ぶり返す首肩こりが改善
普段からデスクワークが多く、肩こり、首コリにすぐなる状態が長年続いている。もともと、中学生くらいから側弯症と診断されており、両肩の高さの違いもあることからそのせいだろうと放置し続けていた。マッサージに行くなどして対処はしてきたが、根本的な解決には至っておらず、その場しのぎを続ける生活だった。
そんな中、5年前に大腸がんを患い、薬物療法の後遺症で手足の末端にしびれが発症してしまう。手に関しては元に戻ったものの、足は残存。
昔から気になっていた首肩こりに加えて、足の痺れや逆流性食道炎などが根本的に改善できる方法はないかと探しているところ、カイロプラクティックを見つけ当院に来院することを決意された。
右の仙腸関節可動域制限
右肩が左に比べかなり上がっている
側弯による脊柱起立筋の膨隆と緊張
腰部、頸部両方をとっても椎間板がD4~5のレベルになっており、慢性化が進行していることから本来は週に2,3のペースで来院を推奨したいが、仕事の都合も考慮し、週1回の来院頻度で提案しケアを開始した。
3回目(3週目)のケアでは、長年感じていた首こりがあまり感じられないようになったと本人より深刻がある。下部頚椎のブレイク自体は大きく変わりないが、頚椎1番の浮腫感と可動域制限が当初よりも解消されてきている。
4回目(4週目)のケアでは、下痢と逆流が良くなってきた感覚があるとのこと。また睡眠の質も向上した感覚がある。副交感神経のアプローチに絞っていたことが功を奏している。
5回目(5週目)のケアでは、足の痺れの感覚が変わってきている。もともとは痺れの感覚もわからない状態になりかけている、いわゆる麻痺状態になってきていたが、痺れをくっきりと感じるようになってきたとのこと。
12回目(12週目)のケアでは、アトラス周囲の浮腫感や可動域制限、ブレイクがかなり減少してきており、下部頚椎のブレイクと浮腫が目立つようになった。そのため頚椎のリスティングをC7に変更し、胸椎のリスティングも追加している。
17回目(17週目)のケアでは、今までの中でも首肩こりはほとんど感じていなく、デスクワークが多くなったとしても睡眠を取れば首こりが解消されやすくなったとのこと。また、逆流はもう出ていなく、便の調子も問題ない。
現在はメンテナンスを継続している
今回の患者様の場合、主訴としては首の凝り感でありました。それだけにフォーカスすれば首だけをやればいいという考えになったしまいそうです。ところがよく深ぼって話を聞いてみると他に逆流性食道炎や下痢といった消化器系の問題も含まれています。
このような際には自律神経の問題も加味して、ケアを進行する必要があります。
自律神経は交感神経と副交感神経がありますが、交感神経は車に例えるとアクセルの部分であり、副交感神経はブレーキの部分にあたります。副交感神経のサブラクセーションにより自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働くことで消化機能が亢進し過ぎてしまうことがあります。副交感神経の圧迫により腸での水分吸収がうまく行われないため、腸の動きが異常に高まってしまったことで、水分量が多い下痢が発生してしまいます。また、胃酸が過剰に分泌されれうことからも逆流性をともなってしまうのです。
また上記の通り交感神経が過剰になると、末端の血行が不良になったり
筋肉が緊張状態になっしまうため肩首こりも同居したとも考えられます。現に、副交感神経に絞ってアジャストメントを進行していくと、首肩こりに関しても解消され、同時に消化器系の問題も順調に回復していきました。
またがん投薬(シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ボルテゾミブなどが代表的)の副作用である痺れに関しても、薬によって麻痺してしまった末梢神経が回復したことにより、今までにない感覚を生み出しており、今後も痺れ感に注目してケアを続行したいです。
肩こりや首こりという題材だと、どうしても症状にフォーカスしがちになってしまいますが、問診をしっかりと行い、患者様の背景を理解した上で今回のように体全体を見てアプローチをすることが非常に重要です。結果的にそれが、多くの問題に対してアプリーチを可能にします。そのことを改めて感じることができた症例でありました。
執筆者NEOCHI関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。