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産後の腰痛,首のだるさ,副鼻腔炎

産後の腰痛,首のだるさ,副鼻腔炎

産後の腰痛,首のだるさ,副鼻腔炎

30代女性
主訴
産後の腰痛、首のだるさ(本人曰くストレートネックがつらい)、副鼻腔炎、睡眠の質の低下(日中の意識朦朧)
来院に至った経緯

出産の前から少し気になっていた腰の重さが、産後に悪化した。
また、昔から首のこりが気になっていたがこれもまた産後に悪化したように感じていた。
「これは産後のホルモンバランスからなのか、それとも骨盤に問題があるのか」と、原因がわからぬまま色々とネットで調べているとカイロプラクティックを見つけ、産後のケアとして通ってみたいと感じ来院に至った。
また、来院時には副鼻腔炎の症状が悪化しており目の奥、そして鼻周りの痛み、黄色い鼻水などのお悩みも重なっていたことも来院の動機となっていたようだ。

初診の状態
  • 01

    仙骨全体にスポンジ状の浮腫(S2を中心に広がる)

  • 02

    腰椎の前弯が過剰

  • 03

    T2-6の胸椎後弯減少(ディッシング)

経過と内容

腰椎の椎間板に関してはある程度保たれていたが、頚椎に関しては椎間板がD2/3レベルで慢性具合が伺えたことと、患者様のご希望で週1のケアで開始し、育児のやりくりのこともあるのでご無理のないようお越しいただいた。
初診から4週目の4回目のアジャストメントの頃には、最初にあった仙骨のスポンジ状の浮腫は軽減していた。患者様の所感的にも腰の痛み、重さは軽減していていた。首のだるさも軽減している。副鼻腔炎の症状については平行線であまり変化はない。
日中の意識が朦朧する感じは軽減しており、睡眠の質が良くなってきたと実感されている。
14週目、7回目のアジャストメントの際は、育児のことや家庭の事情もあり、月1回の頻度に低下してしまったものの、腰や首の重さはかあなり軽減したとのことであった。仙骨の浮腫の範囲も狭くなっており、頸部全体の緊張も緩和されていた。睡眠の質はかなり安定してきたとのこと。夜泣きが減ってきたことも関係していると思うとのこと。
副鼻腔炎の症状で一番気になっていた目の奥の痛み、鼻水等も落ち着いてきたがまだ気になる
ここからリスティングをS2PとC2PLに変更
26週目、10回目のアジャストメントの頃には、育児をしていても腰や首が気になることはなく快適に生活できているようになった。育児で負担はかかるものの、以前よりも大変動きやすそうにしており、来院時も泣き止まないお子様を問題なく抱っこされていた。副鼻腔炎の症状もほとんど何も気にならずとのことであった。
体表温度測定の数値も初診時より落ち着いている。
今後も育児の負担を考慮し、職場の復帰を見据えてケアを継続していく。


考察

人間の体をコントロールしている自律神経には交感神経と副交感神経が存在しており、
交感神経は、車でいうアクセルの働きがあります。一方で副交感神経はブレーキです。
例えば、副交感神経サブラクセーションが起こると、副交感神経が働きにくくなる反動により、交感神経が暴走した状態となります。車でいうところのブレーキが効かず走り続けてしまうようなものです。
それが人間に起こると、“過剰に鼻水が出てしまう”“心拍が上昇する””下痢や胃酸過多などの消化器系のお悩み””筋肉の硬直””過長月経””湿った喘息(痰)”といった臓器や腺(体液、粘液を分泌する場所)の機能が過剰になるような特徴が発生します。体をリラックスさせる機能も低下するため睡眠の質の低下なども発生することが多いです。
今回の患者様のお悩みとして”睡眠の質の低下”や、”副訴の副鼻腔炎による黄色い鼻水がよく出る”という点でまず副交感神経サブラクセーションを疑います。
また、骨盤部の仙骨には範囲の広いスポンジ状の浮腫がありました。また、腰部の脊柱起立筋、頸部全体にも硬直があります。
腰部の脊柱起立筋の緊張や頸部全体の筋肉の硬直は、副交感神経サブラクセーションの特徴の要素の一つであり、
副交感神経サブラクセーションが濃厚で、土台である骨盤の安定も図りたいことから、施術をS2、C1と限定しました。
ケアの進行とともに、土台である骨盤の安定が見られたことから腰や首の筋緊張が緩和され、重さや痛みは緩解へと向かっていったように思います。
副交感神経領域に絞って施術を行なったため、自律神経機能も正常な働きを取り戻し、睡眠の質も安定し、副鼻腔炎による鼻水、痛みもある程度は軽減していきました。
ところが、途中までは仙骨2番、C1で絞っていましたが、どちらをアジャストメントしても、C2レベルの体表温度と可動域制限は取れにくいという特徴がありました。
腰の悩みや睡眠の質などが落ち着いたタイミングで、C1ASRをC2PLにリスティングを変更してからは副鼻腔炎の炎症も落ち着いていきました。
この患者さまは、出産後であること、そして育児の負担があることの双方から体に負担がかかっていたようにうかがえます。
睡眠のリズムも夜泣きなどでなかなか安定せず、お疲れの様子が続いていましたが、ケアを継続することで心身ともに改善が見られたと思われます。
施術の際、一般的によく見受けられる考え方だと首の緊張、腰の緊張だけを見れば下部の頚椎(C7)や腰椎のアジャストメントも同時にしてしまいたいという気持ちが起こってしまうかもしれないですが、自律神経の領域で考えればそれは相反する箇所を同時に施術することになってしまいます。
今回の患者様の場合、仮に交感神経領域にも目先の利益だけを求めてアジャストメントを遂行してしまっては交感神経が優位な状態を助長させてしまうこととなってしまいます。
先の車の説明で言えばアクセルをより強めるようなことになってしまいます。
今回のようにレントゲンや体表温度測定、問診などあらゆる角度から、施術の箇所に優先順位をつけ行なっていくことが結果的に患者様にとって負担が少なく、そして良い結果へとつながっていくものだと改めて感じました。
また、産後は体の負担がとても大きく、もしそれに対して複数箇所何度もアジャストメントを行なっていれば、患者さまにとっては負担であり、さらには自律神経系の安定もしにくかったであろうと思います。
産後ケアや高齢者、虚弱者のケアの場合、自律神経系のことを考えて領域を絞ると同時に、体の負担も考えた上で、厳選した部位でのアジャストメントを行なっていくことが重要になってくると考えさせられた症例でありました。

関野 貴友

執筆者NEOCHI関野 貴友

1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。

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