右腕のしびれがなくなって、睡眠の質も良くなった!
20年間、デスクワークの事務作業をしており、残業も多いため毎日10時間近く座り作業をしている。社会人になってから腰痛が慢性的にあり、年々酷くなっているように感じていた。週末はいつも整体やマッサージを探すのが習慣になっていて、20年間でどれほどの治療院に通ったか覚えていないほどである。
社会人になってから睡眠の質が悪くなり、それも年々酷くなっているように感じている。子供の頃は睡眠でなにか困るという経験は一度もしたことがなかったが、社会人になってからすぐに寝入りに時間がかかるようになり、ここ数年は夜中に何度も目を覚ますようになった。トイレに起きることもあれば、何もなく目が覚めてしまうこともある。一度、夜中に目を覚ますとなかなか寝付けずに朝を迎えてしまう日も多かった。針治療を受けると2日間くらいは眠れるが、3日目くらいからまた眠れなくなりを長いこと繰り返している。最近は口を大きく開けると顎からガクッと音が鳴るようになり、インターネットで顎関節症は不眠症になることもあると知ってから、顎専門治療院にも通うようになった。また、20年間ずっと睡眠薬を服用し続けている。
4か月ほど前に、仕事中に首が突然重たくなり、首コリなのか肩こりなのか分からないほど固まってしまった。仕事だけではなく、日常生活にも支障をきたすようになったので、近所の整体で首をバキバキしてもらった。治療を受けて首のコリは多少軽減したように感じたが、家に帰る途中で右腕全体が重だるく感じるようになった。すると、その日の夜中に右上全体が焼けるような痛みで目が覚めて、朝には右腕全体がビリビリと痺れるようになってしまった。
整形外科でMRI検査をすると、頸椎5番6番のヘルニアだと診断された。これまで腰痛はあっても首に症状が出たことは一度もなかったので、近所の整体に行くのが怖くなった。3か月経っても右腕の痺れは消えることはなく、仕事でパソコン作業をしていると指先の間隔が鈍いのが分かった。日によって右腕全体が焼けるような激しい痛みが出たり、指先の間隔がなくなったりしていたので、何か良い治療法はないかなと探していたところ、知人の紹介で来院された。
頸部全体の過緊張
頸部左側屈の極端な可動域制限
左仙腸関節の可動域制限
腰部の椎間板にD4レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。
3週目(3回目のアジャストメント)には、隆椎付近の熱感(炎症)が明らかに引いてきた。仕事中の右腕全体が焼けるような激しい痛みは出なくなったが、まだ痺れは強く出ていた。
6週目(6回目のアジャストメント)には、仕事中にパソコン作業をしていても指先の間隔が鈍くなるということはなくなった。また痺れも右肘辺りまで上がってきて、前腕部に痺れを感じることはなくなった。
8週目(8回目のアジャストメント)には、右腕に感じていた痺れはまったく感じなくなった。痺れを感じなくなると、急に肩こりが酷いような痛みが首周辺に感じるようになった。また、この頃になると20年以上あった腰痛はなくなり、本人もそういえば最近は腰が痛くならないですと忘れているくらいだった。
11週目(11回目のアジャストメント)には、首こり・肩こりのような痛みもまったく感じなくなり、日常生活を送る分には支障は一切なくなった。
現在は二度と同じような思いをしたくないと、ケアのペースを1か月に広げてカイロプラクティックケアを続けている。
今回の右腕の焼けるような痛みや痺れの原因は、整形外科でも診断されている通り頸椎5番6番のヘルニアから神経を圧迫していたために起こったものと考えられるが、そもそも頸椎5番6番がヘルニアになってしまうほどの負担は頸椎7番からのサブラクセーションによるものと考えられる。当院が行うカイロプラクティックでは、土台理論と椎間板理論という2つの理論を軸にしている。人間は重力がかかって生活をしているため、下の部位に乱れがあれば上の部位に負担がかかってしまう。また、人間の土台である骨盤部の乱れも頸部に必要以上の負荷をかけていた要因であると考えられる。長いことあった腰痛も改善に向かったが、土台である骨盤部の乱れから腰部に必要以上の負荷がかかっていたことが原因だったのだろう。
経過としても、人間の感覚は【正常→痛み→痺れ→麻痺】の順番で進行していくため、神経の回復過程では必ず【麻痺→痺れ→痛み→正常】の順番で回復していく。今回のケースでは、顕著に指先の方から違和感が取れてきて、首周辺に痛みが集中してきて、改善に向かっていった。
また、今回の症例では不眠症もあった。骨盤部と上部頸椎に反応が強く出ていたことから、通常であれば副交感神経からアプローチをしたかったが、日常生活にも支障をきたしていたほどの右腕全体が焼けるような痛みや強い痺れがあったことから、ケアスタート当初は筋骨格系としてアプローチを開始した。
右腕の症状は改善された後も、不眠症の方はまったく変化が出なかったこと。また、土台である骨盤部をアジャストメントしても、検査で見つかった上部頸椎の反応にはまったく変化が出なかったことを考えると、不眠症の問題は上部頸椎のサブラクセーションが原因だったと考えられる。また顎には一度も触らずに顎から鳴るクリック音は解消したが、顎の問題は首のバランス(特に第一頸椎)が関係しているため、上部頸椎が安定することで顎の問題も解消されたのだろう。
今回の症例のように、右腕全体が焼けるような痛みと強い痺れがあり、また20年以上前から不眠症があるというケースではアプローチする神経系がまったく違ってくる。一度に何か所もアジャストメントを行うと、人間の治るチカラも分散してしまうため、アプローチを分けて行い、神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。