
”首も肩も来るたびに良くなって嬉しい”
2~3年前から首の痛みがあり、特に左に回らない感じが続いている。最初は軽い感じだったけど、だんだん痛みが強くなり、日常生活にも影響が出るようになった。肩の動きも制限され、左肩の痛みがひどくなって、まるで五十肩のような症状。特に肩を外に上げることができず、腕を動かすときに痛みが走る。これが3か月前から急に悪化し、ひどい時には腕から指先まで痛みが広がることもある。指を曲げ伸ばしするとき、感覚が変わったように感じて、気になることが増えてきた。
加えて、右のお尻にも違和感があり、連れたような感覚が続いている。最初は軽い違和感だったけど、今では長時間座っているとしびれや痛みが強く感じられるし、歩いたり立ち上がったりするときにも影響が出てきている。また、胃腸の調子もあまり良くなく、特に食後の不快感や消化不良が続いていて、これも悩みの一つだ。
更年期障害の影響も感じていて、日中は突然眠気に襲われることが多く、夜は眠りが浅くて寝つきも悪い。寝ている間にもよく目が覚めて、寝不足が続いていると感じている。ホットフラッシュにも悩まされ、特に昼間の急な熱感や発汗が気になる。これらの体調不良が重なり、日常生活に支障をきたすことが増えてきた。
そんな中、職場の同僚が当院に来院したことがあり、その体調改善に驚いていたので、自分も試してみようと思い、紹介を受けて来院を決意した。
左肩の外転が50度程度でほとんど上がらない
左後頭部から左肩にかけて筋肉が過緊張している
頚椎側面像において、C5の椎間板がD3~4で慢性化が進んでいることが確認できるため、サブラクセーションは少なくとも5年程度はサブラクセーションが放置されていたことになる。よって初期集中期は週に2回程度を提案する。仕事の都合上、土曜日のみ来院可能とのことで週1回のケアでスタートする。
2週目(2回目のアジャストメント)では、これまで気になっていたホットフラッシュが改善された感じがあるとのこと。左肩に関しては、前回よりも痛みがあるような感じもして様子を見ていきたい。ただ後頭骨のアジャストメント後は、後頭部から肩に走る筋緊張がかなり軽減されることもあり経過を追うこととする
11週目(11回目のアジャストメント)では、首の張り感はかなり軽減され、肩にあった痛みはほとんど消失した。可動域に関しては外転50度前後から100度前後まで上がるようになる。後頭骨にある神経圧迫はかなり軽減されている。
28週目(23回目のアジャストメント)では、首は落ち着いていて、肩の可動域も外転は広がっている。120度程度。夜間に肩の痛みで起きてしまうこともなくなる。
現在は肩よりも、膝の負担や、デスクワークによる腰の硬さが気になる感じもあり、肩と併せてメンテナンスを行なっている。
今回のケースは、いわゆる「五十肩」と呼ばれる症状の中でも、首から肩、さらには腕や手の指先まで痛みや動かしづらさが広がる、かなり広範囲に及ぶタイプでした。単に肩が痛いというより、体のさまざまな部分に影響が出ていたのが特徴です。
初診の段階では、特に首を左に回す動きに制限があり、左肩も横に上げる(外転)ことが困難な状態でした。さらに、腕から指先にかけてしびれのような神経症状も見られました。肩だけの問題ではなく、神経の流れが関係している可能性が高いと判断しました。
実際、レントゲン画像からは、首の骨の一部(C5)に慢性的な変性があり、長年にわたり首の歪み(サブラクセーション)が放置されていた形跡が見られました。
こういったケースでは、肩だけをマッサージしたり、運動療法をしても十分な改善は期待できません。カイロプラクティックでは、「肩そのもの」よりも、それをコントロールしている「神経の働き」に注目します。
肩を動かしたり感じたりするための神経は、首から背中の上部(C5〜T3)から出ており、それらのエリアに問題があれば、肩の動きや感覚にも影響が出ます。この方の場合も、痛みが肩の前側・上側・後ろ側と広い範囲に及んでおり、それぞれの神経の通り道を細かく評価する必要がありました。
とくに印象的だったのは、「後頭骨(頭の後ろの骨)」を調整した際に、大きな変化が見られたことです。肩の痛みというと、肩やその周辺ばかりに目が向きがちですが、首の一番上や頭の土台の部分を整えることで、身体全体のバランスや神経の流れが良くなり、結果的に肩の動きもスムーズになっていきました。
実際、最初は肩を横に50度しか上げられなかったのが、継続的なケアによって120度まで回復。これは、神経の流れが整ったことで、身体の自然な回復力が働き始めた証拠とも言えます。
また、この方は肩だけでなく、右のお尻の違和感、胃腸の不調、さらには更年期に伴う睡眠の乱れやホットフラッシュといった症状にも悩んでおられました。こうしたバラバラに見える症状も、実は「自律神経の乱れ」が関係していることがあります。
後頭骨や骨盤は、自律神経の中でもリラックスや回復をつかさどる「副交感神経」に関わる部位でもあるため、ここを整えることで、ホットフラッシュのような更年期症状にも良い変化が見られました。
このように、「五十肩」と言っても、ただ肩だけを診ていては根本的な解決にはつながりません。体全体の神経の流れや背骨の状態、自律神経のバランスを整えることで、はじめて本質的な回復が促されます。
痛みが出ている「場所」だけに注目するのではなく、その痛みを生み出している「背景」に目を向けること。
それがカイロプラクティックの本質であり、このケースを通して改めてその重要性を実感しました。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。