
稽古も復帰できた
20年以上前から古武道の稽古を続けており、身体を動かすことが日常の一部となっていた。これまで腰に痛みを感じることはあったものの、一時的なものであり、日常生活に支障をきたすことはなかった。しかし、今年の5月に庭の草むしりをしていた際、立ち上がった瞬間に左股関節に鋭い痛みが走った。最初は軽い筋肉の張りや関節の違和感程度に感じ、大きな問題とは捉えていなかったが、翌朝出社しようとすると、歩行が困難なほどの激しい痛みを感じ、すぐに病院を受診することとなった。
病院ではレントゲン検査を受けた結果、「辷り症」と診断され、併せて坐骨神経痛の症状があると指摘された。医師からは経過観察とともに、必要に応じて投薬やリハビリを行うよう勧められた。しかし、診断を受けた後も症状は改善せず、むしろ悪化していった。特に歩行時には、左太ももが攣りそうな感覚が頻繁に現れ、膝が抜けそうになることも増えた。また、左下腿部にはしびれを伴う症状も出現し、これまで当たり前にできていた動作が難しくなっていった。
仕事にも支障が出始めてしまい、デスクワーク中心の業務ではあるものの、長時間座り続けることで腰や股関節の違和感が強まり、作業に集中できなくなった。さらに、立ち上がる際には強い痛みが伴い、歩行時の膝の不安定さも相まって、社内での移動さえ億劫になるほどであった。長年続けてきた古武道の稽古にも影響を及ぼし、これまでは稽古後に多少の疲労感や筋肉痛を感じる程度であったが、今回の症状が出てからは思うように体を動かすことができなくなった。技の稽古だけでなく、基本動作さえも満足にこなせない状態となり、稽古を控えざるを得ない状況に陥った。これにより、長年続けてきた鍛錬が途絶えてしまうことに対する焦りも生じ、精神的なストレスも増していった。
股関節の痛みから始まり日常生活、仕事、趣味にまで影響を及ぼし、自力での改善が難しいと感じるようになった。そんな折、古武道の知り合いの奥様が「塩川カイロプラクティック治療室」に通院し、症状が改善して調子が良くなったという話を聞いた。これまで病院での治療を続けても思うような回復が得られなかったことから、他の方法を模索していたところであり、信頼できる施術を求めていた。より良い状態を取り戻し、再び古武道の稽古に復帰できるようにするため、一度診てもらおうと決意し、来院に至った。
腰仙部周囲に浮腫
左四頭筋筋力低下
腰仙関節の可動制限
初診時の状態では、腰仙部に明らかな浮腫と可動制限があった。左大腿四頭筋の筋力低下も見られた。
初期集中期の段階としては、L5椎間板がD5で運動神経障害による筋力低下も見られたため、週3回が理想だが仕事の関係で週1回のペースからケアを開始することとした。
7週目(3回目のアジャストメント)には、仕事でなかなか来れないこともあったが、攣りそうな感覚はあるが、歩行時に膝が抜けそうになることはなくなった。左下腿部のしびれは前回後から大丈夫。
11週目(5回目のアジャストメント)には、左大腿部突っ張り感はまだあるが、それ以外は良好。古武道も確認しながらやってみてくださいと伝えた。
18週目(7回目のアジャストメント)には、突っ張り感もなく、稽古も問題なくできた。出張稽古も楽しめたと喜んでいた。
普段からストレッチなど自分でもケアをしており、本人で自己管理をしてみるとのことでカイロプラクティクケアを終了とした。
骨盤部分でバランスが乱れは腰椎の配列にも影響を与える。第5腰椎の椎間板はD5レベルととても慢性的ではあることから10年以上前からサブラクセーション(根本原因)が放置されている状態であると考えられた。
レントゲン上ではL4のすべり症と病院で診断され確認できた。四頭筋の運動新規支配領域を考慮するとL4神経根になるが、検査では腰椎を支えている骨盤部分でのサブラクセーション(根本原因)が確認された。
脊椎を支えている骨盤のサブラクセーションによって椎間板部分で長期的に負担がかかると、椎間板の水分は放出され椎間板のスペースが減少する。その影響により辷り症となったことも考えられる。負担がかかりやすかった部分で慢性的に神経機能にも影響を与え、腰の痛みやしびれ・筋力低下などの症状に繋がったのであろう。
仙骨部をアジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれたことで、神経機能が正常に働くようになり、長期的に椎間板にかかっていた負担か改善され腰の痛み、左下肢の症状の改善したのだろうと考えられる。
症状やレントゲンだけに頼らず、体表温度・視診・静的触診・動的触診・レントゲン評価の5つの検査からサブラクセーション(根本原因)を特定することが重要である。サブラクセーション(根本原因)が取り除かれることで神経の機能が回復し、脳への情報伝達が正常に働くことで体の不調の回復に繋がることが実感できた症例である。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。