
睡眠薬に頼らずに朝まで眠れるようになった!
子供の頃から心配性で起こってもいないことが心配になり、よく両親や学校の先生から怒られていた。小学生から高校3年生まで野球をやっていたが、心とは裏腹に身体は強く、一度も怪我という怪我はしたことはなかった。
社会人になって配送会社で勤務していたが、長時間トラックを運転している影響か、重たい物を積み下ろししている影響か、腰痛が出てきた。ぎっくり腰も2回ほど経験しており、運動不足かもと思って週4~5回ジムで体を動かすようになった。
筋トレをしすぎると逆に腰痛が酷くなったので、ウォーキングやストレッチを中心に汗をかいていた。そのおかげで慢性的にずっと痛むということはなくなったが、長距離移動したあとにトラックから降りると腰が伸びずに固まっている感じがしていた。
今から3年前に、長年勤めていた配送会社が倒産してしまった。幸いなことに別の配送会社がすぐに雇ってくれたので職を失うことはなかったが、ちょうどその頃から不眠症になってしまった。
寝入りは問題なく、仕事で疲れて帰ってくると横になったらすぐに眠れるが、3時間くらいで目を覚ましてしまうようになった。夜中に目を覚ますと、今度はなかなか寝付けずに、そのまま朝になって出社するということを繰り返していた。
睡眠時間は次第に短くなり、気づけば1時間くらいで目を覚ましてしまうようになった。病院に行ったが、「寝入りは問題ないが、寝てもすぐに目を覚ましてしまう」と伝えると、念のため睡眠薬を処方しておきますと言われた。
薬を1週間ほど試してみたが、寝入りは問題ないが結局1時間くらいで目を覚ましてしまうことは変わらなかった。睡眠薬を飲むと翌朝になっても薬が成分が残っているのか、運転中にボーっとしてしまうことがあり、どうせ飲んでも効かないなら事故を起こすリスクが上がるだけだと判断して薬を飲まなくなった。
思い当たることといえば、睡眠の質が悪くなる1か月くらい前から、運転中に目がすごく疲れるなと感じていた。夕方位になると視界が悪くなる気がして、体調が悪いとそこから頭痛がしてくるようなこともあった。
頭痛は目の奥が引っ張られるような感覚で、目の裏側がズキズキするような頭痛が出ていたが、帰宅してお風呂に入ると目の疲れも頭痛も気にならなくなっていたので、特に病院には行っていなかった。
トラックを運転する仕事だけに、睡眠不足は大事故にも繋がってしまうと思い、病院以外にもいくつか治療院を回ってみた。一番、体に合ったのは針治療で、首に針をやってもらうと2時間くらいは眠れるようになったが、1~2日経つとまた1時間くらいで目を覚ましてしまうようになった。
首に針をしてもらうと少し睡眠が取れるようになるということは、きっと首に原因があるのだろうなと思った。自分でいろいろと調べて当院のホームページを見つけ、『根本原因にアプローチ』という言葉が気になり、ここなら良くなるかもしれないと思い、当院に来院された。
頸部胸鎖乳突筋(特に右側)の過緊張
正中仙骨稜に強い浮腫感
腰部起立筋の過緊張
初診時の状態では、上部頸椎には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎右横突起と正中仙骨稜に強い浮腫が確認され、頚部胸鎖乳突筋(特に右側)と腰部起立筋は過緊張の状態であった。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きが確認された。首の椎間板の段階も慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。
4週目(4回目のアジャストメント)には、トラックで長距離移動したあとにトラックから降りた後の腰痛があまり気にならなくなった。
8週目(7回目のアジャストメント)には、睡眠の質が少しだけ改善傾向になり、日のよって3時間ほど眠れる日も増えてきたが、まだ1時間くらいで目を覚ましてしまうこともあった。ただし、眼精疲労に大きな変化が出てきて、運転中の目の疲れや目の裏に出る頭痛のような症状は気にならなくなっていた。
16週目(10回目のアジャストメント)には、この頃から睡眠の質がかなり良くなり、4~5時間連続で眠れるようになった。カイロプラクティックケアを受け始める直前からここまで、睡眠薬は一切飲んでいない。
22週目(14回目のアジャストメント)には、睡眠の質はすっかり良くなり、睡眠薬に頼ることなく朝まで一度も起きずに眠れるようになった。また、眠れなくなる以前よりも寝起きがスッキリしていると感じるようになった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の不眠症は、自律神経の乱れが最大の原因であったと考えられる。
検査では、上部頸椎と骨盤部に強い反応がみられたが、上部頸椎と骨盤部はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経支配の部位にサブラクセーション(根本原因)があったことで交感神経が過剰に働いてしまい常に過緊張の状態を起こしていたため不眠症を引き起こしていたと考えられる。
翌日に大事な試験や面接、仕事でのプレゼンなど緊張するような予定を控えていると、ちょっとした物音で目を覚ましてしまうなどの体験は誰しも感じたことがあるだろう。交感神経が過剰な状態というのは、車のアクセルを踏みっぱなしの状態と同じである。
今回のケースでは腰痛もあったが、検査では特に正中仙骨稜の浮腫感が顕著に確認された。単純に腰痛と一言で言っても、その原因はさまざまである。左右の仙腸関節の問題、腰仙関節の問題、腰椎の問題などさまざまあるが、シオカワグループでは仙骨部を5つに分けてより精密に検査を行う。
アジャストメントでもコンタクトする部位はミリ単位で調整している。今回のケースでは、顕著に第二仙結節に温度の誤差や浮腫感が出ていた。腰痛一つ取っても、問題となっている箇所を見つける検査力が、いかに重要かが分かる。
夕方以降になると眼精疲労からの頭痛も出ていたが、目の神経は上部頸椎と密接な関係がある。また、午後以降になると出る頭痛は緊張性の頭痛であり、交感神経が過剰に働いている人の特徴でもある。
アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経のバランスが整った結果、さまざまな症状の改善に繋がったと考えられる。不眠症のような自律神経の問題も、腰痛のような筋骨格の問題も、問題の箇所を特定する検査が何よりも重要であり、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。