2023年9月9日、スポーツジムで運動後、左膝が腫れ、歩行時痛により日常生活に支障があるとして以前に膝の治療で改善したことを思い出し当院へ来院する。
来院前は左変形性膝関節症既往はあるが通常歩行可能であった、副主訴として、右下腿浮腫、約10年前に座って膝に抱いていた孫が右下腿の上に立ち上がり下腿の内出血、病院で挫滅による静脈損傷の診断をされ、その後右下腿部浮腫が継続的に発現し同部位の知覚消失、右下腿部の重怠さを訴える、4年前に下肢が痺れ馬尾神経腫瘍の椎弓切除の手術を受け、その後、腰部の手術痕による引き攣れ感および腰部痛が発現し現在も継続している。整形外科でNSAIDsを処方、リハビリ等を行うも症状の改善が乏しくあきらめようとしたが、膝の治療で鶴沢接骨院のことを思い出し腰部の改善も期待して来院した。
左膝膝蓋跳動
右仙腸関節部浮腫
右起立筋過緊張※手術痕による瘢痕組織
9月から11月までは膝腫脹により歩行に支障があった為に、膝を中心に理学療法をメインとした施術を行った、通常歩行が可能となり疼痛が軽減するとともに、腰部の症状がメインとなり、カイロプラクティック施術を11月25日からリスティング右illPIEX開始する。
11月25日(1回目のアジャストメント)一時的な腰部痛の改善がみられた。
12月2日(4回目のアジャストメント)腰部痛症状は一進一退を繰り返す。
12月3日に自転車と接触し転倒し、左肩、左臀部、左下腿を打撲、炎症と内出血により、外傷治療を優先する為、12月5日から12月26日まで行う。1月5日よりカイロプラクティックを再開、所見を再度確認すると、仙骨部の浮腫感、可動制限、スコープの反応があり、リスティングをS2P-Rにて行う。
2月20日(16回目のアジャストメント)腰部痛の軽減がみられ、食事の支度など30分程度の立位保持が困難であったが、1時間程度であれば可能となった。しかし、腰部の皮膚緊張、起立筋の緊張が高く可動域も改善が乏しい状態であった。
3月19日(24回目のアジャストメント)腰部痛が安定し、日常生活では以前はあきらめて断っていた旅行なども行ける様になった。しかし、主訴の軽減はみられるも関節の運動改善を考慮する為に再度、リスティングの見直しをおこない、手術後の腰部の状態から仙骨S3へのアプローチへ変更する。
4月16日(27回目のアジャストメント)腰部痛の大幅な軽減、関節の可動の改善がみられ腰部起立筋緊張の低下、皮膚緊張の低下が確認できた。
アジャストメントの効果を実感していただいき、その後も週1回のケアメンテナンスを行っている。
腰部の手術後の疼痛であり、手術の痕をさける形でアプローチを行っていたが、結果的には、腰椎の椎間板の変性と手術による構造の変形により、骨格の支持が低下したことに対し、土台となる仙骨へのアプローチが腰部の可動性の改善につながったと考察される。
座った状態では、腰部は皮膚緊張と筋肉の緊張により動きは感じられなかったが、うつ伏せでは腰椎は安定性がなく、軽度の腰椎圧迫でも雑音が発現した。手術痕の引き攣れが強く、改善は困難かとも思っていたが、仙骨のアプローチ後に明らかな筋肉や痛みの低下が見られた際には、患部へのアプローチだけではなく、検査し問題がある場所を見つけることで適切なアプローチができること
また、膝関節の外傷が来院のきっかけであったが、骨盤の可動制限による股関節の機能制限によって膝への負荷となる可能性も考えた。
この状態で、運動、特にスクワットなどの運動を行った際に膝に炎症を起こすのではないと考えられ、腰部の症状改善とともに、膝運動の円滑性、自覚的に力が入りやすいことから、腰部と膝の関連性があることが考察される。
今回は、手術後ということでリスクをしっかりと理解し、アプローチすることができ、症状の軽減とともに患者様との信頼関係が構築することができた。
今後も同様の症状で困っている方へ、リスクを管理し適切なアプローチを行えるよう邁進していきたい。
執筆者鶴沢接骨院香山 大樹
千葉県千葉市出身。柔道整復師、鍼灸師、マッサージ師の資格を取得、整形外科、接骨院の勤務を経て、2008年6月に鶴沢接骨院を開業、外傷やリハビリを中心に勉強をしてきたが、臨床での不定愁訴への対応、根本原因へのアプローチを学ぶ為、シオカワスクールにて学びの機会を得て、カイロプラクティックの可能性に感銘を受け、現在インストラクターとして仲間とともにカイロプラクティックの素晴らしさを伝える為に従事している。