

リラックスできる様になってきました
1年ほど前から腰に違和感を覚えるようになった。最初は一時的な疲労の延長だと思っていたが、次第に座っている時間が長くなくても腰が重くなりやがて痛みへと変わるようになっていった。立っていても同様で、どの姿勢をとっても楽だと感じられない状態が続いていた。
もともと活動的で過去にはダンスに取り組んでいた時期もある。その頃にも腰に違和感を覚えることはあったが、いずれも一時的で自然に落ち着いていた。しかし今回の症状は徐々に慢性化し「以前とは違う」という感覚が強くなっていった。
ときにはぎっくり腰になりそうな不安定さや鋭い痛みを感じることもあり、日常生活の中で常に腰の状態を気にしながら動くようになっていた。仕事中も姿勢を変え続けてはみるものの根本的に楽になる感覚は得られず、動作の前に無意識に構えることが増えていった。
同じ頃から首や肩のだるさも目立つようになり、肩甲骨内側の違和感や上を向いたときのつらさが気になるようになった。さらに、以前からあった頭痛の頻度も増加。前頭部やこめかみ、とくに左側に出現することが多く、睡眠不足や強いストレスの後に悪化しやすかった。月の半分以上で頭痛を感じる時期もあり予防薬を服用しながらやり過ごしていた。
生活習慣を見直したり、姿勢を意識したりと対策を試みたが腰の不安定さは残ったままだった。以前は他院でカイロプラクティックによるメンテナンスを受けていたが、移転により通院が難しくなり中断していた経緯もある。
腰痛と頭痛が並行して続く中で「その場しのぎではなく身体の土台から整えたい」という思いが次第に強くなっていった。腰の不安定さと繰り返す頭痛の背景を一度きちんと評価してほしいと考え、当院のホームページを検索し来院された。
左乳様突起周囲の緊張
頚胸移行部の薄く盛り上がった浮腫
仙骨全体のぶよぶよした浮腫
頚椎・腰椎ともにD3レベルの椎間板変性が確認されたため、本来は週2回の来院ペースを提案した。しかし家庭の事情も考慮し、無理なく継続できるよう週1回のペースで施術を開始した。
2週目(2回目のアジャストメント)には、では、初診後2~3日ほど後頭下筋付近の違和感が続き、一時的に頭痛も出現したものの、痛みの強さや頻度はいずれも初診時より軽減傾向にあった。
4週目(4回目のアジャストメント)には、仙骨部の浮腫がやや減少し、腰部の症状も「痛み」から「違和感」へと質的な変化がみられるようになった。
6週目(6回目のアジャストメント)には、仕事によるストレスが大きかった影響か、乳様突起周囲の筋緊張が強く認められた。しかし、前年11月頃には週2回程度起こっていた頭痛は、今月に入ってから週1回程度まで頻度が減少し、痛みの強さも以前のように薬を必要とせず我慢できるレベルまで軽減していた。仙腸関節の安定を確認後、L5へのアプローチへ移行予定とした。
今現在は長年悩まされていた頭痛には大きな改善がみられたが、腰部・骨盤部はまだ完全には安定していないため、腰痛および睡眠状態のさらなる改善を目的として週1回のペースで来院を継続している。
本症例の慢性的な腰痛は、左仙腸関節の機能不全を起点とした骨盤部の不安定性が原因であったと考えられる。骨盤は脊柱の土台であり安定性が失われる事で荷重バランスが崩れ、腰椎に持続的なストレスが加わる。実際に本症例では腰椎前弯の増大、L5/S1およびL1/2にD3レベルの椎間板変性が確認され、仙骨全面および腰椎棘突起間には浮腫が認められた。これらは長期にわたり負担が集中していたことを示唆する所見である。
「どの姿勢でも痛みが出る」という訴えは単なる筋疲労ではなく、骨盤部の支持機構が安定せず常に神経系が防御的に働いていた状態を反映している可能性が高い。神経は不安定な関節情報を受け取り続けると筋緊張を高めて関節を守ろうとする。その結果腰部起立筋は慢性的に緊張し、可動域を制限することでさらなる負荷を避けようとする防御反応が生じる。
さらに骨盤部のアンバランスは脊柱全体へ波及する。本症例では頚椎前弯の減少、頚胸移行部の浮腫、SCMの過緊張が確認されており、下部からの緊張伝達が上部頚椎に影響しその結果として頚部の神経系にも持続的なストレスがかかっていたと考えられる。
副訴であった慢性頭痛についてもこの神経学的背景を踏まえる必要がある。痛みは神経の働きによって脳へ伝達される現象であり、頭痛も例外ではない。本症例の頭痛は前頭部やこめかみに出現し、ストレスや睡眠不足で悪化しやすい傾向があった。この特徴は交感神経が過剰に働くことで首肩周囲の筋緊張が高まり、血流が不均衡となる「過緊張型頭痛」のパターンと一致する。このタイプは副交感神経サブラクセーション(後頭骨~C5、骨盤)へのアプローチを基本とする。
実際に本症例ではC1のサブラクセーション、頚胸移行部の浮腫、骨盤部の不安定性が確認されている。骨盤と上部頚椎はいずれも副交感神経と密接に関連する部位であり、これらの部位に機能障害が存在すると自律神経バランスが崩れやすくなる。
アジャストメントにより仙骨部の浮腫が減少し、腰痛の質が「痛み」から「違和感」へと変化していった過程は神経系の防御レベルが一段階下がったことを示唆する。その後頭痛の頻度が週2回程度から週1回程度へと変化し、薬に頼らずに過ごせる日が増えたことは骨盤部の安定が神経機能全体へ波及した結果と捉えることができる。
本症例は、腰痛という局所症状の背景に骨盤部サブラクセーションが存在し、その影響が脊柱全体、さらには頭痛といった上位症状へと波及していた可能性を示している。主訴は腰痛であったが、評価の焦点を土台に置いたことで神経機能全体に変化がみられた経過は、症状を点で捉えるのではなく神経系の連続性として評価する重要性を示唆する症例である。


執筆者塩川カイロプラクティック大木 信之
千葉県成田市出身。初めてのカイロプラクティックを受診後カイロプラクティックの可能性を直感し、長年従事した仕事を辞め4年制の東京カレッジオブカイロプラクティックに入学。様々なテクニックを学ぶ中で最も本質的なガンステッドカイロプラクティックを追求していくことを決意する。卒業後名古屋市内のガンステッドカイロプラクティック専門院を経て塩川カイロプラクティックに勤務。