会社を経営などして忙しく働いていたが、定年し代表を引退。その後は奥様と穏やかに暮らしていた。しかし2023年4月に突如耳閉感に襲われた。その後突発性難聴が起こり、それに続き回転性のめまいが発症した。これは何かの病気かもしれないと病院へ駆け込み、耳鼻科、めまい外来にかかった。幸いMRIなどで脳などには異常がないと言われ、通院とめまいトレーニングを行い約4ヵ月でほぼ改善した。
その後も常に弱めのめまいが続いてはいたが気になるほどのものではなく、悪化することもないまま生活していたが首のコリはかなり強く、マッサージには定期的にいくもどれも一時的であまり改善はしなかった。
しかし2024年4月に突然耳閉感、回転性のめまいが再発した。すぐに病院へ行き耳鼻科への通院とめまいトレーニングを続けながらめまい薬と末梢循環改善薬にて治療を続けるも今回はそこまで変化がない状態だった。もう一度検査するもMRIでは脳梗塞の疑いなし、小脳や頸骨脳底動脈も特に問題なしとのことだった。そこからは首のコリもさらに強くなり始め、マッサージの頻度も増えてきた。
めまいの治療を続けている中で中々症状に変化が出ず、首のコリも変化がないまま困り果てていたところYouTubeで塩川満章DCの「めまいもカイロで治療」を見て、これなら希望があるかもしれないと思い来院を決意した。
上部頸椎の過緊張
仙骨の浮腫
4回目のアジャストメント時点までは経過も良く、早いタイミングで上部頸椎の緊張に変化が見られた。
明らかな緊張が抜けてきていて、首のどうしようもないコリもかなり楽になってきていたことに加えめまいも以前よりは気にならないことが増えていた。
8回目のアジャストメント時点では、めまいの症状に少し下振れが見られた。
めまいが強い日が多く、時には吐き気もある日があった。症状の下振れは精神面にも影響が出ているようで、抗うつ剤を処方してもらい服用することもあったとのことだった。
そこで話し合い、次回からのアジャストメントを今までよりも弱い強度で行うことにした。
すると徐々に経過が良くなり、15回目のアジャストメント時には日常生活で気にならないことが増えてきた。
抗うつ剤を服用することもなくなり、吐き気などに悩まされることもほとんどないとのことだった。
また首のコリも感じることが少なくなり、マッサージに行くこともなくなった。
その後もまだまだ症状は上下するものの、以前のような明らかにきついということはなくなっているため、引き続き週1回のペースでのケアを続け悪化予防とさらなる改善を目指している。
今回は常にあるめまいに加え、上部の首のコリも強くある状態だった。
まずめまいの種類としては主に、①回転性めまい、②浮遊性めまい、③たちくらみ、④平衡機能障害などがある。
また原因として、①内耳の前庭器官によるもの、②第8脳神経(内耳神経)によるもの、 ③脳幹及び小脳にある前庭神経核の影響によるものなど大きく3つのパターンがある。
今回は回転性のめまいだったが、回転性のめまいはいくつかの病理的な問題を含んでいる可能性もある。
しかし今回のケースでは病院の診断でも病理的な問題はみられなかった。
めまいに対するカイロプラクティック・アプローチとしては、内耳神経異常や低血糖症によるもの(副交感神経サブラクセーション)や排毒機能低下による毒素の停滞(交感神経サブラクセーションによる甲状腺、副腎、消化器系などの機能低下)、顎関節の問題などが考えられる。
また薬の服用によるものや、女性の場合は妊娠位夜ホルモンバランス異常なども考えられる。
それらを踏まえて問診・検査を行った結果、今回のケースでは上部頸椎にはっきりとしたサブラクセーションを確認することができた。
確信を持ってアジャストメントを続けていく中で上部頸椎の緊張や浮腫がだんだんと抜けていき、首のコリはかなり改善されめまいの変化も出てきていたが、途中から一気に変化がぱたっと止まり症状が強くなり始めた。
筋緊張や浮腫には変化がある中でこういったケースは刺激が強い、頻度が多い、リスティングが間違っている、リスティングを切り替えるタイミングなどのいくつかの理由が考えられる。
今回はこちらとしてリスティングにはっきり確信が持てており、まだ切り替えのタイミングでもないこと、その中で頻度を減らすタイミングではないことから、アジャストメントの強度を落として経過を見ていきたいという旨を伝えた。
患者様から同意を得て、まず上部頸椎のアジャストメントの強度を落として経過を見ていくことにした。
するとそのタイミングから徐々にめまいも落ち着き始め、吐き気が出ることもなくなった。それ以外にも、抗うつ剤を服用することもなくなり、首のコリもさらに激減しマッサージの頻度も激減した。
その後の経過として、プライベートでの大変な事情があったり体調を崩したりなどで精神面含め症状の上下はあったものの、気にならずに生活できるレベルまでに回復し楽に生活を送れているとのことだった。
今回の症例では、まずリスクマネジメントを行い、安全面を確認した上で確信を持ってアジャストメントを行えたことで症状に惑わされることなくケアを続けることができ、結果的に良い方向へ導くことができた。
その中で患者様の自然治癒力を最大限信頼しリスティングに確信を持ってアジャストメントを行うことの重要性や、リスティングだけでなくアジャストメントの方向や深さなども考慮していくことの重要性を再認識することができた症例だった。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室高島 克哉
神奈川県川崎市出身。横浜市の整体院に勤務後、世田谷区で開業。自分の治療法に確信が持てず、様々な治療法を模索し多くの講習会に参加。そんな中、偶然塩川雅士D.Cの記事を読んだことをきっかけにカイロプラクティックの持つ無限の可能性に衝撃と感動を覚える。その後塩川カイロプラクティックスクールに参加し、研修を経て正式に入社。現在は治療にあたりながら塩川スクールのインストラクターを担当する。