

”自分の足で長い距離をあるけるようになりました”
足の痛みと痺れに長年悩まされている。
特に右太ももから足先にかけての強い痛みと痺れがあり、わずか100メートルも歩けない状態にある。数分も歩けば足が張ってきて、ピリピリと痺れ、次第に力が抜けるような感覚になる。日常のちょっとした移動でさえ、常に「大丈夫だろうか」と不安と隣り合わせだという。
これまでに脊柱管狭窄症と診断され、2011年7月には手術も経験している。手術後しばらくは症状が落ち着いた時期もあったが、近年になって再び痛みと痺れが強くなってきた。特に最近では、寝返りがつらく、仰向けで眠ることも難しい。寝ていても常に違和感があり、眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めてしまうという。
足先にかけての常に続く痺れは、ただ痛いだけでなく、心をじわじわと消耗させる。何をしていても気になり、体を動かすことに対する抵抗感がどんどん強くなる。その結果、気づけば外出の頻度が減り、好きだった散歩や買い物も「行きたいけど、また痛くなるかも」という恐怖で控えるようになってしまった。
加えて、脳梗塞の薬も服用中であり、体調管理には日々気を配っている。年齢的な体力の低下も実感しており、「今のままではこの先もっと歩けなくなるのではないか」という将来への不安も日に日に強まっている。
本来であれば、定年後は元気に散歩をしたり、買い物を楽しんだり、充実した時間を過ごしたかった。しかし現実には、痛みのために外出すら億劫になり、行動範囲も気持ちもどんどん狭くなっている。何よりつらいのは、自分の体が思うように動かせないことで、「これから先どうなるんだろう」と未来に希望を描けなくなっていることだという。
それでも、「今からでもまだ遅くない。少しでも良くなって、もう一度自由に歩きたい」という思いは強く持ち続けている。自分の足で季節の移ろいを感じながら歩いたり、日常のちょっとした外出を楽しんだり、自立した生活を守っていきたいという希望がある。今回の来院には、そんな強い願いと前向きな気持ちが込められている。
仙骨2番から腰椎2番周辺までの大きな手術痕
手術痕周辺の皮膚の固さとかさつき
右の脊柱起立筋の過緊張
左胸鎖乳突筋の過緊張
右腿裏と外側の強いしびれ
初診時では腰部に手術痕周辺の皮膚の固さと、かさつきが見られ、その手術痕は腰椎2番から仙骨2番までと大きなものであった。右の脊柱起立筋の過緊張や左胸鎖乳突筋の過緊張、そして右腿裏と外側の強いしびれも併発しており、まともな歩行も困難であった。
実際にレントゲンを見てみると、腰部側面像において、椎間板は全体的に摩耗しており、特にL1椎間板は後方が閉じきる直前まで慢性化している。また椎体前方は、骨の変形が目立つ。これらの状況を加味し、初期集中期として週に3回のケアを提案する。しかし、まずは成果が出るのか試してみたいとのことで週に1回のケアから始めることとした。
5週目(5回目のアジャストメント)では、これまで当院に来院されるまで3回は休憩していたが当日は1回で済むようになっていた。また、先日お墓参りに行ったところ、一度も休憩しないで済んで付き添いの方にとても驚かれたそうだ。
5週目(6回目のアジャストメント)では、雨ということもあり休憩できる場所がなかった。それもあってか、歩いて休憩なしでお越しになれた。
6週目(7回目のアジャストメント)では、右のふくらはぎにあったしびれが感じられなくなってきたとのことであった。歩行もスムーズになってきている。
11週目(11回目のアジャストメント)では、歩行に不安がなくなり、毎日散歩を快適にできるようになったと喜ばれている。腰部の緊張や皮膚の固さは残っているものの、神経圧迫の度合いは落ち着いている。
28週目(19回目のアジャストメント)では、5000千歩ほど歩けるようになってきていて、歩行自体もスムーズになってきている。それ以上歩いていくと、だんだんと腰や足に痛みはでるものの、休憩もなく日常生活を楽しんで過ごせている。
現在も趣味の散歩を楽しまれたり、スポーツ観戦にも赴くことができるようになっている。しびれや痛みのケアもしながら、生涯通じて健康に意欲的に生きていけるようにメンテナンスを続けている。
腰の骨の通り道(脊柱管)が狭くなると、足につながる大事な神経が長い間ぎゅっと圧迫され、しびれや力の入りにくさ、長い距離を歩けないといった症状が出てきます。
今回の患者様は、腰全体の関節に長年ゆがみ(サブラクセーション)があり、少なくとも15年以上、神経に負担がかかり続けていたと考えられました。
実際に以前、昔ながらの開くタイプの腰の手術を受けており、術後の痕跡もはっきり残っていました。
症状としては、脊柱管狭窄症に特徴的な「足のしびれや脱力感」「歩くとすぐつらくなる(間欠性跛行)」といった神経のトラブルが確認されました。
検査を進めていくと、問題の根本原因は腰そのものではなく、骨盤の右側にある仙腸関節にありました。
ここが固くなり炎症のサインが出ていたため、骨盤全体の動きがねじれ、その負担が腰の神経に大きくのしかかっていたと考えられます。
このような状態が長く続いた結果として、脊柱管狭窄症を発症した可能性が高いです。
もし腰だけを手術で対処しても、この骨盤の問題が残っていると、症状から完全には抜け出せません。
今回のケースでは、土台となる骨盤、特に右の仙腸関節の動きを整えることで、長く続いた歩きづらさが改善に向かった貴重な症例でした。
「痛いところだけを見るのではなく、骨盤や背骨全体のバランスを整えることがどれだけ大切か」
それをあらためて実感できるケースとなりました。


執筆者塩川カイロプラクティック関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。