

夜も眠れるようになった。
1か月前からお孫さんの面倒を見るために上京し、現在はこれまでとは異なる環境の中で生活している。
約1か月前、特に明確な誘因なく右腕に違和感を自覚するようになった。当初は軽く気になる程度であったため様子を見ていたが、徐々に痛みとしびれを伴うようになり、症状は次第に増悪していった。さらに1週間ほど前からは、右腕の痛みとしびれによって夜間に目が覚めるようになり、睡眠にも支障をきたす状態となっていた。
また、腰部についても以前から家事の後などに違和感を感じることがあったが、同じく1か月ほど前より右股関節にも違和感が出現し、現在も継続している。生活環境の変化や日常動作の負担が重なり、身体全体のバランスが崩れてきている気がしていた。
地元での生活においては、シオカワスクールで学んでいたカイロプラクターのもとに通い、痛みやしびれが出現した際には早期にケアを受けていたため、症状が悪化する前に対応できていた。しかし、上京後はそのようなケアの機会がなくなり、今回のように症状が進行したことに対して不安を感じるようになった。
上京に際して、これまで診てもらっていた先生より当院を紹介されており、「これまでと同じ考え方で身体を診てもらえる」という安心感から、現在の症状の改善および今後の健康維持を目的として、来院に至ったものである。
下部頸椎部にスポンジ状の浮腫
下部頸椎部の可動制限
右仙腸関節の可動制限
レントゲン評価では、腰部レントゲン側面像では、前弯カーブ減少傾向でL3、5がD6レベルと慢性的な段階が確認された。
頸部レントゲン側面像では、前弯カーブは減少傾向で、C5.6.7がD6と慢性的な段階が確認された。
初期集中期では長期の慢性化が考えられてたため、週3回のケアが理想であったが、お孫さんを見ることもあり週2回からケアを始めた。
2週目(4回目のアジャストメント)には、右腕のダルさには変化ないとのこと。右胸鎖乳突筋の緊張や右腰部の起立筋の緊張は軽減してきている。
4週目(7回目のアジャストメント)には、右腕のダルさが軽減してきたと。また範囲が日によって変わったりしていたとのこと。夜も眠れるようになってきた。右仙腸関節と下部頸椎の浮腫も軽減してきた。
7週目(10回目のアジャストメント)には、右腕のダルさは落ち着き、頸肩の違和感と張り感はあるとのこと。お孫さんの抱っこや買い物も問題なくぐっすり眠れると。
11週目(12回目のアジャストメント)には、頸肩周りも気にならなくなってきて日常生活には問題ないとのこと。
現在も定期的なカイロプラクティックケアを希望しており、メンテナンスをしていくこととした。
本症例は、腰部および頸部ともに強い慢性変化がみられ、長い期間にわたって体へ負担がかかっていたことが考えられる状態に加え、右腕のだるさという神経症状を伴っていた症例である。今回の評価では、体の土台である骨盤、特に右仙腸関節に左右差がみられたことから、土台理論に基づいて全身のバランスと神経の働きを捉えていった。
初診時には、右仙腸関節周囲と下部頸椎周囲にむくみ(浮腫)が確認され、右の腰や首の筋肉(腰部起立筋や胸鎖乳突筋)は強く緊張している状態であった。体表温度の検査でも、骨盤から背中、首にかけて左右差がみられ、神経の働きにアンバランスが起きていることが示唆された。また、右仙腸関節や首の骨(頸椎)に動きの制限もあり、骨盤と首の問題が連動して全身に影響していたと考えられる。レントゲンでも腰や首に慢性的な変化が確認され、長期間の負担の蓄積が背景にあった。
ケアを進める中で特に特徴的だったのは、右仙腸関節を調整した後に、右胸鎖乳突筋の緊張が軽減した点である。これは、体の土台である骨盤のバランスが整うことで、その上にある背骨や首への負担が軽減され、結果として首の筋肉の緊張も緩んだと考えられる。つまり、局所だけでなく「土台からの影響」が全身に及んでいたことを示す重要な変化であった。
経過とともに、まず筋肉の緊張やむくみといった体の状態に変化が現れ、その後に右腕のだるさも徐々に軽減していった。初期の段階では腕の症状に大きな変化はみられなかったが、これは長期間負担を受けていた神経が回復するまでに時間が必要だったためと考えられる。その後、症状の出方や範囲に変化がみられながら改善していったことは、神経の働きが回復していく過程として自然な反応である。
さらに、症状の改善とともに「夜しっかり眠れるようになった」という変化もみられた。これは、骨盤と首のバランスが整ったことで神経の流れが良くなり、自律神経が安定してきた結果と考えられる。最終的には、右腕のだるさは落ち着き、首や肩の違和感も気にならなくなり、日常生活やお孫さんの抱っこ、買い物といった動作も問題なく行える状態にまで回復した。
この症例から、体の不調は痛みやしびれが出ている場所だけに原因があるとは限らず、骨盤のような「土台の崩れ」が全身に影響しているケースがあることが分かる。また、慢性的な状態であっても、適切なポイントにアプローチすることで神経の働きが整い、体が本来持っている回復する力が発揮されていくことが確認できた。


執筆者塩川カイロプラクティック金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティックに入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。