この患者様の腰部に関しては、骨盤のうちの左仙骨翼の浮腫が顕著でありました。仙腸関節に可動域制限があることから、骨盤部に負荷がかかっていたことが推測されます。
一般的に腰痛というと、腰に問題があると一括りにされることが多いかもしれませんが、実際には問題は大きく骨盤と腰の骨である腰椎の問題に分類されます。
仙腸関節の問題による腰痛においては、座った直後から痛みが悪化したり、30分以内での短時間の坐位姿勢での痛みの増悪、歩いている時の痛みなどが特徴として挙げられます。
また、夜に向かうにつれて痛みが悪化し、朝に緩和する傾向があります。
腰椎の問題による腰痛においては、座った状態から立ち上がる際の痛み、長時間の坐位姿勢での痛みの増悪、歩いたりや横になることでの痛みが緩和するということが特徴として挙げられます。
また朝に痛みが悪化し、夜になるにつれて緩和していく傾向があります。
今回の患者様の場合、一見腰椎の問題の特徴に当てはまります。
ですが左の仙腸関節の可動制限が顕著に見られており、それによって骨盤部の不安定性が生じました。
人は常にバランスを取っています。もし骨盤が動かないのであれば、その代わりに腰椎が通常の範囲を超えて大きく可動してしまったり、負担がかかってしまいます。
つまりは腰椎はどちらかと言えば被害者であり、本元の問題は骨盤部にあるといえるのです。結果的に腰椎の腰痛の特徴が発現したといえるでしょう。
腰椎椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄症など、腰椎の関係するの問題に対して、腰椎にフォーカスしてアジャストメントを行なってしまっては、逆に悪化させてしまうようなことがあり得ます。
土台である骨盤などもしっかりと検査をした上でアジャストメントする場所を選定していくことがいかに重要であるかを再確認できた症例でありました。
また骨盤部や頚椎の中でも上部に位置するエリアに問題が生じると、人間をコントロールしている自律神経のうち、副交感神経に影響が出てしまいます。
今回の患者さまは三叉神経エリアに問題が生じていました。三叉神経の問題は自律神経が密接に関係しています。
そもそも自律神経には交感神経と副交感神経があり、互いに相反する役割を担っています。
何かスポーツをしていたり、集中するようなこと、緊張するようなことがあると交感神経が優位になります。
逆に睡眠中やリラックスしているときは副交感神経が優位になり、安静と消化機能を促進させます。
骨盤部、そして今回は頚椎の1番に問題が起きると、副交感神経の圧迫によって機能が低下し、代わりに交感神経優位になっていることが多く確認されます。
交感神経が優位になると、常に脳が興奮状態になってしまいます。脳が興奮状態のために、痛みや違和感に対して過剰に体が反応してしまいます。
神経の流れが正常になり、きちんと脳に体の状態を伝達することができれば、脳の興奮状態、そして三叉神経の問題を抑えることができます。
今回のように、副交感神経に関係する領域に限定して、アジャストメントをしたことで、骨盤が安定し、腰部の痛みも落ち着いてきました。
また同時に三叉神経痛や不眠も改善していったと言えるでしょう。