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坐骨神経痛

坐骨神経痛

60代女性
主訴
坐骨神経痛、腰痛、左臀部の鋭い痛み、左脚の痺れ、左股関節の痛み、左肩の痛み、肩こり、不眠症
来院に至った経緯

長年、洋服やバッグ、アクセサリーなどのデザイナーの仕事をしてきた。そのため、どうしても下を向く時間が長く首・肩のコリは常に感じていた。また、どうしても座ったり、前かがみだったりの長時間同じ姿勢が続くので慢性的な腰痛があった。以前は整形外科で変形性股関節症と診断されたこともあった。

3年位前から寝つきが悪いなと感じるようになった。それ以前は布団に入ると30秒くらいで眠れるというほど寝つきが良かったが、寝床で1時間くらいゴロゴロする日が増えてきた。寝入りはどんどん悪化してしまい、ここ1年くらいは布団に入ってから3~4時間眠れないこともあった。

病院では不眠症だと診断され、睡眠導入剤を処方された。それでも寝入りが変わることはなく、結局強い睡眠薬を処方されることになった。睡眠薬を飲むと確かに眠れるが、日中もずっとボーっとしてしまい、仕事に身が入らなくなってしまった。

このまま薬に頼るのは嫌だと思って、薬を飲むのをやめるとその日から当然のように眠れなくなった。ただし日中にボーっとしてしまうことはなくなったので、毎日2~3時間の睡眠で仕事をしていた。

半年くらい前のある日、仕事に行く途中に駅の階段を下っていると左臀部にビリっと電気が走るような鋭い痛みが出た。その場でうずくまりたくなるほどの痛みでお尻の筋肉がギューッと収縮するような耐え難い痛みだった。

なんとか会社までたどり着き、午前中を座りっぱなしで仕事をして、お昼に行こうと立ち上がると今度は左脚全体に痺れが出た。その日の午後は早退して総合病院の整形外科を受診してレントゲンを撮ってもらったが、医師からは特に異常はなく骨や椎間板も年齢なりだと言われて、痛み止めを処方された。また薬かと嫌になり薬は飲まなかったが、脚の痺れはどんどん酷くなった。

同時期から左肩が上がりにくいと感じるようになり、通勤電車でもつり革を掴むような動作では痛みが出た。これまで肩こりや腰痛は感じていても、重たいなくらいしか感じていなかったのが、急に歩けないほどの坐骨神経痛や脚の痺れ、左腕が上がらないなど急激に症状が出たことに恐怖を覚えた。

年齢的にも身体のメンテナンスをしなさいということかと思い、何か良い方はないかなと近所の整体院や針治療院に通ってみたが、まったく症状は改善されなかった。そんなとき学生時代からの友人と久しぶりに電話で話す機会があり、症状のことを相談するとカイロプラクティックを勧められた。

これまでカイロプラクティックは受けたことがなく、ただボキボキ鳴らされるという認識しかなかったが、信頼している友人が熱心に勧めてきたため、ご紹介という形で当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    腰部起立筋の過緊張

  • 02

    背部全体の過緊張

  • 03

    左仙腸関節の可動域制限

  • 04

    左肩の極端な可動域制限

経過と内容

腰部の椎間板がD5レベル、頸部の椎間板はD5~D6レベルと慢性的な段階が確認されたため、週3回のケアを提示したが、仕事上の関係から週2回のケアから開始した。

2週目(3回目のアジャストメント)には、歩けないほどの坐骨神経痛は出なくなった。左足の痺れもつま先くらいまで感じていたものが、ふくらはぎくらいまで上がってきた。

4週目(7回目のアジャストメント)には、左臀部の鋭い痛みが緩和してきた。脚の痺れも少しずつ上の方に感じることが多くなり、太もも裏にツッパリ感のような痺れが出てきた。また睡眠の質が明らかに良くなり、布団に入れば薬を飲まなくてもわりとすぐに眠れるようになった。この段階でケアのペースを週2回から週1回に広げることができた。

7週目(10回目のアジャストメント)には、首肩のコリや腰痛自体もあまり感じなくなった。また左の坐骨神経痛や左脚の痺れはまったく感じなくなった。

14週目(17回目のアジャストメント)には、仕事で無理をしてくると首肩や腰が張ってくるのが自分で分かるようになり、休憩を入れながら仕事ができるようになった。また、左肩の可動域もかなり改善されて、高いところにある物が取れるようになり、電車のつり革も掴めるようになった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の坐骨神経痛の問題は、骨盤部の乱れから腰部の配列が乱れ、腰や坐骨などの神経に負担が掛かっていたものと考えられる。坐骨神経は梨状筋というお尻の筋肉の下にある神経だが、親指ほどの太さがある神経となるため、負担が掛かると歩けないほどの痛みが出てしまうケースが多い。

左脚に強い痺れも出ていたが、人間の感覚は【正常→痛み→痺れ→麻痺】の順番で進行していく。そのため、神経の回復過程では必ず【麻痺→痺れ→痛み→正常】の順番で回復していくが、今回のケースでは、顕著に足のつま先の方から痺れが取れてきて、ふくらはぎから太もも裏に上がってきて、改善に向かっていった。

今回は骨盤部と上部頸椎に反応が強く出ていたが、骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経とは、人間が休まるときに働く神経となるため、不眠症の原因にもなってしまう。

不眠症の症状は改善された後、骨盤部が安定して坐骨神経痛の症状が改善された後も、腰部全体が重たいような慢性的な腰痛が続いていたため下部腰椎に移行した。また下部頸椎にも問題が確認されたが、左肩に繋がる神経支配のところでもある。ただし下部腰椎から下部頸椎は交感神経支配の部位となる。

自律神経症状がある場合、必ずどちらかも神経系に絞ってアプローチをする必要がある。今回は不眠症と明らかに交感神経過剰な状態となっていたため、副交感神経からアプローチを開始して、安定した段階で交感神経に移行したことで結果に繋がったと考えられる。

不眠症や腰痛、坐骨神経痛や脚の痺れなど、必ずしも同じ神経系の問題とは限らない。一度に何か所もアジャストメントを行うと、人間の治るチカラも分散してしまう。どのような症状でも問題の神経系を絞ってアプローチし、体の情報を脳へ正しく届けることの重要性が分かる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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