シオカワグループ シオカワグループ

夜勤を含む工場勤務による首から肩の強い張りと痛みおよび頭痛

夜勤を含む工場勤務による首から肩の強い張りと痛みおよび頭痛

50代女性
主訴
肩こり、首から肩の強い張りと痛み、頭痛
来院に至った経緯

約20年前、夫の仕事の都合によりブラジルから日本へ移住した。主な症状は、首から肩にかけての強い張りと頭痛であり、首から肩の痛みは特に付け根のあたりに集中している。

 

きっかけは、特に思い当たらないが、15歳くらいから頭痛があった。頭痛は、頭の重さも訴えており、痛みは仕事の後半にかけて出現することが多く、朝から昼にかけてはあまり感じない。

 

肩はパンパンに張っていて、筋肉が硬くなっている。吐き気はないが、2年前から耳鳴りが左耳にあるのと、2週間前からめまいが出るようになった。

 

睡眠の質は悪く、2時間寝ては起きるの繰り返しで、朝起きた際に疲れが取れていない感覚がある。首から肩にかけての痛みも起きた時に取れていない。

 

勤務形態には夜勤も含まれており、疲労が溜まりやすい生活を送っている。10年ほど前に現在の居住地に落ち着き、工場で勤務しており、勤務先では外国人労働者のリーダーとして同僚に指示を出す役職に就いているが、同僚たちが指示に従わないことに対するストレスを日常的に感じている。

 

夫婦で旅行が趣味であり、これまでに福岡、長野、京都、茨城など各地を訪れた経験がある。また、海外旅行もたまに行っている。症状が悪化したら、寝込んでしまい何もやる気が起きなくなる懸念がある。首から肩の重さが改善されたら、仕事の疲れを感じないようになりたいのと、旅行をより楽しめるようになりたいという希望がある。当院についてはウェブ検索によって良い口コミの数が多かったので来院に至った。

初診の状態
  • 01

    左PSIS上の窪んだ浮腫

  • 02

    左仙腸関節の可動制限

  • 03

    頚椎1番の右側屈制限

経過と内容

初回では、仙腸関節の可動性の明らかな低下、仙腸関節上部の窪んだ浮腫、腰部筋緊張が強く、肩の張りは下部頚椎の補正である可能性があることを伝え、週2回のケアを提案したが、シフト制の仕事の関係で週1回のケアからスタートした。アジャストメント後は、なんだかスッキリした感じがあると話されていた。

2週目(2回目のアジャストメント)では、レントゲン評価から、腰部椎間板の段階がD6レベルであることから週3回が適切なケア計画であることを伝えたが、シフトの仕事の関係で、週1回で継続することになった。

4週目(5回目のアジャストメント)では、睡眠の質が改善され、朝快適に起きられるようになった。頭痛も少しになり、痛みの度合いが弱まったことが確認された。

6週目(7回目のアジャストメント)では、中途覚醒しなくなって、よく眠れるようになった。

8週目(8回目のアジャストメント)では、体がとても楽になったと喜ばれ、頭痛もまったく出ていないことが確認できた。仙腸関節の可動性も左右均等に出ており、頚部の緊張も抜けており、右側屈時の頚椎1番の可動性は改善していた。

12週目(10回目のアジャストメント)では、可動性の維持、浮腫の減少からペースを4週に伸ばした。

17週目(11回目のアジャストメント)では、1週間前に風邪を引いて2日ほど寝込んだとのこと。腰部下部の筋緊張が強まっていたが、アジャストメント後に緩んでいたため、4週ペースを維持した。

22週目(12回目のアジャストメント)では、年末年始に海外旅行に行ってきたとのこと。体調もよく、首肩の痛みもなく楽しく旅行ができて喜んでおられた。

30週目(14回目のアジャストメント)では、1週間前まで調子が良かったが、職場で体調不良者が多く、休みの人の分まで働かなければならず、1週間前から首に疲れがくるようになった。

39週目(16回目のアジャストメント)では、腰の緊張はあるものの、仙腸関節の動きはよく、メンテナンスペースを維持していくことでケアを続けていくことにした。


考察

本症例は、首から肩にかけての張りと痛みおよび頭痛に対して、副交感神経領域へのアプローチを試みたケースである。

 

検査では、頚椎1番と骨盤にはっきりとしたブレイクが出ており、窪んだ浮腫と可動域制限も顕著にみられた。さらに起立筋の緊張や僧帽筋の張りも確認できた。症状は、仕事の後半にかけて出てくる頭痛、痛みを伴う肩の張り、睡眠の質の低下、起床時の疲労感、耳鳴りやめまいとの訴えからも副交感神経領域に絞ってのアプローチが良いと判断し、始めることにした。

 

私たちが感じる「痛み」という感覚は、神経の働きによって脳に伝えられるものである。頭痛や肩の痛みも神経が痛みの情報を脳に伝えることで「痛い」と感じる。

仕事中の頭痛は、「過緊張型頭痛」と呼ばれ、体が緊張して起こるものとされている。体を緊張状態にさせる神経は交感神経である。

 

交感神経が過剰に働くと、血管が締まり、血液の流れが悪くなる。血液の流れが悪くなると、脳や頭の筋肉に必要な酸素や栄養が届きにくくなるため、老廃物や毒素が体に溜まりやすくなり、その結果、頭痛が引き起こされると考えられている。仕事の後半に、「頭が重い」と感じるのもまた1つの特徴であり、本症例とも合致する。

 

首から肩にかけての痛みについても、交感神経が過剰に働いている特徴である。交感神経過剰による過緊張状態の筋肉を緩めるため、締まった血管を拡張して血流をよくしようと分泌されるのが、プロスタグランジンというホルモンである。このホルモンは、血流を良くする働きがあり、体の回復のために働く物質であるが、発痛作用もある。

 

つまり、交感神経が過剰に働いている状態で、筋緊張が強く血流が悪い肩の張りを、脳はしっかり治そうとしており、正常な反応を示していたと考える。そして、自律神経のバランスが整ったことで、過度な緊張が取れ、自然治癒力による回復が負担を上回り、痛みが徐々に落ち着いていったと考える。睡眠の質の向上に関しても、過緊張状態だった体が副交感神経の働きによってリラックスできた結果であろう。

 

また、めまいや耳鳴りに関しては、第8脳神経である内耳神経が関係している。聴覚は脳から出る12の末梢神経のうち、第8脳神経である「内耳神経」の中の「蝸牛神経」が司り、脳に音を伝える。

 

音が聞こえる仕組みは、外部からの音は空気の振動として耳に届く。空気の振動は耳介で集められ、外耳道を通り、鼓膜に伝えられる。鼓膜は振動し、鼓膜に繋がった耳小骨で音が増幅される。その音の情報を奥にある蝸牛が電気信号に変えて、蝸牛神経を介して電気信号を受け取った脳が、音として認識する。

 

めまいは、耳の内耳にある三半規管が関係している。体の平衡感覚を司っているのは三半規管であるが、その中のリンパ液の量が適切であると平衡感覚が正常に働く。しかし、交感神経が過剰になることで、リンパ液が必要以上に産生されると、体が動いていないのに「体が動いている」と勘違いしてしまい、めまいが発症すると考える。

 

耳のリンパ液は、音の振動をスムーズに伝えるために重要な役割を持っているため、リンパ液の異常、ひいては交感神経過剰がめまいと耳鳴りの両方の問題と関係していたと考えられる。

 

今回のケースでは、初回から副交感神経領域に絞り、骨盤部と頚椎1番のサブラクセーションをアジャストメントすることで、副交感神経の機能低下が早期に改善されたのだろう。

 

人間は脳が過度なストレスを受けると、そのストレスに抵抗するために交感神経を優位に働かせる。特に、今回においては、日勤と夜勤のシフト勤務、職場の人間関係といった身体的ストレスや精神的ストレスがあった。

 

体はその外部環境のストレスに常に対応し続けているが、それらのストレスに対応し続けるのは大変な作業であるため、体の内からのシグナルを見逃すことなく、対応の限界を超えた根本原因を特定することが重要である。

 

根本原因であるサブラクセーションを取り除くことができれば、脳と神経の働きによって、自然治癒力がしっかりと発揮されることが明らかになった素晴らしい症例であった。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

pagetop