

低気圧頭痛がしなくなりました!
数年前から断続的に頭痛が出現し、ここ数ヶ月で頻度と強さが増加した。特に起床時と天候が荒れている日に頭痛が出ることが多く、午前中の業務に支障が出ていた。仕事はデスクワークが中心で、集中力を必要とする場面が多いが、頭痛が強い日は朝から業務の終わりまで思考がまとまらず、業務効率が著しく低下してしまう。
痛みが出ると周囲に迷惑をかけてしまう感覚があり、「今日も仕事にならないかもしれない」と不安を抱えながら出社する日が続いた。そのため、仕事がスムーズに行えない憤りに加え、「このまま改善しないのでは」という将来的な不安も増大していた。
プライベートではクライミングを週数回行うことが習慣だったが、頭痛が続くことで運動の頻度が低下してしまった。大好きな登山にも赴くことができず、身体を動かすことでリフレッシュできていた活動ができなくなったことで、ストレスをうまく解消できない状態となっていた。
何とかしなければと内科を受診し鎮痛薬を処方されたが、痛みが強い時には頓服で対処するものの、薬が切れると再発することが多く、「薬では根本改善にならない」という課題意識を持っていた。
さらに、最近は右の親指がクライミング時に痛み、それが全くよくならない状態が続いていた。
こうした問題が重なり、どうにか良い方法はないかと模索していたところ、職場の上司に相談した際、先日から通っている当院を紹介された。信頼できる人からの推薦であったこともあり興味を抱き、これらの問題が根本的改善へ向かうという期待をもって来院に至った。
後頭部の締め付けられる頭痛
頸椎5番周囲のぶよぶよとした浮腫
肩部(僧帽筋)周辺の筋緊張
右の脊柱起立筋の筋緊張
初診の際には、毎日頭痛があるとのことであった。頸部も緊張しており、頸椎5番周辺には、ぶよぶよとした浮腫感が目立っている。腰部に関しても、右の脊柱起立筋が過緊張していた。レントゲンを確認すると、頸椎側面像において、C5の椎間板はD4とサブラクセーションが起きてから10年前後は経過しており、慢性化をたどっていることが確認できる。また、C5を起点に頸椎の前弯カーブは減少傾向にあった。
椎間板の段階を加味し、週に2回。最低でも週に1回のケアを開始することを提案し、実際にアジャストメントを実施していった。
2週目(2回目のアジャストメント)では、頭痛の頻度が毎日から2、3日に1回程度まで軽減したとのことであった。また、初診時には後頭部の締め付けられるようなものが顕著であったが、右の側頭部に感じるような変化が見られた。
2週目(3回目のアジャストメント)では、右側頭部の頭痛が前頭部に移動した感覚があるとのことであった。それ以外の変動はあまりない。
6週目(6回目のアジャストメント)では、久しぶりに登山に出掛けたとのことで喜ばれていた。ただ、久しぶりなこともあり腰が不安定ではあった。しかし、頭痛をあまり感じることなく楽しめたことが自信につながっていた様子である。前回からの間に、一度大きな頭痛があったそうだ。
7週目(7回目のアジャストメント)では、頭痛はほとんど気になることもなく、快適に仕事をすることができたとのこと。また、右の親指の痛みも気にならなくなったとのことで、非常に喜ばれていた。
22週目(19回目のアジャストメント)では、頭痛はほとんど気になっておらず、地方に登山にでかけることも増えている。大好きなカメラも肩に下げ、趣味に没頭できている。初診時にみられた頚部の緊張もほとんど確認できない。
現在は、2週に1回のペースでメンテナンスを行っている。大好きな登山の話や、野球、カメラの話に花を咲かせ、健康的な人生を楽しまれている。
今回のケースでは、「天気が悪くなると頭痛が出る」「朝起きると辛い」といった症状がみられました。一般的には、こうした頭痛は自律神経がうまく働かず、気圧の変化に対応できないことが原因と考えられています。そのため、一般的なケア方針としては、まず背骨の中部から腰にかけての領域(交感神経が関与する部位)にアプローチすることが多くあります。
しかし本症例では、検査の結果、骨盤(仙骨)と頸椎5番(C5)に明確なサブラクセーション(根本的な問題の原因)が確認されました。そのため、一般的なセオリーとは異なりますが、まず体の土台である骨盤と、頭と体をつなぐ重要な神経の通り道である頸椎に対して優先的に調整を行いました。
これにより、頭痛の頻度や痛みの強さの軽減だけでなく、首や肩の緊張の改善、さらに長年悩まされていた親指の痛みまで解消されました。また、クライミングや登山といった趣味も再開できるまでに回復され、日常生活の質が大きく向上しました。
骨盤を調整した理由は、建物で言えば土台に当たる部分であり、ここが不安定になると背骨全体のバランスが崩れ、結果として神経系にも負担がかかってしまうためです。また、頸椎5番の調整が機能改善に寄与した背景として、慢性的な変位により頸部の筋緊張や血流障害が生じていたことが考えられます。これらの部位が改善したことで、神経伝達や血流が正常に働きやすくなり、自律神経のバランスも整っていったものと思われます。
さらに、経過中に頭痛の位置が後頭部から側頭部、そして前頭部へと変化したことが確認されましたが、これは神経系が回復していく過程でみられる典型的な移行反応と捉えられます。
本症例では、一般的な理論上は交感神経領域からアプローチする場面であっても、実際の体の状態や触診評価に基づいたアプローチを優先したことで良好な結果が得られました。セオリーを理解していることは大前提ですが、同時に、患者ごとの身体のサインを正確に読み取り、そのうえで適切な判断を行うことの重要性を再確認できた症例でした。


執筆者塩川カイロプラクティック関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。