きても疲れがまったく取れていないと感じるようになった。
その頃から横で寝ている旦那から、寝ているときに歯ぎしりを指摘されるようになった。歯医者の定期検診を受けると、食いしばりで奥歯が削れていると言われマウスピースを作ることになった。その日は検査で長時間口を大きく開けていたが、次の日の朝になると左顎の猛烈な痛みで目が覚めた。
口が大きく開けられなくなり、左顎周辺が熱を持っているように痛みが続いていた。特に顎をぶつけたわけではなく、思い当たることとしては前日に歯医者で長時間口を開けていたことくらいしかなかった。3か月ほど経って痛みは次第に引いてきたが、ハンバーガーなど大きく口を開けようとすると、やはり左顎から激しい痛みが出てしまった。
1か月くらい前からは、男性の声など低い音が聞き取りにくいなと感じるようになった。その後、数日すると今度はキーンという金属音のような耳鳴りが聞こえるようになった。耳鼻科に行っても耳には特に異常がないと言われてしまい、どうしたらいいのか分からなかった。
育児のストレスかとも思ったが、ストレスから顎が開かなくなることなんてないだろうと思い知人に相談すると、カイロプラクティックで顎関節症が治ったという話を聞いた。カイロプラクティックは受けたことがなかったが、産後の骨盤矯正という言葉はよく目にしていて興味はあったので、一度受けてみようと思いご紹介で当院に来院された。
頸部胸鎖乳突筋の過緊張
顎関節(口)の極端な可動域制限
左第一頸椎にスポンジ状の浮腫感
腰部の椎間板にD3レベル、頸部の椎間板にD5レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。
4週目(4回目のアジャストメント)には、口が開けられないほどの顎の痛みは解消された。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。
12週目(8回目のアジャストメント)には、睡眠の質が良くなったのか寝起きがスッキリと起きられるようになった。またキーンという耳鳴りは気づけば聞こえなくなっていた。この段階でケアのペースを3週間に一度に広げることができた
21週目(11回目のアジャストメント)には、口を大きく開けても痛みはまったく出なくなった。また生理痛が明らかに楽だと感じるようになった。
30週目(14回目のアジャストメント)には、生理痛はまったく感じなくなり、痛み止めも飲まなくてよくなった。口を大きく開けると顎から鳴っていたクリック音もしなくなった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の顎関節症の原因は、首のバランスの乱れから顎関節に必要以上の負荷がかかっていたものと考えられる。顎関節は人体にある関節の中でも極めて小さな関節となるため、首のバランス、特に第一頸椎のバランスの影響を受けやすい部位となる。今回のように顎に直接的な外傷がないケースでは、ほとんどの場合は首からの影響となる。
上部頸椎以外にも骨盤部にも検査で強い反応が確認されたが、これらはどちらも副交感神経支配の部位となる。交感神経が過剰になることで、寝入りが悪くなったり、夜中に目が覚めたりと不眠症の症状が出ていたこと。また寝ている間にも家族から食いしばりや歯ぎしりを指摘されていたことなど休まる神経が働かずに体が過緊張の状態となっていたことからも自律神経の乱れがあったと考えられる。
難聴や耳鳴りの症状もあったが、音とは「外耳→中耳→内耳→脳」へと電気信号となって伝わるものである。上部頸椎は耳と密接な関係があるが、中でも内耳神経(第8脳神経)は特に関係している。つまり上部頸椎にサブラクセーション(根本原因)があることで、耳と脳を繋ぐ神経機能が上手く働かなくなると、難聴になりやすくなる。
すると脳は音の感度を上げようとして、本来であれば受け取らなくても良い電気信号まで受け取ってしまい今度は耳鳴りとなってしまう。上部頸椎の問題は難聴や耳鳴りの直接的な原因となりうるのである。
生理痛の問題もあったが、生理とは女性にとって1か月に一度の子宮内膜のお掃除である。妊娠しなかった場合、子宮内膜が生理となって体外へ排出されるが、このとき内膜からプロスタグランジンというホルモンが分泌される。
交感神経が過剰に働いていると血行が悪くなり、排毒作用や体全体の代謝が低下してしまう。プロスタグランジンは子宮の収縮を促して、体の外へ内膜を輩出させる役割があるが、代謝が低下したことで子宮内膜や経血を体外へ出そうとしてプロスタグランジンの分泌量が増えてしまい、子宮の収縮が強くなって過剰な生理痛が引き起こしてしまう。
どのような症状であったとしても、神経の流れを整えて、体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。