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腰の痛みから発症したうつ病

腰の痛みから発症したうつ病

趣味のピアノも楽しく弾けるようになった

70代女性
主訴
左腰部痛、うつ病
来院に至った経緯

令和6年1月より左腰に痛みを感じるようになり、時間の経過とともに不安感や気分の落ち込みが顕著となった。これにより心療内科を受診し、うつ病と診断を受けた。

腰の症状としては、左腰(臀部)の奥深くに鋭い痛みを感じており、特に寝返りを打つ際や長時間座った後に立ち上がる際、また1時間程度の歩行時に痛みが顕著となる。さらに、左股関節および大腿部の前面や側面には、散歩をした際に筋肉痛のような痛みが生じる。気圧の変化、特に天候が悪化した際には症状が悪化する傾向が見られる。

過去にも同様の症状を経験しており、10年前および2年前にも同部位に痛みが発生していたが、いずれの場合も1〜2か月で症状は軽快していた。

干し芋を作る作業中に長時間右方向へ身体を捻る姿勢をとっていると、作業の後から痛みが出て、現在まで継続している。

日常生活における影響として、仰向けおよび右向きの横向き姿勢が辛く、左向きの横向き姿勢が比較的楽とのこと。

服薬状況については、睡眠導入剤が処方されて以来、毎日服用している。また、痛み止めについては、必要に応じて服用する程度である。

左腰の症状を軽減することはもちろんのこと、趣味のピアノやフラダンス、日常生活に支障をきたしているうつ病の改善を目的として当院を受診した。

 

初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の可動制限

  • 02

    右第一頸椎横突起周囲に浮腫

  • 03

    右腰部起立筋の過緊張

経過と内容

腰部と頚部の椎間板がともにD5レベルと慢性的だったため、週3回のケアを検討したが、遠方のため週1回のケアからスタートすることにした。

4週目(5回目のアジャストメント)には、左腰と臀部の痛みが軽減してきて、左大腿部の筋肉痛のような痛みは感じなくなってきた。

10週目(8回目のアジャストメント)には、散歩や寝返りも困らなくなってきた。睡眠も深く眠れている気がするとのこと。

18週目(11回目のアジャストメント)には、日常生活で困ることも無くなった。気持ちも前向きになってきて、ピアノやフラダンスも楽しく出来ているとのこと。旦那様からみても自宅で明るくなったとのこと。

現在は、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

うつ病と自律神経は深く関わっている。自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、通常はこれらがバランスを取りながら働いている。交感神経はストレスや活動時に優位になり、心拍数の増加や血圧の上昇を引き起こす。一方、副交感神経はリラックスや回復を促し、心拍数を下げたり、消化を促進したりする役割を持つ。しかし、うつ病になるとこのバランスが崩れ、心身にさまざまな影響を及ぼす。

特に、交感神経が優位な状態が続くと、ストレスや不安が強まり、筋肉が過度に緊張する。この筋緊張によって血流が悪化し、肩こりや腰痛、頭痛といった慢性的な痛みが生じやすくなる。痛みが続くことで交感神経の働きがさらに活性化し、リラックスすることが難しくなる。さらに、睡眠の質が低下することで疲労が十分に回復せず、翌日も身体のこわばりや痛みが残るという「痛みの負のサイクル」に陥ることがある。

この負のサイクルの中では、痛みそのものがストレスとなり、交感神経の過活動を引き起こす。交感神経が優位な状態が続くと、筋肉の緊張がさらに強まり、痛みが増すという悪循環が形成される。やがて痛みによるストレスが蓄積し、脳が「痛みを感じやすい状態」になり、わずかな刺激でも強い痛みを感じるようになることがある。また、痛みによって活動量が減ると、筋肉が衰え、関節の柔軟性が低下することでさらに痛みを悪化させることにもつながる。このように、うつ病の症状と痛みの負のサイクルは相互に影響を及ぼし、悪循環を強めてしまう。

このサイクルを断ち切るために、一般的には適度な運動や深呼吸や瞑想によって呼吸を整えること、十分な睡眠を勧めることが多い。筋肉を動かす指令や外の環境への順応、呼吸や睡眠も全て神経を介して脳に伝えられる。

今回の症例は骨盤部と上部頸椎という副交感神経部位にサブラクセーションがあったことで、交感神経が過剰に働き自律神経のバランスが乱れた結果と考えられる。

神経と脳が正しく状態を把握できたことにより、自律神経のバランスが整い慢性的な痛みの緩和やストレスの軽減に繋がり、痛みの負のサイクルから抜け出す手助けとなったと考える。

金城 寿生

執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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