
薬に頼らず左腕の痺れが解消してピアノが弾けるようになった!
幼い頃からピアノを習っていて、学生時代はずっとピアノをやっていた。社会人になってもピアノの先生になり、数年前に独立してから自分でピアノ教室を開いて、多くの子供たちを指導してきた。
教えている姿勢は基本的に立っている時間が長く、そのときは常に下を向いて指導しているので慢性的な肩こりがあった。また、大人になってからも自分自身の練習も欠かさずにやっていたので、座っている時間も長く慢性的な腰痛もあった。
2ヶ月ほど前に、レッスン中にいつものように下を向いて指導をしていると、左首から左肩にかけて痛みが出てきた。これまでにも肩こりが酷くなると似たような感じになっていたが、今回は左腕にしびれも出てきて、明らかにいつもと違う感じがして病院へ行った。
整形外科でレントゲンを撮ったが、椎間板が少し薄くなってはいるものの、それほど異常はないので様子をみましょうと言われた。しびれが続いているのに異常なしと言われたことに納得ができず、脳神経外科で脳の検査もしたがCTやMRIでもまったく異常なしと言われた。
近所の整体や鍼灸院にも通ってみたが、左腕のしびれはどんどん酷くなっていった。特に左手の小指側の痺れが強くなり、次第にピアノも弾きづらくなった。このままだとレッスンで教えることはできても、自分でピアノを弾くことができなくなってしまうと恐怖を覚えた。
3か月間、整体や鍼灸院に通ってみたが、首の痛みと左腕のしびれで夜寝ることもできなくなって、結局整形外科で痛み止めを処方されることになった。あまり薬は飲みたくなかったが、あまりの痛みに夜も眠れなくなってしまったので、仕方なく服用していた。
何か良い方法はないかと探していると、家族が「YouTubeで凄そうな先生がいるよ!」と塩川先生の動画を見つけてくれた。自分のピアノ教室があるので、銀座までは通えないと思ったが、藤沢駅に塩川先生のお弟子さんがいることを調べてくれた。藤沢駅ならレッスンの合間になんとか通えるかもしれないと思い、当院に来院された。
頸部から両肩にかけての過緊張
隆椎周辺の強い浮腫感と熱感(炎症)
左仙腸関節の可動域制限
初診時の状態では、下部頸椎と左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、下部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また隆椎周辺と左上後腸骨棘上端に強い浮腫が確認され、頚部から両肩にかけてと腰部起立筋は過緊張の状態であった。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きが確認された。首の椎間板はD5→D6レベルに移行している慢性的な段階が確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、仕事でピアノ教室を経営していて多忙の関係で週1回のケアよりも間隔が開いてしまうこともあったが、可能な限り詰めてケアを開始することにした。
5週目(3回目のアジャストメント)には、夜眠れないほどの猛烈な首の痛みは解消されて眠れるよういなった。
12週目(8回目のアジャストメント)には、左腕に出ていた痺れが弱くなってきて、左腕全体が重だるく感じるようになった。日のよって二の腕の辺りが引っ張られているようなツッパリ感を感じる日も出てきた。
17週目(12回目のアジャストメント)には、左腕に出ていたしびれはすっかりなくなり、以前のようにピアノが弾けるようになった。
23週目(15回目のアジャストメント)には、この頃には首の痛みもなくなり、慢性的だった肩こりも軽く感じるようになった。また、これまで首の痛みと左腕のしびれであまり気にしてこなかったが、腰痛はほとんど感じなくなっていた。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の左腕のしびれは、下部頸椎の神経圧迫が原因であったと考えられる。
人間の痛みの感覚は、「正常→痛み→痺れ→麻痺」の順番で進行していく。回復過程ではその逆を辿って、「麻痺→痛み→痺れ→正常」の順番で回復していく。また、その回復過程では患部が重だるく感じたり、筋肉痛のように感じる場合もある。今回のケースでは顕著にその過程を辿った。
神経はものすごく繊細にできており、神経に十円玉ほどの重さがかかるだけで、神経の流れは60%も阻害されるという研究もあるが、神経の流れが60%阻害されても痛みを感じない人もいる。
つまり痛みなどの症状が出ているよりも、はるか前から神経の損傷は始まっている。今回は左腕に痺れが出ていて左手の小指にまで痺れが広がっていたことを考えると、頚部の神経にはかなりの期間にわたって負担が掛かっていたと考えられる。
レントゲン評価でも、下部頸椎の椎間板の段階は6段階中5段階後期とかなり慢性的であった。長年あった慢性的な肩こりも、その影響であったと考えられる。肩こりの原因は大きく分けて2つの原因が考えられる。
一つは筋骨格系の乱れから頸部の神経に負担がかかり、頭の重さを骨格で支えることができなくなり、首肩の筋肉を緊張させるケース。もう一つは、自律神経のバランスの乱れから交感神経が過剰になり、全身が過緊張を起こしてしまうケース。今回の慢性的な肩こりは、前者であったと考えられ、下部頸椎の神経圧迫解消とともに解消されていったのだろう。
慢性的な腰痛もあったが、骨盤部の乱れから腰部の神経にも負荷が掛かっていたものと考えられる。骨盤部には左右に一つずつ、仙腸関節というものが存在している。人間には補正作用があるため、どちらかの仙腸関節に可動域制限がかかると、反対側の仙腸関節は過剰に動いてしまう。
今回のケースでは左の仙腸関節に明らかに可動域制限が確認されたため、腰部の神経に大きな負荷がかかっていたのだろう。
アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、頚部や腰部の神経が回復したことで症状の改善に繋がったと考えられる。症状は急に出てきても、問題となっている神経への負荷は長い年数が経過していることが多いが、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。