立ち上がる時の腰の痛み、足のしびれ
元々山の測量の仕事をしており、山の斜面や乱雑な土砂の道を移動することが多く、腰痛持ちであった。2週間前、立ち上がる時に痛みがあり、椅子に座ると動くのが嫌になっていた。来院時には、腰臀部に鋭い痛みがあり、時々右下肢後面にしびれがあった。しびれがあるときは、足がつるような感覚で動かしにくい。日常生活で腰を動かすと痛みがあり、特に歩く時に鋭い痛みが走るのが一番の悩みである。
2年ほど前に地元の病院で診察を受けたところ、「脊柱管狭窄症」と診断され、MRI上では腰部の2か所に狭窄が認められている。これ以上悪くなるようであれば手術を勧められたが、手術では成功するか分からないため、避けてきたとのこと。代わりにブロック注射や痛み止めの薬、湿布などを処方されていたが、長くは効果が続かなかった。また、接骨院にてマッサージを受けていたが、こちらも同様であった。当院に来院される半年前から、腰痛の改善のために、ウォーキングを毎日6000~7000歩しているが、痛みが増すばかりであったという。
また、肩こりにも悩んでいた。どのくらい前からあるか分からないほど昔からあり、頸部の動きが悪いことを自覚している。頸部の運動痛も訴えている。マッサージをされても緊張が抜けないようである。
これから暖かくなってきたら、趣味のゴルフを楽しみたいと考えているが、今の状態では諦めざるを得ないと思っていた。しかし、当院に通院されていた友人からの紹介により、ご来院の運びとなった。
頚部の起立筋の過緊張
腰部の起立筋の過緊張
右の仙腸関節の可動域制限
遠方からの来院であったため、初期集中期の段階では週1回のケアからスタートすることにした。初診は問診と検査の情報により右の骨盤とC5のアジャストメントを行った。
5週目(6回目のアジャストメント)には、腰や臀部に感じていた鋭い痛みが半減した。また、日常生活における立ち上がる際の痛みが軽減してきた。このことから、自宅の庭の、植木の剪定作業ができたというご報告を頂いた。さらに、左足の痺れも薄れ、気にならなくなってきた。
10週目(9回目のアジャストメント)には、5週目と比べると痛みが改善され、かなり長時間歩いていても痛みが出なくなった。最近は毎日8000~10000歩という長距離を歩いても問題ないという。5月以降は左足の痺れも出ていない。
症状が回復しても、脊柱管狭窄症自体は構造が戻っているわけではなく、あくまでも神経の機能が回復したものであるため、メンテナンスをおすすめした。
今回の脊柱管狭窄症では筋骨格系の問題だけでなく、自律神経の問題も有する症例であったと考える。
この患者様の場合、問題があった部位は仙腸関節である。仙腸関節と腰部の問題の場合、それぞれの特徴が異なる。仙腸関節の問題の場合、短時間(30分以内)の座位姿勢での疼痛の悪化、歩行時に痛み、横になることが困難、朝に疼痛の緩和などの特徴がある。今回の来院時、2週間前には立ち上がる痛みがあったが、現在は歩く時の痛みであることから仙腸関節の問題の可能性が高いことが示唆される。また、ウォーキングをしても解消されなかったのは、仙腸関節が動かない状態で行っていたからであると考えられる。これでは健康にとってはマイナスにしかならないため、動きがついてきたからこそ、ウォーキングができるようになったのだろう。
しびれも右の仙腸関節の問題が長期にわたって負担がかかり続けた結果、神経に影響し、しびれをもたらしたものと考えられる。痺れが見られなくなったのも、仙腸関節のサブラクセーションが解消され、負担がかからなくなり、徐々に神経が回復したのだろう。
足がつれる症状が見られたが、これは副交感神経に問題があり、交感神経に影響していることが考えられる。筋肉の痙攣であり、交感神経が過剰な状態を示唆する。
また、肩こりの原因には2つあり、一つは体のバランスの乱れにより頭を支えるために体がバランスをとることで緊張するものである。もう一つは自律神経の乱れにより、筋肉の過緊張を呈するものである。今回のケースでは後者であると考えられる。交感神経が過剰に働くことで、頚や肩の筋肉を緊張させていたのだろう。
自律神経の問題を特定し、根本原因が取り除かれることによって、神経の流れが正常になり、自然治癒が正常になった。自然治癒力の偉大さを感じる症例であった。
執筆者OKA接骨院・鍼灸院・整体院岡芹 侑哉
1993年、埼玉県出身。柔道整復師・鍼灸師の免許取得。接骨院・鍼灸院・整形外科の研修後、接骨院を開業。塩川スクールにてトムソン教室、クレニオセラピー、上部頸椎ボディドロップターグルリコイル、Gonstead seminar修了。現在、塩川スクールの検査のインストラクターとしてカイロプラクターの育成に携わる。