頸から右腕のだるさも改善
数ヶ月前から右のお尻から右脚にかけてしびれが続いている。特に長時間座ったり、立ちっぱなしの状態が続くと症状が悪化する。気になって病院を受診したところ、「L5のヘルニア」と診断された。MRIとレントゲンで確認されたが、根本的な治療法はなく、神経痛の薬リリカ(25mg)を処方された。
ただ、薬を飲み始めたものの、体重は増え続け、姿勢も悪化。気づけば呼吸も浅くなり、坐骨神経痛の痛みは日常生活に支障をきたすほどに。さらに最近では足が頻繁につるようになり、思うように体が動かないことへのストレスが増している。また右腕のダルさが日によって出るようになった。
これ以上放っておくわけにはいかないと思い、この症状を改善し、以前のように快適な生活を取り戻すため、インターネットで検索していたところ当院を知り来院に至る。
右仙腸関節の可動制限
右腰部起立筋の緊張
下部頸椎部にスポンジ状の浮腫
腰椎の椎間板がD4相当で慢性的であり右下肢の神経根症状も診られたため、週2回のケアから進めていくことにした。
2週目(3回目)右下肢のしびれが少し減弱してきたとのこと。右骨盤周囲の浮腫が減少し、右腰部起立筋の緊張が軽減してきた。
3週目(5回目)右下肢のしびれが右臀部から右大腿部外側の範囲に減少した。SLR(ー、+)、腰部痛と右下肢のしびれが軽減してきたが、仕事の都合で週1の経過で診ることにした。
5週目(6回目)立ちっぱなしや足の攣りの気にならなくなってきた。右仙腸関節は可動してきており、L5周囲の浮腫残存やデルマトームの範囲、可動制限が残存しているため、L5に移行した。右腕のダルさも気にならなくなってきた。2週に1回の経過に変更。
7週目(7回目)右臀部の痛みになってきて30分ほどは座れるようになってきた。
12週目(10回目)右臀部の痛みもなく、座ることや日常生活も問題なくなった。SLR(ー、ー)メンテナンスに移行。
本症例は、L5ヘルニアによる坐骨神経痛および右下肢のしびれを主訴として来院した。症状は長時間の座位や立位で悪化し、加えて右腕のダルさや足の攣りの影響も見られた。診察の結果、骨盤部の乱れが腰部の配列を崩し、腰や坐骨周囲の神経に負担をかけていたことが、坐骨神経痛の主な要因であると考えられた。
坐骨神経は梨状筋の下を通る親指ほどの太さを持つ神経であり、過度な負荷がかかると歩行困難を引き起こすことがある。今回のケースでは、神経の回復過程において【麻痺→痺れ→痛み→正常】の順序で改善が進み、足のつま先からふくらはぎ、太もも裏へとしびれの範囲が縮小しながら回復していった。
また、骨盤部と上部頸椎に強い反応が見られた。これらの部位は副交感神経支配の領域であり、過剰な交感神経の働きを抑制する役割を持つ。経過により腰仙部に浮腫が限局し可動制限も残存していたため、下部腰椎へのアプローチを行った。加えて、下部頸椎にも問題が確認されたが、これは右肩に繋がる神経支配の影響と考えられる。
このケースから、腰痛、坐骨神経痛、脚のしびれといった症状が、正確に問題の神経系を特定し、段階的にアプローチを行うことで、脳が正しく身体の情報を認識し、自然治癒力を最大限に引き出せることが確認された症例である。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。