シオカワグループ シオカワグループ

母指CM関節症・IP関節症

母指CM関節症・IP関節症

50代男性
主訴
母指CM関節症・IP関節症
来院に至った経緯

中学校で吹奏楽部に入り、同時にピアノを始めそれからずっとピアノを続けてきた。学校では音楽講師をやりながら夫婦で運営する合唱団でピアニストを担当してきた。授業や合唱団でのレッスン、コンサートなどが常にあり、数十年に渡りほぼ毎日ピアノを弾き続けていた。

するとあるとき親指に痛みが出始めた。最初は弾いた後に軽く痛みや違和感を感じる程度で気にしていなかった症状が、徐々に悪化し半年経つ頃には酷いものになっていた。たまらず病院へ行くと、母指CM関節症・IP関節症と診断を受けた。親指は骨が変形して太くなり、親指は赤く、熱く腫れ上がっていた。触るだけでも痛みがあり、親指と小指をくっつけたりする動きも出来なくなった。

病院では「何もできない」といわれ、しばらくは我慢して病院でもらう湿布と痛み止めを飲んでピアノを弾き続けていた。しかし、一向に症状は改善せずそれどころか悪化の一途を辿っていった。

ついには激しい痛みによって濡れたタオルを絞ったり、ペットボトルのキャップを開ける音ができなくなり、箸を持つこともできなくなった。

ピアノを弾けなくなるどころか日常生活すら満足に送れなくなった絶望感に明け暮れる毎日だったが、奥様の母指CM関節症が当院のカイロプラクティックで改善したことをきっかけに最後の望みを託して奥様の紹介で来院された。

初診の状態
  • 01

    右手親指の熱感

  • 02

    下部頸椎の大きな浮腫

  • 03

    右仙腸関節の緊張

経過と内容

レントゲン評価では頸椎の慢性度合いがD4で変形を伴っており、右手も変形が見られた。腰椎5番もD45レベルと慢性度合いが高く、右手の症状は日常生活にも影響が出ていた。初診時から3ヶ月は本番も残されている状態で、まずは週1回のペースからケアを始めることにした。

4回目の来院時には、上部頸椎の緊張はわりと変化してきた。しかし、親指は変わらず熱感と浮腫・疼痛を訴えている状態だった。下部頸椎には大きめの浮腫があり、5回目からC7のアジャストメントを入れていくことにした。

8回目の来院時には徐々に変化を本人が感じ始めていた。5回目からC7のアジャストメントを入れたが、それからは浮腫がC7エリアに集まり始め可動性も向上していた。親指に関してはまだ動きの悪さや痛みはあるものの、C7を入れてから熱感は引いてきていて、少しずつ変化を感じているようだった。

13周目からは本番も3ヶ月ほど落ち着き、回復に専念できるとのことだった。練習は感覚が鈍らないようにつづけている状態ではあるが、以前よりもハードな練習はしなくて良いとのこと。下部頸椎の浮腫もかなり落ち着いてきている。親指の熱感はなくなってきており、痛みも初診時が10とすると4くらいになってきた。動きも良くなってきている。

17周目のアジャストメント時には9割良くなってきているとのこと。痛みを日常やピアノ演奏中に感じることはなくなり、箸やペットボトルはもちろん、タオルを絞ったりすることも問題なくできているようだった。

現在はさらなる改善と悪化防止を兼ねて2週に1回のペースで来院を続けている。


考察

今回のケースは、病院で母指CM関節症・IP関節症と診断されているケースだった。そもそも母指CM関節症は親指の付け根にある関節の軟骨のすり減りによって生じる疾患で、50歳前後の方に最も頻繁に発症する変形性関節症の一種である。多くの場合、タオルを絞る、ペットボトルの蓋を開ける、ドアノブを回すなどの何かを握ったり掴んだりする動作時に痛みを生じる。

痛み以外であげられる症状としては、腫脹、硬さ、こわばり、握る時の力が弱まる、動かしにくい、骨隆起が起こるなどがある。

母指CM関節症やIP関節症の医学的なアプローチとしては、湿布や痛み止めの処方、ステロイド注射などが挙げられる。日常生活では安静にすることやサポーターで固定したりなどの方法がある。

今回の患者様は上記のような治療を半年ほど続けていたが、悪化傾向だったということに加え、熱感や腫脹、疼痛などの炎症所見がはっきり見られた。そんな中で奥様のCM関節症が改善したということで来院を決められた。

腕・手指の症状に関して、カイロプラクティクでは頸椎の問題を疑うことが多い。また、親指の症状は上部頸椎の問題・下部頸椎の問題によるものが多く見られる。

今回の検査では下部頸椎と上部頸椎に体表温度測定での反応や浮腫感、可動制限などのサブラクセーション(根本原因)の兆候が見つかった。

またレントゲン評価では頸椎5~7番に渡り変形が見られることに加え,頸椎6~7番の椎間板は5~10年の負担がかかっている指標であるD4と慢性度合いがやや進んでいた。

また動的触診では頸椎7番だけでなく6番にも可動制限が感じられたが、頸椎7番にサブラクセーション(根本原因)の兆候がはっきり出ていたことに加え、浮腫の状態などからも頸椎7番を選択した。

カイロプラクティックにおいては、1つアジャストメントする椎骨がずれるだけで結果は大きく変わってくる。だからこそ検査が非常に重要である。最初の1ヶ月はほとんど変化が見られなかったが、頸椎7番に確信を持ってアジャストメントを続けた結果、根本原因であるサブラクセーションが取り除かれたことで、母指CM関節症・IP関節症による痛みの改善に繋がったと考えられる。あらためて検査に確信を持つことの重要性や神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例であった。

高島 克哉

執筆者塩川カイロプラクティック治療室高島 克哉

神奈川県川崎市出身。横浜市の整体院に勤務後、世田谷区で開業。自分の治療法に確信が持てず、様々な治療法を模索し多くの講習会に参加。そんな中、偶然塩川雅士D.Cの記事を読んだことをきっかけにカイロプラクティックの持つ無限の可能性に衝撃と感動を覚える。その後塩川カイロプラクティックスクールに参加し、研修を経て正式に入社。現在は治療にあたりながら塩川スクールのインストラクターを担当する。

pagetop