立ち上がる時の痛みが解消し、仕事が続けられるようになった
来院の7、8年ほど前の62歳頃、畑仕事で転倒した際に、上部腰椎(L1・L2)を圧迫骨折した。もともと腰痛餅だったが、そこからさらに強い腰痛に悩まされている。腰から背中全体に張りを感じる。しゃがんで作業をしていると段々と腰痛が気になり、また立ち上がろうとすると時間をかけないと立ち上がるのが困難である。手足にしびれなどはない。圧迫骨折から長期間経過しているため、寝るときもうつぶせになれない程、脊椎は後湾している。
農家をしているが、忙しい時期にもかかわらず、膝に手を当てていないと歩くこともできず、仕事もなかなか進まないとの事。仕事は一人ですべて行っており、すべて自分でこなさないといけない不安もあった。
病院では「変形性脊椎症」と診断され、投薬や電気治療を受けたが毎日通院しなければならず、また改善が見られないので、接骨院でマッサージや鍼灸治療を受けたが、それでも中々改善しなかった。そのために、他県の病院にて、圧迫骨折した個所にボルトを2本入れた。数カ月は良かったが、それでも腰痛が戻ってしまい、腰痛に関しては半ば諦めていた。これ以上手術もしたくないし、旅行などの遊びにも行きたい。そういった今の状態を自分の周囲の方々に相談したところ、一人が当院に通院されており、その方のご紹介で来院の運びとなった。
右仙腸関節の可動域制限
腰部起立筋の過緊張
頚部起立筋の過緊張
脊椎の状態を客観的に評価したうえ、1か月後に仕事が忙しくなり、そこに合わせて動けるようになりたいという希望もあったため、まずは週3回のペースからアジャストメントを開始することとした。初診の問診・検査から右仙腸関節、C1のアジャストメントを行った。アジャストメント後には、右の腰部に違和感があったため、次回チェック予定。
1週目(2回目のアジャストメント)は、夕方ごろ来院。腰部は朝に痛みがあったが、昼間になると症状が軽減したとのこと。しかし、今回のアジャストメント後、脊椎が戻ろうとしているためか、背中全体に痛みがある。脊椎はまるで、お辞儀をしているような姿勢である。
2週目(4回目のアジャストメント)には、サイドポスチャーにて側臥位姿勢を取り、L4にポンピングを行った。単純な可動域検査においても全く動きのないところではあったが、ポンピング後は少し背骨が伸ばせる様子であった。
2週目(6回目のアジャストメント)には、昼に町役場に用事があり、役場にいらっしゃったところ職員に「少し背が伸びた感じがする」と言われ、嬉しい様子であった。腰部の緊張感も初診よりもずっと落ち着いている。腰の痛みも半分程度になった。このころからC1はクリアとなっている。
4週目(10回目のアジャストメント)には、仕事で野菜の箱詰めをしても痛みがなく、楽にできているとの事。アジャストメントの後にも痛みはなく、帰りも体が軽いとの事。あれほど、「痛い、痛い」と周りに言っていた状態から一変して何も言わなくなったため、周りの方が驚いているというご報告を頂いた。前傾姿勢はそのままではあるが、機能的に問題はないということを説明し、施術の間隔をあけていくこととなった。
現在ではほとんどの症状が落ち着いたが、畑での作業がスムーズにできること、健康維持のために月に1回のペースでメンテナンスの通院をしている。
今回の症例では骨盤部のサブラクセーションが放置された結果、脊柱全体に影響を及ぼし、腰部の前弯姿勢が強くなったものと考えられる。人間の体の土台は骨盤であり、その土台が傾くことによって、腰部が不安定になった結果、それを支えるために起立筋が緊張し、腰痛を引き起こしていたものと考えられる。
また、検査では上部頸椎と骨盤に反応があったが、どちらも副交感神経によって支配されている。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあるが、検査では副交感神経支配である上部頸椎と骨盤部の反応が強く見られた。副交感神経が働いていないと、交感神経が過剰に働いてしまう。
交感神経が過剰に活動すると、いくつかの典型的な症状が現れる。これには「鋭い痛み」や「突然の痛み」、「筋肉のけいれんや硬直」、「体の両側に症状が現れる」、さらには「臓器や腺の活動が盛んになること」などが含まれる。今回のケースで首や腰の筋肉が異常に緊張するのも、交感神経が過剰に活動しているからだと考えられる。
執筆者OKA接骨院・鍼灸院・整体院岡芹 侑哉
1993年、埼玉県出身。柔道整復師・鍼灸師の免許取得。接骨院・鍼灸院・整形外科の研修後、接骨院を開業。塩川スクールにてトムソン教室、クレニオセラピー、上部頸椎ボディドロップターグルリコイル、Gonstead seminar修了。現在、塩川スクールの検査のインストラクターとしてカイロプラクターの育成に携わる。