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背中の強い張り感

背中の強い張り感

40代女性
主訴
背中の強い張り感、末端冷え性、頭痛、不眠症、生理痛、腰痛
来院に至った経緯

幼少の頃から長いことピアノを弾いていてコンクールなどにも出ていたので、姿勢には常に気を使っていた。大人になってもピアノを続けていて、結婚して出産するまではピアノスクールで講師をしていた。

30歳と35歳で2回出産をしたが、2人目を出産した直後から背中に強い張り感や、日によっては痛みを強く感じるようになった。出産を機にピアノスクールの講師業は退職していたが、趣味でピアノは続けていた。幼少の頃から何かあるとピアノを弾いて気持ちを落ち着かせていたが、背中の張り感を感じるようになってからは気になってピアノを満足に弾けなくなってしまった。

幼少期からずっとピアノを弾いていて、座っている時間が長かったので慢性的に腰痛は感じていたが、背中の張り感や痛みはこれまで一度も感じたことがなかったので、どのように対処したらいいのか分からなかった。

ピアノを気持ちよく弾けなくなってから体調が悪くなり、決まって夕方になると頭痛がするようになった。頭痛は、日によって出る場所や質が異なり、後頭部がズキズキしたり、両方のこめかみがドクンドクンと脈打ったり、頭部全体が締め付けられるように感じる日もあった。

頭痛が気になってなのか、この頃から睡眠の質が悪くなった。寝入りが極端に悪くなり、酷いときには布団に入って3~4時間眠れないこともあった。子供の頃からどれだけ体調が悪くなっても眠れないということはなかったので病院で相談すると、こちらの話はあまり聞いてもらえずに頭痛薬と睡眠導入剤を処方された。

元々、中学生くらいから末端冷え性や生理痛が酷くて、末端冷え性はお風呂などで温めてもすぐに手足が冷たくなったり、生理が来ると最初の2日間は痛み止めを飲んでも動けないほどの下腹部痛があった。

背中の張り感を感じて大好きなピアノを満足に弾けなくなってから本格的に体調不良になったので、ストレスによる自律神経の問題だなと思い、自律神経専門の整体院や針鍼灸院に通ってみたが、まったく変化がなかった。

この先の年齢的なリスクも考えて薬には頼りたくなかったが、どこへ行っても治らずどうすればいいのか悩んでいたところ、友人の紹介で当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    左仙腸関節の可動域制限

  • 02

    左腰部起立筋の過緊張

  • 03

    頸部左胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容

頸部の椎間板にD4レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、育児の関係上週1回のケアからスタートすることにした。

4週目(4回目のアジャストメント)には、あれほど気になっていた背中の張り感や痛みはほとんど感じなくなった。長時間、ピアノをしていると少し背中に違和感は出るものの、以前とは明らかに違うと感じるようになった。

5週目(5回目のアジャストメント)には、背中の張り感や痛みはまったく感じなくなり、自由にピアノが弾けるようになった。また夕方以降に感じていた頭痛も気にならなくなった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。

13週目(9回目のアジャストメント)には、睡眠の質にも変化が出てきた。寝入りが酷いと3~4時間掛かっていたものが、薬を飲まなくても1時間以内には眠れるようになった。また学生時代から感じていた末端冷え性にも変化が出てきて、お風呂で温めたりすると夜布団に入ったあとにも温かいと感じられるようになってきた。この段階でケアのペースを3週間に一度に広げることができた。

22週目(12回目のアジャストメント)には、中学生の頃からあった生理痛がまったく感じなくなった。これまでは一度生理が来ると痛み止めを飲んでも動けなくなるほどの下腹部痛があったが、痛み止めを飲むことなく生理痛を感じなくなった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、いつまでもピアノが弾ける身体でいたいとケアのペースを1か月に一度に広げてカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の末端冷え性、頭痛、不眠症、生理痛の問題は、自律神経の乱れが最大の原因であったと考えられる。

今回は、骨盤部と上部頸椎に反応が見られたが、骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があると、交感神経が過剰に働いてしまう。

末端冷え性は交感神経が過剰に働いている人の特徴である。交感神経の作用として末梢の血管を閉じる役割があるが、その状態が長く続くことで末端まで血液が循環しなくなり末端冷え性となってしまう。

夕方以降に出る頭痛は緊張性の頭痛であり、これも交感神経が過剰に働いている人の特徴となる。今回は頭痛の質や場所が変わったりもしたが、これはホルモンバランス異常が起きている場合に起こりやすい。自律神経のバランスが乱れたことで、ホルモンバランス異常も起こっていたのだろう。

不眠症も自律神経が大きく関係している。休まる神経である副交感神経が上手く機能せずに、日中活動する神経である交感神経が過剰に働いていたことで、寝床に入っても休まるスイッチが入らずに寝入りが悪くなって不眠症となっていたのだろう。

生理痛は女性ホルモンの分泌が関係しているが、自律神経のバランスが乱れたことで女性ホルモンの分泌にも異常をきたしていたのだろう。副交感神経のサブラクセーション(根本原因)により、交感神経が過剰になることで血行不良が起こり、体全体の代謝や排毒作用が低下してしまう。その結果、子宮内膜や経血を体外に出そうとプロスタグランジンというホルモンが過剰に分泌されてしまう。このプロスタグランジンの分泌量が多くなりすぎると、子宮の収縮が強くなり過剰な生理痛を誘発させてしまう。

昔から慢性的にある腰痛は、骨盤部の乱れから腰部の配列の乱れを引き起こし、腰の神経に必要以上の負荷が掛かっていたと考えられる。また主訴であった背中の張り感や痛みも、土台である骨盤部の乱れが原因であった可能性が高い。

胸部レントゲン側面像では、背中の後弯カーブ(後ろカーブ)が完全に消失している状態だったが、この場合は下のレベル(特に骨盤部)のサブラクセーション(根本原因)が原因となっていることが多い。

今回の背中の張り感や痛みは、背中の後弯カーブ(後ろカーブ)が消失するほど、下の方から引っ張ってしまっていた結果として、張り感や痛みとなっていたのだろう。痛みがあるからといって、イコールその箇所が問題とは限らない典型的な例であった。

どのような症状が出ていたとしても、しっかりとした検査によってサブラクセーション(根本原因)を特定し、体の情報を脳へ届けることが何より大切だと分かる症例であり、あらためて土台である骨盤部の重要性が分かる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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