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脳梗塞後遺症による腕のしびれ

脳梗塞後遺症による腕のしびれ

後遺症のしびれが気にならなくなり驚きです!

50代男性
主訴
脳梗塞後遺症による腕の痺れ
来院に至った経緯

1年半前に脳梗塞(延髄)を発症してから、右半身にしびれや痛みが残り、特に腕や足に力が入りにくく、日常生活の中でつらさを感じていた。発症当初は飲み込みがうまくできず、水を口に含んでもむせてしまい、呼吸が苦しくなって倒れてしまった経験もあった。仕事中に急に体調が悪化することもあり、体への不安が常につきまとっていた。もともと目の奥の疲れや頭の重さも強く、集中力も続かないため、仕事や趣味を思うように楽しめない日々が続いていた。

さらに、和菓子職人として長年繊細な作業を続けてきたことから、首や肩には常に強い緊張がかかっていた。細やかな作業の合間には、大きな釜や材料を運ぶ重労働もあり、繊細さと肉体労働の両方を求められる職業特有の負担が積み重なっていたという。過去にはバイク事故で大きな衝撃を受けたこともあり、それ以来「身体がどこか不安定で無理がきかない」という感覚が強まっていた。年齢を重ねるごとに「以前のように動けないのではないか」「このまましびれや痛みと付き合うしかないのか」という不安が大きくなっていた。

そんな中、奥様が先に当院へ通院し体調を整えていく姿を間近で見て、「自分もカイロプラクティックで改善できるかもしれない」と感じ、紹介をきっかけに来院することを決意された。これまで支えとなってきた仕事を続けたい気持ちと、日常生活をもう一度安心して楽しみたいという強い思いが、来院の背景にあった。

初診の状態
  • 01

    右手全体のしびれと痛み

  • 02

    左胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    右腿裏と横に痛み

  • 04

    右足の歩行障害(ぶん回し歩行)

経過と内容

初診時には頚部全体の過緊張が確認され、特に左の胸鎖乳突筋の強い張り感が目立つ。また、脳梗塞をきっかけに右手全体のしびれや、歩きにくさが目立っており、来院された際も杖をついて足を引きずるような様子であった。腰部の皮膚はほかの部位に比べかさついており、右の脊柱起立筋の緊張感もかなり強い。
レントゲンを確認してみると、腰椎の神経機能低下は10年から15年以上前からのものであると推察でき、頚部においても腰部ほどではないが神経に対して負担がかかっていることが確認できた。
そのため、初期集中期として初診から1か月程度は週に2回は確実にお越しいただきたいとお伝えするも仕事による都合で週1回が限界とのことでケアをスタートすることとした。

4週目(4回目のアジャストメント)では、右手のしびれやこわばりが3~4割程度は軽減したとのことであった。一番症状が強かった時よりも、ものを持ったり、操作するようなことが容易になったとおっしゃっている。

6週目(6回目のアジャストメント)では、来院時杖をついていなかった。歩いている姿も、横揺れするような動作(脳梗塞後遺症に多いぶん回し歩行)は落ち着きを見せている。右腕のしびれは若干のこるものの、手のしびれはほとんど気にならなくなった。

15週目(11回目のアジャストメント)では、右腕のしびれも落ち着いてきており、仕事も順調にこなせるようになった。こわばりが取れた分、細かい作業をこなすこともできるようになり順調に回復をたどっている。

現在は、重たいものを運ぶ際に不安があるためメンテナンスを希望されている。脳梗塞の既往があるため、専門医と提携を続けながら、今後も予防としてカイロプラクティックを継続的に提供していきたい。


考察

本症例は、約1年半前に脳の一部である延髄に脳梗塞を起こし、右半身のしびれやこわばり、歩行の不安定さ、手の細かい動作のしにくさなどが残っていた50代の男性です。

延髄は、呼吸や心拍、飲み込み、声を出すといった生命維持に欠かせない働きを担う、とても重要な場所です。そのため、この部分に梗塞が起こると、手足の麻痺や感覚の異常、飲み込みにくさ、ふらつきなど、さまざまな症状が長く残ることがあります。特に「ワレンベルグ症候群」と呼ばれるタイプでは、顔の片側のしびれ、反対側の体の感覚障害、飲み込みや発声の障害、めまい、まぶたの下がりなどが起きることが知られています。

この男性も発症当初は、水を飲んでもむせて呼吸が苦しくなり倒れたことがあり、延髄の損傷による神経伝達の乱れがあったと考えられます。その後も右半身のしびれやこわばりが続き、杖を使って歩く状態でした。これは、延髄にある「錐体路」と呼ばれる運動神経の通り道にダメージがあったためと推測されます。

そこで当院では、延髄と特に深く関係する部位であり、副交感神経の働きにも関わる「第一頸椎(C1)」と「骨盤」に焦点を当ててケアを行いました。

骨盤を整えることで体の土台が安定し、腰や下肢にかかる負担が軽減。C1(第一頸椎)への調整によって、延髄のすぐ下にある神経や血流の流れが改善されることが期待できました。実際に数回のケアの後には、右手のしびれやこわばりが3〜4割ほど軽くなり、歩行も少しずつ安定してきました。

また、腰椎の動きの悪さや椎間板への長年の負担も確認されており、これらも神経伝達を妨げていた可能性があります。C1と骨盤の両方を整えることで、延髄を中心とした神経の働きがスムーズになり、自律神経のバランスも回復していったと考えられます。その結果、体幹や下肢の安定性が増し、杖を使わずに歩けるようになり、手の細かい動作もスムーズになっていきました。

このように、延髄の梗塞後遺症では、単に筋肉や関節を整えるだけでなく、神経の働きを回復させる視点が大切です。特に、延髄と深い関わりを持つ上部頸椎(C1)や体の土台となる骨盤を整えることで、神経の通り道や血流環境を整えることができ、回復のサポートにつながる可能性があります。

今後も、医療機関との連携を図りながら、こうしたアプローチが神経機能の回復にどのように貢献できるかを検証していきたいと考えています。

関野 貴友

執筆者塩川カイロプラクティック関野 貴友

1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。

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