
”今では元気に歩いて買い物に行けています!”
整形外科で椎間板ヘルニアの疑いを診断され、腰にぎしっとした感覚が走ったのがきっかけで病院に行った。しかし湿布を貼っても、休んでも痛みの回復が見られず、日常生活を送るのが辛くなり、改善策を求めて当院に来院することを決めた。
もともとは少し遠くのスーパーや商店街まで歩いて買い物に行けていたが、今ではその距離を歩くのも辛く、買い物にも行けなくなってしまったことに苦しんでいる。床に落ちたゴミを拾おうとした際に前屈みになった時、腰にぎしっとした感覚を覚え、それ以来日常の些細な動作でも痛みが出てしまうようになってしまった。徐々に痛みが広がり、今では脚や腕にもしびれや痛みを感じるようになってしまった。
左脚の太もも前面や横に痛みが響き、長時間座っていることもできず、風呂に入ると少し楽になる気がするものの、完全に回復することはなかった。右腕にも鈍いしびれ感があり、首のコリも感じているが、それほど自覚はないものの、首にかかる負担が大きいことを実感している。肘から小指にかけて痛みやしびれが広がっており、生活に支障をきたしている状況だった。
さらに、頭痛も時折感じ、特に朝起きた時に強い痛みを感じることがあり、体調全体に不調が続いている。これらの症状が長期間続き、体を動かすことが次第に億劫になり、家事や日常生活に支障が出ていることに悩んでいる。以前のように、家事をこなすために体を動かすことができなくなり、家族にも申し訳なく思っている。これ以上痛みや不調が続くことを避けたくて、根本的な改善を目指し、当院での治療を受けることを決意した。日常生活に戻れるよう、回復を望み来院に至る。
左超短下肢
左仙骨翼におおきなスポンジ状の浮腫
歩くのが遅く腰が軽く丸まった状態
腰部や頸部のレントゲン評価において、超慢性化が見られる患者様ではない。そのため、急性期の腰の対処として、また椎間板の評価としてまずは初期集中として週に1回のケアを提案しスタートする。
2週目(2回目のアジャストメント)では、左臀部の痛みが腿前と横に痛みがうつった気がするとのことであった。仙骨に見られる浮腫の大きさはさほど変化はないが、神経圧迫の度合いは少し減少している印象がある。
4週目(4回目のアジャストメント)では、長時間の歩行では辛い感じがするものの、ほとんど問題なく生活ができるようになったとのことであった。現に左の仙骨にあった浮腫はかなり小さくなっており、神経圧迫もほとんど見られない。むしろ首が気になるとのことであった。
15週目(8回目のアジャストメント)では、腰に関しては全く問題なく生活できるとのこと。首や背中の方が気になるが、ほとんど支障もないとのことであった。ただ頸部の浮腫はまだ継続的にあり、キッチン周りの仕事の影響しているのではないかと本人は自覚していた。
22週目(9回目のアジャストメント)では、腰に少し負担がかかっているが昔ほどではなく、休憩したら治る程度には回復をしているそう。浮腫も少しあるが、アジャストメント後にほとんど気にならなくなるほどである。頸部の浮腫も小さくはなったがまだ継続で経過を追いたい。
現在は1~1.5ヶ月に1回のペースでメンテナンスをしている。
今回の患者さんが経験した「ぎっくり腰」は、左側の骨盤(仙腸関節)にある小さなズレ(サブラクセーション)が原因だったと考えられます。
ぎっくり腰に限らず、慢性的な腰痛に悩む多くの人に共通しているのが、腰や骨盤まわりの筋肉がカチカチに緊張している状態です。これは単なる筋肉疲れではなく、自律神経の乱れや、体の「神経の伝達」がうまくいっていないことが関係していることが多いのです。
私たちの体は、ストレスを感じると「交感神経」というスイッチが入り、体を戦闘モードにします。すると血管がギュッと縮まり、筋肉に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、疲労物質がたまって筋肉がどんどん硬くなっていきます。
こうした状態が続くと、「重だるい」「凝っている」「なんとなく疲れている」といったサインとして体が教えてくれます。
この段階でストレッチや軽い運動、休息をとれば回復しやすいのですが、長い間それを放っておくと、体のバランスが大きく崩れてしまいます。
慢性化してくると、体は今度は「回復モード」に入ろうとして、別の神経(副交感神経)が働きはじめます。そのとき、体は「プロスタグランジン」というホルモンを出して、あえて炎症を起こしながら血流を良くしようとします。
つまり、「痛み」は単なるトラブルではなく、体が回復しようとしているサインでもあるのです。
さらに、筋肉をわざと硬くして「天然のコルセット」のように、弱くなっている部分を守ろうとする防御反応も見られます。
ここで大切なのが、「脳と体をつなぐ神経のルート」です。
このつながりに問題があると、脳が体の状態を正しく把握できなくなり、「もう治っているのに痛みが続く」「うまく回復できない」といった状態が起こってしまいます。
実際、今回の患者さんは「座っていても寝ていても腰が痛い」「歩くのもつらい」といった強い症状がありました。
検査を行った結果、左側の仙腸関節(骨盤の一部)にズレがあり、そこが原因で神経の働きが乱れていたと判断しました。
そこで、仙腸関節に対してカイロプラクティックの調整(アジャストメント)を行ったところ、体はスムーズに回復していきました。今では2ヶ月に1回のメンテナンスで、日常生活を問題なく過ごせるようになっています。
このケースから学べることは、「痛い場所=原因」ではないということです。
痛みは「どこかに問題がありますよ」というサインです。そこだけを追いかけるのではなく、その痛みの本当の原因がどこにあるかを見極め、正しくアプローチすることがとても大切だということを、今回の症例は教えてくれました。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。