
”ずっと我慢していたパーソナルトレーニングにも行けるようになりました”
この患者様は、長年調理師として働いてこられました。若い頃から料理の道に入り、重たい食材を運びながら、毎日長時間立ちっぱなしという過酷な労働環境の中で日常を過ごしてこられたそうです。
数年前から腰の痛みと右足のしびれを自覚されるようになり、特に歩行中にふくらはぎがつるような鋭い痛みが出ることが増えてきたとのこと。最初は「疲れがたまっているだけだろう」と思っていたものの、次第に買い物に出ることさえ辛くなり、仕事中も台所に立つのが苦しくなるほどに。
不安を感じて整形外科を受診された結果、診断は「腰部脊柱管狭窄症」。医師からは「加齢によるもの」と説明を受け、鎮痛薬やリハビリで様子を見ることになりました。リハビリでは電気治療やストレッチを受けていたものの、痛みやしびれの改善は乏しく、「年齢のせい」と言われるたびに気持ちが沈んでいったと話してくださいました。
その後、知人に勧められて整体院や鍼灸院にも通われましたが、「一時的に楽になる感じはあっても、根本的には良くなっていない」という感覚が続き、仕事も思うようにこなせず、以前のように厨房に立つことすらままならなくなっていったとのことです。
そんな中、ふと自宅に届いた当院のチラシが目にとまり、「手術に頼らず自然な回復を目指す」という言葉に惹かれて来院されました。
右仙腸関節にしこりと浮腫感
腰部、背中の筋肉のこわばり
胸腰椎移行部から下部胸椎に強いfix
最初に検査をしたとき、腰の椎間板は全体的にかなりすり減っていて、首の椎間板も同様に長年の負担がたまっている状態でした。本来であれば週に3回のケアをおすすめしたかったのですが、お仕事の都合で、週2回からのスタートとなりました。
ケアを始めて2週目(5回目の施術)では、背中の固まりが少し和らいできて、ご本人も「なんだか背筋がスッと伸びたような感じがする」と話してくれました。長年丸まっていた姿勢が少しずつ変わってきた感覚があったようです。
6週目(10回目の施術)には、「腰の痛みが明らかに減ってきた」と感じられるようになり、背中から腰にかけてのハリも和らいできました。
14週目(24回目の施術)になる頃には、ずっと我慢していたパーソナルトレーニングにも行けるようになり、「ようやく動ける身体に戻ってきた」とのこと。腰から足にかけての痛みもかなり落ち着き、背中や腰の深い部分にあったむくみも範囲が狭くなってきていました。背骨の動きはだいぶ良くなってきたとはいえ、まだわずかに硬さが残っていたため、引き続きケアを続けていくことになりました。
現在は症状の再発を防ぐために、定期的なメンテナンスを続けながら、快適に日常生活を送られています。
一般的な腰痛に対しては、まず痛みを和らげるために、湿布や痛み止め(いわゆる鎮痛薬)が使われることが多いです。筋肉をやわらげて血流を良くするための薬や、神経の働きを助けるビタミン剤なども使われます。ただ、これらは一時的に症状を和らげるための対処であり、原因を根本から取り除くものではないのが現実です。
腰痛の原因としては、冷えや長時間同じ姿勢でいること、ストレス、運動不足、目の疲れ、ホルモンバランスの乱れ、生活リズムの不安定さなどがよく挙げられます。こうした生活習慣を見直すことももちろん大切ですが、同じような生活をしていても腰痛になる人とならない人がいることから、生活習慣だけでは説明しきれない部分もあります。
そこで注目したいのが、「身体の内側にある調整機能」、つまり神経系の働きです。腰痛は、ただの「痛み」ではなく、体が「今、バランスが崩れてますよ」と教えてくれているサインです。たとえば、長時間の座りっぱなしが続くと、背中の筋肉や骨に負担がかかり、血の流れが悪くなり、筋肉が疲れて痛みを感じやすくなります。
カイロプラクティックでは、腰痛の原因を「神経の伝達の乱れ」や「関節の動きの偏り」といった視点から見ていきます。神経がうまく働くように整えていくことで、体が本来持っている回復力が発揮されやすくなり、症状の改善だけでなく再発予防にもつながると考えられています。
腰が痛いとき、よく触ってみると腰やお尻まわりの筋肉がガチガチに固まっていることがあります。これは、身体がずっと受け続けているストレスに反応して、自分を守ろうとしているサインでもあります。ストレスを感じると交感神経という緊張のスイッチが入り、血の流れが悪くなり、疲れがたまりやすくなるのです。
こうした初期の段階では、軽い運動やストレッチ、しっかり寝ることで回復することもあります。しかし、それが長引いたり悪化した場合には、「安静にしていても良くならない」「動かすと余計に痛くなる」といったこともよく起こります。
このような状態になると、脳は「何とか治そう」と体に指令を出し始めます。血流をよくして、傷んだ場所を修復しようとするのですが、それが時には炎症や痛みとして現れることもあります。でもそれは、体ががんばっている証拠でもあります。
筋肉がずっと緊張しているのは、体が腰や骨盤の不安定さを感じて、なんとか支えようとしている証しです。痛みやコリは「悪いもの」ではなく、身体が必死にバランスを取ろうとしている大切なサインです。
ここで大事なのが、「脳と身体のコミュニケーション」がきちんとできているかどうか。神経の働きがうまくいっていれば、脳は体の状態をしっかりと把握し、「こう動かした方がいいよ」「ここを治そう」といった指令をスムーズに出すことができます。逆に、その情報のやりとりに乱れがあると、いくらマッサージやストレッチをしても、なかなか良くならない…ということが起こるのです。
つまり、腰痛を本当の意味でよくしていくには、痛みのある部分だけでなく、「体全体のつながり」や「神経のめぐり」を整えていくことがとても大切です。身体が本来持っている回復力を引き出してあげることで、腰痛は良い方向へ向かっていきます。
執筆者細井カイロプラクティック細井 康隆
埼玉県さいたま市出身。2011年にスポーツトレーナーとメディカルトレーナーの資格を取得後、2014年に国家資格の柔道整復師資格を取得。接骨院・整体院での臨床と経営経験から多くのセミナー講師を務め、その参加人数は延べ2,000人以上を数える。その後カイロプラクティックと出会い、日本カイロプラクティックのパイオニアである塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.が主宰である塩川スクールで学ぶ。2025年に卒業し、埼玉県さいたま市大宮区にて細井カイロプラクティックを開業。現在は本物の技術を提供するカイロプラクターとして、臨床で多くの患者様と真摯に向き合い施術を行う傍ら、塩川スクールでインストラクターとして後進の指導を行っている。