シオカワグループ シオカワグループ

退職を余儀なくされた自律神経失調症

退職を余儀なくされた自律神経失調症

原因不明の体調不良が改善された!

50代男性
主訴
自律神経失調症、耳鳴り、めまい、頭痛、末端冷え性、不安感、不眠症、
来院に至った経緯

ある日、朝起きると左耳からうるさいほどのキーンという耳鳴りがした。ベッドから立ち上がろうとすると激しいめまいがして、その場で倒れてしまった。15分程、安静にしてなんとか立ち上がれたが、顔を洗おうと鏡の前に立ったら世界が回っているように見えた。

会社に連絡をすると、上司が「すぐに病院へ行け!」と言ってくれたので、妻に運転してもらい病院へ行くことになった。病院では、特に異常が無く「過労ですね。よく寝てください。」と言われただけで終わってしまったが、たしかに仕事も多忙で睡眠時間も短かったなと思い、その日は帰ってずっと横になっていた。

翌日、出社して仕事をしていると、また左耳からキーンという耳鳴りが聞こえてきた。今度はめまいは出なかったが、激しい頭痛がして、とても仕事を続けられる状態ではなく帰宅させてもらい、別の病院へ行ってみた。

先日、別の病院では異常なしと言われたと伝えると、脳の精密検査もしてもらえることになった。MRIやCTを撮って半日がかりで検査を受けたが、やはり異常なしと言われた。帰りに上司に電話をすると、明日から1週間休めと休暇をもらえることになった。

病院でもこれだけ調べても異常なしと言われたから、1週間、よく食べて、よく寝て、それで回復するだろうと思っていた。ところが5日経っても、6日経っても、耳鳴り、めまい、頭痛を繰り返してとても明日出社できる状態ではなかった。

結局、仕事は休職することになり、何か所も病院をたらい回しにされることになった。最終的には心療内科で自律神経失調症だと診断された。この頃から、睡眠の質が急激に悪くなり夜眠ることができなくなった。

眠れなくなってからは手足の冷えを感じるようになり、病院で相談すると睡眠薬を処方された。眠れないのはここ最近の話で、最初は耳鳴り、めまい、頭痛が出ていたと伝えたが、あまり取り合ってもらえず、「これを飲めば眠れるから様子を見てください。」と言われるだけだった。

会社は何か月も休むことになり、最終的には退職を余儀なくされた。職を失った不安とかばってくれていた上司に申し訳ないという気持ちで、この先どうすればいいのか分からなかった。

いろいろと調べて自律神経に強そうな整体院や鍼灸院などを見つけてくれたが、どこへ行ってもあまり変化が見られなかった。もうダメかと諦めかけた時、家族が当院のHPを見つけた。

当院のHPの症例報告で、同じように自律神経失調症の人が改善しているということを知り、ここなら良くなるのかもしれないと期待されて当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    第一頸椎左横突起にスポンジ状の浮腫

  • 02

    頚部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    左仙腸関節の可動域制限

経過と内容

初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起のと左仙骨翼に強い浮腫が確認され、頚部胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きが確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD6レベルで激しい椎骨の変性が確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、休職中ということで週1回のケアから開始した。

2週目(2回目のアジャストメント)には、耳鳴り、めまい、頭痛の頻度が明らかに減った。

11週目(6回目のアジャストメント)には、耳鳴り、めまい、頭痛はまったく出なくなり、睡眠の質も良くなってきた。

21週目(9回目のアジャストメント)には、睡眠薬に頼らなくても眠れるようになった。就職活動ができるほど活発になり、無事に再就職することができた。

37週目(12回目のアジャストメント)には、体全体の調子が軽くなり、手足の冷えもそういえば気にならないと本人も忘れているほどだった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の自律神経失調症は、まさに自律神経のバランスが乱れていたことが原因であったと考えられる。

検査では上部頸椎と骨盤部に強い反応がみられたが、上部頸椎と骨盤部はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経支配の部位にサブラクセーション(根本原因)があったことで、交感神経が過剰に働いてしまい、自律神経のバランスを乱してしまったのだろう。

末端冷え性などはその典型例となる。交感神経の作用として、末梢の血管を閉じる役割があるが、その状態が長期間続くことで末梢の血管が閉じたままとなり血流異常を起こしていたと考えられる。

耳鳴りは、聴き取れなくなった音(周波数)を脳がなんとかして拾おうと、聴覚の感度を上げてしまうことが原因だと考えられる。ラジオのボリュームを上げすぎると、逆に雑音が入ってしまうのと同じように、聴覚の感度を上げすぎたことで耳鳴りを発症していたと考えられる。

検査で強い反応があった上部頸椎は耳と密接な関係がある。人間の平衡感覚は耳が大きく関与しているため、耳鳴りだけではなく、めまいも発症していたと考えられる。また、上部頸椎は脳幹に最も近い重要な部位となるため、頭痛にも関与していたと考えられる。

今回のケースでは、特に腰痛などは見られなかったが、骨盤部の左右の乱れが顕著に確認された。腰部の椎間板の慢性的な段階を考えると、腰の神経にも長年にわたって負荷が掛かっていたと考えらえる。

神経はものすごく繊細にできていて、10円玉ほどの重さの圧力が掛かるだけで、神経の流れは6割も阻害されてしまうという研究結果もある。しかし、神経の流れが6割阻害されても痛みを感じない人がいる。

つまり自律神経の問題でも単純な痛みでも、症状は急に現れるが神経への負荷は急激には起こらず、少しずつ負荷が掛かり、限界が来た時に症状となって現れてしまう。

人間は日常生活で重力が掛かった状態で生活をしているが、人間の背骨は骨盤の上に乗っているため、骨盤部は土台の部分にあたる。上部頸椎は建物でいうと最上階の部位となるため、土台である骨盤部の乱れは、最上階である上部頸椎への大きな負荷になっていたと考えられる。

アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経のバランスが整った結果、さまざまな症状の改善に繋がったと考えられる。

自律神経のバランスの乱れと一言でいっても、交感神経の問題なのか、副交感神経の問題なのかを特定する知識と検査力が必要である。問題となっている箇所を特定し、神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

pagetop