
腰痛と足の痺れで歩くことが困難な状況から回復
10年ほど前、整形外科で「脊柱管狭窄症」と診断される。
当初は腰の重だるさだけだったが、年々症状が進行し、左腰に鋭い痛みが出るようになった。歩くたびに足に力が入りにくく、だんだんと両足にしびれや麻痺のような感覚が現れるようになった。
気づけば、5分も歩き続けることができなくなっていた。少し歩いては休むことを繰り返し、まともに外出もできない。まさに間欠性跛行という言葉の通りの状態に頭を悩ませる。
整形外科では痛み止めやしびれを抑える薬を処方され、それを飲めば一時的には落ち着いた。ただ、薬が切れると症状は戻り、根本的には何も変わらない日々だった。
そのうち、夜中に痛みや違和感で何度も目が覚めるようになえい、トイレも間に合わず、尿漏れしてしまうこともあった。日常生活の中で「普通に動けること」がどれほどありがたいことだったのかを思い知らされた。
心も沈んでいき、外出がおっくうになり、家族や周囲の人たちと比べて「自分だけが取り残されているようだ」と感じることも多かった。できていたことがどんどんできなくなり、自分に対する自信も失いかけていた。
そんな中、ふと頭に浮かんだのが、昔一度だけ受けた塩川カイロプラクティック治療室のことだった。もう一度あそこへ行ってみようという気持ちが湧いてきた。
正直、ずっと「このまま何も変わらないのかもしれない」と諦めかけていが、それでも、まだできることがあるのではないか。少しでもこの状態から前に進みたい。そんな思いで、再びカイロプラクティックを受けることを決意し来院に至った。
間欠性跛行があり、10分歩いたら休憩をしないと歩けない
両足の指先までしびれを感じている
仙骨周辺全体の筋緊張が強い
仙骨3番を中心としたスポンジ状の浮腫がある
腰部および頸部の椎間板はD4~5と全体的に慢性化が確認でき、サブラクセーションが少なくとも15年程度は放置されていたことが確認できる。そのため初期集中期は週に2〜3回のペースを提案するも、仕事の都合や当院までの距離を鑑みて、まずは週に1回のペースでケアを開始することとした。
2週目(2回目のアジャストメント)では、アジャスト後に両足がとてもだるくなった感じがあったそう。かなりの反応が出ている。長年放置されたサブラクセーションがある際の反応であると考察できる。
4週目(4回目のアジャストメント)では、これまで悩みの種であった夜間の尿漏れが気がついたら無くなっていたそう。実際、仙骨の神経圧迫は減少傾向にある。浮腫はまだ残存している。
9週目(9回目のアジャストメント)では、歩行の時間が2~3分で休憩しなければいけないレベルから、10分程度は一度で歩けるように回復してきた。腰の痛みもまだあるが、歩行がスムーズで喜ばれていた。仙骨の動きも少しずつ出てきている。
11週目(11回目のアジャストメント)では、これまで足先にあった痺れが膝くらいまで上がってきた感覚があり、回復傾向にある。歩行距離も少しずつ伸びている。仙骨の浮腫も減少傾向。
12週目(12回目のアジャストメント)では、尿漏れともう一つの悩みとしてあった中途覚醒もしなくなってきたと自覚される。
23週目(20回目のアジャストメント)では、仙骨の浮腫感や神経圧迫が目立たなくなってきたこともあり、交感神経領域にアジャスト箇所を変更した。歩行も時間が伸びて、腰の負担もかなり軽減されてきた。
現在はしびれがまだ少し残っていることもあり、仕事の合間にメンテナンスを継続している。
この方は、10年ほど前に整形外科で「腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)」と診断されました。これは、腰の背骨の中を通る神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されてしまう状態です。
最初は腰のだるさだけでしたが、少しずつ悪化していき、ある時から「左腰の鋭い痛み」や「両足のしびれ・力が入りにくい感覚」が出てきました。さらに、5分以上続けて歩けない「間欠性跛行(かんけつせい はこう)」と呼ばれる状態になり、夜中に何度も目が覚めたり、尿もれのような症状も出てきて、日常生活に大きな支障をきたしていました。
このような症状は、神経が長い間圧迫されたことによるものです。検査では、背骨の下の方(腰椎5番~仙骨あたり)に慢性的な神経の圧迫があり、首から骨盤まで神経の流れがストレスを受け続けていたと考えられました。これは、少なくとも15年以上にわたって神経の働きがうまくいっていなかった可能性を示しています。
はじめは週に1回のケアからスタートしました。2週目には「足のだるさ」が一時的に強くなりましたが、これは長く圧迫されていた神経が動き始めたことで起こる「回復のサイン(好転反応)」だと考えられます。
そして4週目には、深刻だった「夜間の尿もれ」がなくなりました。これは、骨盤の中の神経の働きが整い、尿をコントロールする筋肉がうまく働くようになった証拠です。
9週目には、歩ける時間が2~3分から10分ほどにまで伸び、足のしびれも少しずつ軽くなってきました。この変化は、神経の通り道が少しずつ整ってきたことを表しています。
カイロプラクティックでは、サブラクセーションを取り除いて、神経の流れをスムーズにすることを目指します。この方のように、薬では一時的にしか良くならなかった症状が、神経への根本的なアプローチで改善していくケースも多く見られます。
とくに今回は、排尿や睡眠などをコントロールする「副交感神経」という神経の働きを高めることに集中してケアを行いました。その結果、腰の痛みだけでなく、夜中の尿もれや途中で目が覚めるといった症状も改善されていきました。
神経の再生は1日に1ミリほどとも言われており、変化にはある程度の時間が必要です。この方の場合も、半年以上かけて徐々に回復していきました。根気よく神経の流れを整えていくことが、改善への近道となります。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。