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聞こえづらい低音性難聴

聞こえづらい低音性難聴

大好きなバンドのライブをちゃんと楽しめた!

50代女性
主訴
低音性難聴と耳の閉塞感
来院に至った経緯

患者は、左耳の低音性難聴と耳の閉塞感を主訴として来院された。

耳の中に水が詰まったような感覚が続き、音が聞こえにくくなることがある。症状には波があり、特に朝起きた直後が最もつらく、日中も動き始めに悪化する傾向があるという。難聴に伴って吐き気を感じることもあるが、めまいはみられていない。耳鳴りもあり、朝には耳だれのような感覚を覚えることもある。

この症状は2022年10月に初めて発症した。その後いったん落ち着いていたものの、2025年6月初旬に再び症状が現れたため耳鼻科を受診した。処方された薬を服用していたが十分な改善は感じられず、別の耳鼻科も受診して治療を続けている。

しかし現在も「ほんの少し良くなったかもしれない」と感じる程度で、はっきりとした回復には至っていない。入浴後には耳の調子が良くなることが多く、本人は血流の影響もあるのではないかと感じている。

仕事は事務職で、日中はデスクワークが中心である。最近は職場の人員不足もあり、仕事量が増えたことで精神的な負担を感じている。また、過去には乳がんの治療で抗がん剤治療を受けた経験があり、体調の変化に対して不安を感じやすい状態でもあった。

患者は音楽鑑賞が好きで、夫も音楽鑑賞を趣味としているため、耳の症状を改善して音楽を楽しみたいという思いが強い。加えて、体調が回復すれば、現在控えている旅行にも行きたいと考えている。

特に8月末に予定されている音楽イベントに元気な状態で参加したいという目標があり、耳の症状を中心に身体全体の状態を整えることを目的として来院された。

初診の状態
  • 01

    左耳介上方

  • 02

    第一頸椎左横突起のスポンジ上の浮腫

  • 03

    右短下肢

経過と内容

初回では、頚部は左胸鎖乳突筋の筋緊張、第1頚椎の左側屈制限、乳様突起下のスポンジ状の浮腫が確認できた。腰骨盤部においては右仙腸関節の可動制限、右上後腸骨棘上部の窪んだ浮腫、右脊柱起立筋の筋緊張が確認できた。

レントゲン画像では、頚部の椎間板の段階がD5と確認された。カイロプラクティックでは、レントゲンの評価として椎間板をD1〜D6の6段階に分けて評価を行っていく。頚部の段階はそのうちのD5と慢性度合いが強い状態であり、神経には10~15年の負担があると考えられる。

同じく、腰部の段階はD4であり、慢性度合いが少し強い状態であり、5~10年の神経の負担があるだろうと推察する。

初期集中期では、神経への負担が長期にわたっていたことから週3回のケアを提案したが、仕事の都合上週2回からスタートした。

3週目(6回目のアジャストメント)には、当院に来院するようになってから症状が落ち着いている感覚があるとのこと。アジャストメントした日の夜は心地良いだるさが出る。

7週目(10回目のアジャストメント)には、耳の調子が良くなり、職場での会話でも相手が何を言ってるのか理解して会話ができるようになった。好きなバンドの公演に行き、とても楽しむことができたと報告を受けた。

9週目(12回目のアジャストメント)には、耳の問題は全く出ておらず、聞こえないことはなくなったとのこと。便秘、睡眠の質、夜間頻尿に関しても改善傾向にあり、ホットフラッシュが今の一番の悩みである。

現在は、好きなアーティストのライブやライブフェスへの参加を目標に、調子のさらなる改善と自らの自然治癒力の大切さに気づき、月に1回のペースで継続してカイロプラクティック・ケアを受けている。


考察

本症例は、低音性難聴と耳の閉塞感を主訴とし、さまざまな不調を伴っていたケースである。

難聴や耳鳴りには、12対ある脳神経のうち第8脳神経である内耳神経が深く関わっている。内耳神経は、聴覚と平衡感覚、すなわち「音を聞く」「姿勢を保つ」という重要な感覚機能を担っている。

音が聞こえる仕組みとしては、外部からの音が空気の振動として耳に届き、その振動が耳介、外耳道、鼓膜、耳小骨を通じて内耳へ伝わる。さらに奥にある蝸牛がその振動を電気信号に変換し、蝸牛神経(内耳神経)を介して脳の聴覚領域へ届けることで、私たちは音を認知することができる。また、蝸牛内のコルチ器には多数の聴細胞が存在し、音の情報を電気信号へ変換している。

この音の情報を脳へ届ける神経の働きが乱れると問題が起こる。サブラクセーションによって内耳神経の流れが阻害されたり、自律神経のバランスが崩れたりすると、音の情報を正しく脳へ伝えにくくなると考えられる。

このように音の情報が十分に届かなくなる状態が、いわゆる難聴である。このとき脳は「もっと音を聞こう」と感度を高めようとし、本来なら意識されないような微細な電気信号まで過剰に拾ってしまうことがある。それが耳鳴りとして感じられるのではないかと考えられる。つまり耳鳴りとは、脳が音に対して過敏になった結果として現れる反応の一つとも捉えられる。

難聴や耳鳴りの改善には、まずサブラクセーションという根本的な問題を取り除くことが重要である。サブラクセーションが取り除かれ、脳と身体をつなぐ神経の流れが正常に近づけば、音の電気信号もより正確に脳へ届くようになる。すると脳は音の感度を過剰に高める必要がなくなり、難聴や耳鳴りも改善へ向かっていく可能性がある。

本症例では、上部頚椎と骨盤部に絞ってアジャストメントを繰り返した。上部頚椎と骨盤は副交感神経の支配領域であり、難聴、耳鳴り、不眠、バセドウ病、子宮筋腫といった症状と関係が深い。まさに今回の症例においても、睡眠の質、難聴・耳鳴りの軽減がみられた。

これはサブラクセーションが取り除かれ、神経の働きが整い、自然治癒力が発揮されていったと考えられる。耳鳴りや難聴は単なる耳だけの問題ではなく、神経の乱れや過剰な反応が大きく関わっていることがうかがえた。そのため、身体全体のバランスを整え、神経の働きを正常に保つことが大切である。

特に印象的であったのは、7週目に患者が「好きなバンドのライブを楽しめた」と報告した点である。これは単に症状が軽減しただけでなく、生活の質が向上し、本来やりたかったことに再び取り組めるようになったことを示している。カイロプラクティックの本質は、不調の有無だけでなく、その人らしい生活を取り戻すことにあるといえる。

現在はメンテナンス期に移行し、さらなる安定を目的としてケアを継続している。本症例は、神経機能の改善を通じて全身状態が整い、その結果として耳の症状が変化していった一例であり、身体全体を一つのつながりとして捉えることの重要性を示す症例である。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

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