
寝起きに1時間かかる
日常生活に支障をきたすような腰部の不調を3か月ほど前から自覚するようになった。特に思い当たる原因やきっかけはなく、突発的に腰痛が出現し、それと同時に右足の裏側にかけて痺れを伴うようになった。症状は日を追うごとに悪化し、特に朝の起床時には強い痛みとこわばりによって、ベッドから起き上がるまでに1時間以上を要するほどだった。
不安を感じてまずは整形外科を受診し、レントゲンおよびMRIによる精密検査を受けた結果、「椎間板ヘルニア」との診断を受けた。幸いにも「手術を行うほどではない」との説明があり医師からは痛み止めの薬を処方され、しばらくは様子を見るようにとの方針が示された。
しかしながら、薬の服用を続ける中でも痛みや痺れの改善は思わしくなく、むしろ長時間座っていることが困難になるなど、日常生活の質が大きく低下していった。特に仕事中のデスクワークや自宅での安静時にも症状が強く現れ、次第に精神的なストレスや不安も募っていった。少しでも楽になりたいという思いから、マッサージやリラクゼーションを受けに行くなど、自己流の対処も試みたが、症状に大きな変化は見られず、根本的な改善には至らなかった。
そのような苦しい状況の中で、他に自分に合う方法はないかと模索していた折、インターネット検索を通じてYouTubeにて当院の存在を知るに至った。動画を通じて、これまで受けてきた治療とは異なる視点からのアプローチに可能性を感じ、「もしかしたらここでなら今の状態を変えられるかもしれない」という希望を抱き、来院された。
仙骨周囲の顕著なスポンジ状の浮腫感
右仙腸関節の可動制限
腰部起立筋の過緊張
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD2/3レベルで、首の前弯カーブは減少し、頸の椎間板の段階は慢性的なD5レベルが確認された。
初期集中期ではしびれと日常生活も支障が出ていおり、週2回のケアから始めた。
2週目(3回目のアジャストメント)には、朝の起き上がる際の腰痛が半減して、起床に30分以上かけていたが20分かからないぐらいで起きれたと。初回よりは右SIに可動が見られてきた。
5週目(8回目のアジャストメント)には、仕事で座位が続いても大丈夫だった。朝起床時に若干腰痛あるが、時間かからずに起き上がれるようになった。右下肢のしびれは存存。右SIはしっかり可動し仙骨の浮腫も軽減し中央に限局してきた。S2Pに移行し週1回のケアとした。
9週目(11回目のアジャストメント)には、右足底部のしびれは残存も右下腿部のしびれは感じなくなり右大腿部から右臀部になってきた。SLR(+.-)
17週目(17回目のアジャストメント)には、寝起きは問題なく右下肢と右足底のしびれも無くなった。月初の忙しいときに連続出勤だと腰に重い感じはある。SLR(-.-)。下部頸椎も体表温度誤差が目立たなくなり浮腫も軽減してきた。次月から2週で経過を見る予定。だいぶ調子が良くなったので、旅行の予定も立てて楽しみだと喜んでいた。
37週目(25回目のアジャストメント)には、日常生活では問題なく旅行や実家に帰ることも不安なくできたと喜んでいた。
現在も定期的なカイロプラクティックケアを希望しており、月1でメンテナンスをしていくこととした。
今回の症例では、初診時に仙骨を中心とした明らかな浮腫が確認され、体表温度検査では骨盤部および下部・上部頸椎に左右差が認められた。また、右仙腸関節と頸椎7番に可動制限があり、右腰部脊柱起立筋は過緊張の状態であった。レントゲン評価では腰椎の椎間板が慢性的なD2/3レベル、頸椎の椎間板はD5レベルであり、首の前弯カーブの減少が確認された。
初期集中期には、しびれや日常生活に支障が見られる状態であったため、週2回のケアから開始した。土台理論に基づき、最初から仙椎2番に直接アプローチするのではなく、まず左右差が見られた右仙腸関節からアジャストメントを行い、骨盤の安定性を回復させることを優先した。
ケアを重ねる中で、朝の起き上がり動作に要していた時間が短縮し、腰部の可動性が徐々に改善していった。右仙腸関節の可動が戻ると同時に仙骨部の浮腫も軽減し、浮腫の範囲が中央に限局していったことから、骨盤全体のバランスが整ってきたと考えられる。腰部の筋緊張も緩和し、右下肢のしびれも末梢から消失していき、最終的には足底部まで回復が確認された。
経過を通じて、可動制限の中心が仙椎2番(S2)に移行したため、最終的にS2へのアジャストメントを実施した。その結果、仙骨神経叢を介する神経伝達が正常化し身体全体の神経バランスが回復した。腰部の疼痛やしびれは消失し、歩行・立位・座位のいずれの姿勢でも安定性が得られるようになった。
この過程は、カイロプラクティックにおける神経機能の最適化の重要性を示す典型的な症例である。構造的な歪みを直接的に矯正するのではなく、土台である骨盤のバランスを整えることによって自然治癒力が働き、神経の流れが回復するというプロセスが明確に観察された。
患者はその後、日常生活を不安なく送れるようになり、旅行などの活動も問題なく楽しめるまでに改善した。現在も月1回の定期的なカイロプラクティックケアを継続しており、身体のメンテナンスと神経伝達の安定維持を目的にケアを続けている。
執筆者塩川カイロプラクティック金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。