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学校へ登校できないほどの腹痛

学校へ登校できないほどの腹痛

10代女性
主訴
腹痛、下痢、便秘、頭痛、めまい、生理痛、冷え症、無気力、だるさ、耳鳴り、膝痛
来院に至った経緯

2024年12月初旬から学校に通えないほどの腹痛があり、病院で診てもらったところ自律神経が乱れていると診断された。腹痛の質は、ぎゅーっと締めつけられるような痛みが下腹部の方にきて、腸がぎゅるぎゅる動いている感覚がある。腹痛のタイミングは起床時と、食事後にくることが多い。起床時は痛みで起きることができず、そのままベッドで休んでしまう。便秘もしていて、3日に1回の頻度であり、お通じを出す時に痛みを伴っている。お通じは下痢気味でもある。

 

朝は気力が湧かず、だるさもあり、そのせいで学校を休むことがある。頭痛、めまい、耳鳴り、耳の閉塞感も伴っている。頭痛は主に学校にいる間や日中に多いと感じている。めまいは立つと症状が出て、10秒くらいのぐるぐると回るようなめまいが起きる。耳鳴りは静かな時にボーッという低い音が鳴っていると感じる。

睡眠は浅く感じており、寝入るまでに30分かかり、スマホを見ているわけでもないのにすぐ寝られないことが気になっている。

生理は遅れ気味で、痛みは酷くはないがある。PMSはない。

 

自律神経症状とは別に、右膝に痛みがあり、中学生になる直前くらいから歩きづらさをよく感じるようになった。小学5年生あたりからたまに右膝の違和感を訴え始め、特に歩くと膝の内側に痛みが出るようになった。しゃがむ時にも痛みはある。

自律神経の症状が悪化したら、休みがちな学校がさらに行けなくなってしまい勉強がついていけなくなってしまう。症状がよくなったら部活動に出たり、勉強は好きなので頑張りたい。

初診の状態
  • 01

    仙骨中央にスポンジ状の浮腫

  • 02

    左乳様突起下にスポンジ状の浮腫

  • 03

    左胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容

初診時の状態では、仙骨中央にテニスボールほどの大きさのスポンジ状の浮腫が確認された。自律神経の乱れによる症状が多く見られることから週2回のカイロプラクティック・ケアを開始した。

2週目(5回目のアジャストメント)には、レントゲン評価からP−Lにリスティングを変更した。膝の調子は少しよくなっていて、痛みを感じることは少なくなった。

4週目(6回目のアジャストメント)には、仙骨中央の浮腫がピンポン球ほどに小さくなった。仙骨の可動性は左側に動きの悪さを感じる。年末年始は症状が落ち着いており、頭痛、便秘、排便時痛がなく、めまいも頻度が少なくなった。右膝の痛みはなくなったが、今度は右足首の疼痛が出てきた。眠りの浅さ、足先の冷え、耳鳴りは依然としてあり。

5週目(7回目のアジャストメント)には、新学期が始まり、お腹の調子を崩すことが増え、学校も休むことがまた出始めた。仙骨の浮腫はさらに小さくなっており、可動性も出ていた。左胸鎖乳突筋の緊張はある。膝は痛みを感じることがなくなる。お腹の痛みは給食を食べた後にくると発見した。

7週目(8回目のアジャストメント)には、仙骨中央部の浮腫は落ち着いている。立ち上がり時の10秒程度の立ちくらみがまた出るようになってきたり、静かなところに1人でいるときに低い音で耳鳴りがまた多くなったように感じる。頭痛もたまに出るようになり、朝はなく、昼過ぎから症状が出る。睡眠は以前より取れている。左胸鎖乳突筋の緊張は依然としてあり。

8週目(9回目のアジャストメント)には、腹痛が強く出る。学校は午前中だけで給食を食べるとお腹が痛くなるので食べずに早退する。めまいは立ち上がり時に10秒程度起きることがある。頭痛もたまにあり、昼に発症して、朝はない。睡眠はよく取れている。左胸鎖乳突筋の緊張は依然としてあり。

12週目(11回目のアジャストメント)には、生理痛が強く出てきて、産婦人科で痛みが強い時に飲む薬をもらって飲み始めた。お腹の痛みに関しては漢方も飲んでいる。めまいの薬も耳鼻科でもらっている。飲むとめまいは落ち着いたが、時間が経つと再びめまいが出てきた。

午前中にお腹が痛くなることが多かった。頭痛は減ってあまり気にならなくなってきた。便秘と下痢を繰り返している。

14週目(12回目のアジャストメント)には、前回から1週間は良かったが、2週間目からやる気が全然出なくなって、朝も起きられなくなり、何をやってもぼーっとしてしまうため、好きな読書もできずにいる。便秘も再び悪化し、出る頻度が少なくなった。

15週目(13回目のアジャストメント)では、リスティングをS2Pに変更した。レスト後の仙骨部の浮腫、可動性に変化がとてもある。まだ無気力は続いており、何かに取り組むことは難しいと感じている。腹痛に対する漢方は本人の判断で飲まなくなっている。

16週目(14回目のアジャストメント)では、ぼーっとすることが減り、勉強することができた。読書も再開できている。

21週目(17回目のアジャストメント)では、仙骨中央部の浮腫は再び小さくなり、可動性の維持も確認された。継続的に通学もできており、午前中のみの登校ではなく、部活動まで残って参加できるようになった。お腹が痛くなり、学校を休むことは時々ある。下痢も出る。

23週目(18回目のアジャストメント)では、睡眠と便秘は解消して、お通じは調子がいいことが確認できた。腹痛に関してはアジャストメント3日前まで良かったが、G.W.が終わった日から腹痛があり、3日連続で学校を休んだ。アジャストメント当日は腹痛はなかった。仙骨中央部の浮腫は小さく落ち着いており、左胸鎖乳突筋の緊張も少なく感じられた。

現在は、2週に1回のペースでカイロプラクティックケアを継続している。


考察

本症例は、13歳女性における自律神経の乱れによる症状(浅い眠り、排便時痛、無気力、頭痛、登校困難を伴う腹痛、便秘、生理痛)を主訴とし、特に副交感神経系に関わる上部頚椎および仙骨のサブラクセーションへのアプローチを通じて経過をたどったケースである。

 

初診時には、仙骨中央にスポンジ状の浮腫がみられ、典型的な副交感神経機能低下の兆候と考えられる。副交感神経支配領域は後頭骨から頚椎5番(C5)および骨盤である。そのため、骨盤と上部頚椎へのアプローチが選択された。

 

レントゲン評価から、一時的に仙骨後方軸転変位(P-L)のリスティングを適用したが、症状および皮膚の質感の改善傾向が少ないため、仙骨の第2仙結節後方変位(S2P)のリスティングへと変更した。アプローチを変更した時点から、浮腫の顕著な改善や、自律神経系に起因する症状(浅い眠り、頭痛、排便時痛、登校困難など)に明らかな変化が見られるようになった。

 

これは仙骨のサブラクセーションにより、副交感神経の機能が低下し、結果として交感神経の機能が亢進し、自律神経のバランスが乱れたことが考えられる。副交感神経の機能低下によって生じやすい症状は、昼から夕方にかけての頭痛、浅い眠りである。そして、鋭い腹部痛、下痢と便秘を繰り返す、朝からの頭痛は交感神経支配領域のサブラクセーションによる兆候だと考えられている。その上で、鋭い腹部痛の頻度や下痢と便秘が改善傾向がみられたことも、特筆すべき点である。

 

また、浮腫の変化と症状の変動に明確な相関が見られた点、特にS2Pリスティングへの修正後、可動性の改善と共に精神的・身体的な活力の回復がみられた。実際に、14週目以降は「勉強ができた」「通学・部活への参加ができる」といった社会生活への復帰が報告されており、副交感神経機能が回復して、自律神経のバランスが整ったことで、QOL(生活の質)の向上につながったと考えられる。

 

この症例を通じて、仙骨という構造の中でも、アプローチが異なると全く違う結果が出ることが確認できた。カイロプラクティックでは、5つのクライテリアによる総合的な検査が重要である。5つのクライテリアとは、視診、体表温度検査、静的触診、動的触診、レントゲン評価である。この5つのクライテリアを偏ることなく総合して評価しリスティングを選定することが、症状の変化に大きな影響を与えると確認できたことは、サブラクセーション特定における精密な検査と観察の重要性を強く示唆している。

 

以上より、本症例は、副交感神経支配領域におけるサブラクセーションに対して正確なリスティングの選定を行うことで、自律神経の乱れに起因する多様な症状が改善しうることを示す貴重な一例であり、改めて人間の治るチカラの素晴らしさを実感した症例である。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

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