身体の傾き、肩こり、腰痛
仕事はデスクワークであり、長時間椅子に座ってパソコン作業をしているため、慢性的に肩こりや腰痛を抱えている状態だった。最近では少し座っているだけでも痛みを感じるようになってきた。しかし、肩こりや腰痛よりも、一番の主訴は身体の傾きである。なぜなら町中のショーウィンドウの鏡に映った自分の姿が、いつも傾いているように見て気になっていたからだ。さらに、筋トレが趣味であるが、左右対称に筋肉が付きにくいことも気になっていた。身体の傾きがあり、そのせいで筋トレの効果もいまいちではないかと考えていた。そんな時、塩川満章先生のYouTubeがきっかけで、塩川カイロプラクティックに来院され、初回アジャストメント後、レントゲンを撮影。その後、地元に近かった当院へ紹介された。
右仙腸関節の可動域制限
下部頸椎の過緊張
L1~L5のハイパー
最初に塩川カイロプラクティックにて一度目のアジャストメントをされているため、実質2回目であるが1回目のアジャストメントとして行う。頸部・骨盤部レントゲン側面像ではC6とL5はD5と慢性的な段階であったため、週3回のケアからスタートすることにしたが、仕事上の都合より週2回からスタートした。
1週目(2回目のアジャストメント)には、肩こりや腰痛が少し良い様に感じる。1回目のアジャストメントから日が浅かったのもあり、安定していた。右側の仙腸関節の浮腫感も1回目よりも落ち着いていた。骨盤部のアジャストメントでC1の緊張が緩み、可動が良くなったため、C1は補正であると判断した。
2週目(3回目のアジャストメント)には、体幹の軸転が変化してきた。後方から見た捻じれが平行になってきた。しかし、この週は仕事が忙しかったため、肩こりや腰痛を自覚していた。
5週目(6回目のアジャストメント)には、術者から見ても身体の傾きが少なくなってきた。体の傾きが以前に比べて、かなりましになったと自覚。左耳介や左肩の傾きも並行となってきた。また、慢性的な肩こりや腰痛の状態も改善されてきた。このころから筋トレも再開した。全体的な状態も改善されたため、通院ペースを落としていくこととした。
6週目(7回目のアジャストメント)には、かなり体幹のバランスも改善されていった。筋トレをしていても、現在は左右同じように筋肉がつくようになってきた。現在は健康状態を維持するため、メンテナンスを推奨し、月1回アジャストメントを加えている。
今回のケースでは、身体の傾きが主訴での来院であったが、これは土台理論より、骨盤部の補正作用が原因であったと考えられる。視診における姿勢の分析では、全体的なカーブの確認を行う。また、脊柱両側の形状の確認を行うことで全体的な脊柱バランスやパターンを分析が可能となる。骨盤のアジャストメントの時点で体幹の傾きが改善されたことから、これらの身体の傾きは補正であったことと考えられた。
また、頭部の傾きで重要なのが、上部頸椎との関係性である。頭部は骨盤や腰椎サブラクセーションによる補正によって傾くことがある。骨盤のアジャストメントによってC1の緊張が緩み、可動が良くなっていため、C1は補正であると判断した。骨盤部のサブラクセーションによって発生した構造上の変化を、身体がうまくバランスをとるために、体を側方へ湾曲させていた結果、体が傾いたのである。湾曲しているため、体にかかる負荷に左右差があり、肩こりや腰痛、筋トレ時の左右差などが発生したものと考えられる。
様々な原因があると思われるが、長時間のデスクワークのため、骨盤部の可動性が制限されやすい環境であったことも原因の一つである。また、腰痛は仙腸関節の問題の場合、短時間(30分程度)の座位姿勢であったとしても、疼痛を感じやすいという特徴があるため、今回の問題とも合致する。
この症例からの学びとしては、身体が傾いていたからといって、即、患部に対してアジャストメントを加えることが正しいわけではないということである。身体には重心のバランスを取ろうとする働きがあり、体の傾きは補正作用によることが多い。一般的な整体院ではその傾きを中心に考えるが、正しく分析できていれば、傾きは重視すべきことではないことが分かる。臨床では見た目に惑わされないよう、十分に注意する必要がある。
執筆者OKA接骨院・鍼灸院・整体院岡芹 侑哉
1993年、埼玉県出身。柔道整復師・鍼灸師の免許取得。接骨院・鍼灸院・整形外科の研修後、接骨院を開業。塩川スクールにてトムソン教室、クレニオセラピー、上部頸椎ボディドロップターグルリコイル、Gonstead seminar修了。現在、塩川スクールの検査のインストラクターとしてカイロプラクターの育成に携わる。