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甲状腺機能低下症を伴う不妊症

甲状腺機能低下症を伴う不妊症

不妊症で諦めかけていた子供を無事出産!

30代女性
主訴
不妊症
来院に至った経緯

もともと身体を動かすことが好きで、休日には筋トレを楽しむのが何よりのリフレッシュだった。トレーニングを重ねるたびに体力もつき、理想の体型に近づいていく感覚が嬉しく、仕事のストレスも汗と一緒に流していた。

しかし、いつしか筋トレの翌日になると腰に違和感を覚えるようになった。最初は「少しやりすぎたかな」と軽く考えていたが、トレーニング中やその翌日には必ず腰が重くなるようになり、座り仕事が中心の職場でも痛みを感じるようになった。腰をかばいながらデスクに向かう日が増え、気づけばトレーニング後の爽快感よりも不安の方が大きくなっていた。

そんな矢先、結婚を機に受けた健康診断で「甲状腺機能低下症」と診断された。体のだるさやむくみ、冷えなど、思い当たる症状はあったが、まさか自分がそうだとは思っていなかった。チラーヂンを服用しながら仕事を続ける日々。幸せな新婚生活を送りながらも、どこかに“身体の不安”が残っていた。

その数か月後、不妊症と告げられた。まさか自分が、という気持ちと、どこか納得してしまう気持ちが入り混じった。甲状腺ホルモンが妊娠に影響することは知っていたし、冷えや疲労が溜まりやすい自分の体をどこかで責めてもいた。仕事を続けながら不妊治療を受け、筋トレもできる範囲で続けていたが、結果が出ない日々に心も体も少しずつすり減っていった。

治療には費用も時間もかかる。「いつまで続けられるのだろう」「本当にこのままでいいのだろうか」。そんな思いが頭をよぎり、希望よりも焦りの方が大きくなっていた。

そんなある日、筋トレ仲間の知り合い夫婦から「ここに通って子どもを授かった」という話を聞いた。最初は半信半疑だったが、その夫婦の明るい表情や、無事産まれた赤ちゃんを見た瞬間、心の奥で何かが動いた。「私も、もう一度自分の身体を信じてみたい」。

長年悩まされてきた腰の不調、甲状腺の問題、そして妊娠への不安。すべてがつながっているような気がして、「ここでなら根本から変われるかもしれない」と最後の希望を胸に、当院へ来院された。

初診の状態
  • 01

    腰椎3番の後方への隆起

  • 02

    上部胸椎の浮腫

  • 03

    上部頸椎の緊張

  • 04

    右仙腸関節の可動制限

経過と内容

初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。また、体表温度検査では、上部胸椎と腰椎部、骨盤部に明らかに左右の温度差が確認された。

隆椎周辺には大きなスポンジ状の浮腫、右仙腸関節の内側下端にはくぼんだ浮腫が確認され、右腰部起立筋と左胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。また、上部頸椎周辺は強い熱感を帯びており、患部が炎症している状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰部側面像では、腰椎3番の椎間板レベルはD3ほどだが、顕著な変形所見が確認された。また、頚部側面像では頚椎カーブが消失し、逆カーブを描いていた。

初期集中期の段階として週2回のケアを提示したが、仕事の関係もありまずは週1回のケアから始め経過を見ていくことにした。

5週目(5回目のアジャストメント)には、腰痛が出ても回復するのが早くなった。いつもは筋トレ後数日間は腰痛が続いていたが今は当日〜遅くても翌日中には回復するようになった。翌週(6回目のアジャストメント)には、検査における右仙腸関節と上部頸椎の状態はかなり落ち着き、ブレイクも消失していたため、交感神経に絞ったアプローチに移行することにした。

12週目(10回目のアジャストメント)には、腰痛はほとんど落ち着いていた。筋トレ後に稀に右腰痛が出ることもあるが、痛みも初診時が10とすると1~2程度の軽い張りのような感じで、数時間経つと消えるようになった。そして、ついに妊娠検査薬で陽性が出て嬉しそうにしていた。検査での経過も安定していることから、このタイミングで2週間に1回の間隔に開けていくことにした。

22週目(15回目のアジャストメント)には、腰痛は完全に消失し、血液検査における甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値も安定していた。また、妊娠が始まって徐々に体に変化が出てきているが、ここ数回はアジャストメントの戻りもあまりなく状態も安定していたため、このタイミングで1ヶ月に1回の間隔に開けていくことにした。

現在は、無事出産し子供と3人で幸せな生活を送っている。その中でも腰痛や甲状腺機能低下症などの予防として、また年齢の不安もあるが2人目の妊娠も視野に入れながら月1回の定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

本症例は、甲状腺機能低下症(橋本病)に加えて、骨盤部および腰椎部のサブラクセーション(根本原因である神経伝達異常)が複合的に関与し、不妊症が発生していたケースと考えられる。

甲状腺機能低下症が直接的に不妊を引き起こすわけではないが、甲状腺機能の低下が持続することで月経不順や排卵異常を引き起こし、妊娠しにくい状態になることが知られている。
具体的には、甲状腺機能低下により視床下部からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が亢進し、その影響でプロラクチンが上昇(高プロラクチン血症)を起こす。
このプロラクチンは排卵抑制作用や着床阻害作用を持つため、結果的に不妊や流産の一因となる可能性がある。

一方で骨盤部においては、子宮を支える重要な組織として「子宮傍結合織」が存在する。
これは主に子宮を前方の膀胱、側方の骨盤壁、後方の直腸に連結し、子宮を正しい位置に保つ役割を担っている。
この支持構造に対して、骨盤部のサブラクセーションによる不安定性が生じると、子宮や卵巣の位置・張力バランスにも影響を及ぼすことが推測される。

カイロプラクティックの臨床では、上記のように骨盤部のサブラクセーションが不妊症と関連するケースや、腰椎部のサブラクセーションが卵巣機能障害、排卵痛、卵巣嚢腫、PMS、不妊症などの婦人科系の問題に関係することが報告されている。

本症例では、甲状腺機能低下症と腰痛を伴う不妊症であり、甲状腺に関連している上部胸椎領域のサブラクセーションが甲状腺機能低下に影響していた可能性が考えられる。
さらに、骨盤部のサブラクセーションによって子宮への負担が増大し、加えて腰椎3番に変形が起こるほどの慢性的な機械的ストレスが重なっていたことが、不妊の背景要因となっていたと考えられる。

様々な要因が複雑に絡みあっている状態だったが、一つ一つ優先順位をつけながら適切なアプローチを定めてケアを続けた。アジャストメントによってサブラクセーションが取り除かれたことによって、子宮にかかる負担の軽減に加え、脳と身体がうまくコミュニケーションを取れる状態になったことで自然治癒力が正常に働き、不妊症の改善につながったと考えられる。改めて神経の流れを整えて身体の情報を脳へ正常に届けることの重要性を感じた症例だった。

高島 克哉

執筆者塩川カイロプラクティック高島 克哉

神奈川県川崎市出身。
横浜市の整体院に勤務後、世田谷区で開業。
様々な治療法を模索し多くの講習会に参加している中で塩川雅士D.C.の記事を読んだことをきっかけにカイロプラクティックに出会う。
その後塩川カイロプラクティックで塩川満章D.C.、塩川雅士D.C.のアシスタントを務めながらシオカワスクールで哲学・科学・芸術を学ぶ。現在は塩川カイロプラクティック副院長として臨床に励みながらシオカワスクール講師を担当し、正統なカイロプラクティックを全国に広めるべく活動をしている。

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