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右脚の痺れ

右脚の痺れ

30代女性
主訴
右脚の痺れ、右足の小指に力が入らない、めまい、耳鳴り、頭痛、下肢のむくみ、末端冷え性
来院に至った経緯

子供の頃からダンスをやっていたが、どれだけ運動して汗をかいても手足など末端が常に冷えていた。ダンスは継続していたが、中学生くらいから右足の小指に力が入らないなと思う日が多くなった。始めはダンス中に右足の小指に力が入りにくいなと思う程度だった。

高校生になると右脚全体が痺れるようになったが、ダンスの道で生きていくと決意していたので、そのまま右脚の痺れをごまかしながらダンスを続けていたが、次第に日常生活での歩行時にも何もない平坦な道でぐらつく感じがするようになった。

大学生になって一人暮らしを始めると、頭痛がするようになった。いつも決まって夕方以降になると両方のこめかみがズキズキするような頭痛が出るので頭痛薬を持ち歩くようになった。大学の先生に相談すると、薬は体に悪いからやめなさいと針治療の先生を紹介されたが、頭痛の頻度は日に日に多くなっていった。

その後、すぐに今度はめまいがするようになり、ダンス中に世界が回るようなめまいが出るようになってしまった。子供の頃からダンスでどれだけ回転しても、めまいが出るようなことは一度もなかったので、どのように対処したらいいのか分からず病院に行くとめまい止めの薬を処方された。

薬は良くないと聞いていたので通っていた針治療で対処していたが、何か根本原因は別にあるのではないかと思い、脳の精密検査を受けたが異常は全くなかった。しかし、しばらくすると今度は耳鳴りがするようになってしまった。

大学を卒業するころには、頭痛、めまい、耳鳴りは慣れっこになってしまい、このままなんとか付き合っていくしかないかと諦めていたが、右脚の痺れや右足の小指に力が入りにくい症状だけはまったく慣れることがなかった。

社会人になってダンス指導の仕事についたが、子供の頃から大学生まで出ていた症状はまったく治まらず、30歳を過ぎたころからは脚のむくみを感じるようになった。

ちょうどその頃、中学校の同窓会で再会した友人に相談したところ、その友人も脚の痺れに悩んでいたが前田先生の施術を受けて脚の痺れが治ったという話を聞いた。

カイロプラクティックは受けたことがなかったが、信頼している友人からの紹介だったので、一度施術を受けてみようと決意して来院された。

初診の状態
  • 01

    右仙腸関節の明らかな可動域制限

  • 02

    右腰部起立筋の過緊張

  • 03

    頸部右胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容

腰部の椎間板にD5レベルと慢性的な段階が確認されたため、週3回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。しかし、仕事が不規則で週1回のケア計画よりも間隔が開いてしまうことも多かった。

4週目(3回目のアジャストメント)には、学生時代からあれほど気になっていた頭痛、めまい、耳鳴りがしなくなった。本人もそういえば最近まったく出ないなと忘れているほどだった。また右脚の痺れが、次第にビリビリと痛みに似た感覚に変わってきた。

8週目(6回目のアジャストメント)には、ダンスレッスン中に生徒に教えている最中に右足の小指に力が入るような気がしてきた。その日の夜、生徒が帰った後に全力で踊ってみると小学生ぶりに右足が地面をつかんでいる感覚が戻っていることに気づいた。

13週目(10回目のアジャストメント)には、右脚の痛みに似た痺れが徐々になくなってくると同時くらいに、右お尻の奥や腰にツッパリ感を感じるようになった。この頃には、そういえば昔のように踊っていても手足が冷えないなと感じるようになった。また30歳頃から感じていた脚のむくみもあまり気にならなくなり、一晩眠ると脚がスッキリしていると感じるようになった。

18週目(13回目のアジャストメント)には、右脚に感じていた痺れはまったくなくなった。ダンス中にも小学生以来20年以上味わったことがないほど体が安定していると感じ、学生時代よりも踊りにキレがあると感じるほど動けている自分に気づいた。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回は、右脚の痺れや右足の小指に力が入りにくいという症状以外に、めまい、耳鳴り、頭痛、下肢のむくみ、末端冷え性などがあった。

検査では、骨盤部のみならず上部頸椎にも強い反応が確認されたが、骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の部位である。夕方以降に出てしまう頭痛は緊張性の頭痛であり、交感神経が過剰に働いている人の特徴でもある。また末端冷え性も交感神経が過剰に働くことで末梢の血管が閉じてしまい、末端まで血液が循環しなくなっている人の特徴である。

めまいに関しては、人間の平衡感覚は耳の働きによって保たれているが、上部頸椎は耳と密接な関係がある。上部頸椎が安定することでめまいの改善にも繋がったのだろう。また耳鳴りは、脳が聞こえない音をなんとか聞き取ろうと過敏になっている場合に起こりやすくなる。過敏になるということは、それだけ交感神経を刺激し続けるということなので、次第に自律神経のバランスにも影響してしまったのだろう。

下肢のむくみは骨盤部が安定することで、下肢への血液循環やリンパの流れが改善されて、むくみの解消に繋がったと考えられる。

主訴である右脚の痺れや右足の小指に力が入りにくいという問題は、人間の土台である骨盤部の乱れから腰部の神経に必要以上の負荷がかかっていたことが要因であると考えられる。

人間の感覚では、神経が損傷していく過程として【正常→痛み→痺れ→麻痺】の順番で進行してしまう。神経の回復過程ではその逆を辿り、【麻痺→痺れ→痛み→正常】の順番で回復していく。

今回のケースでは、最初は右足小指の力が入らない感覚が戻ってきて、それから右ふくらはぎの痺れがビリビリと痛みに似た感覚に変わってきて、その痺れが徐々に膝上の方に上がってきて改善に向かっていったもので、典型的な神経の損傷からの回復過程を辿ったものである。

今回の症例のように、右脚の痺れや右足の小指に力が入りにくいという問題以外にも自律神経系などの症状が出ている場合には、しっかりと神経系を絞る必要がある。副交感神経に絞ってアプローチしたことで下肢の神経の回復だけではなく、自律神経のバランスが整ったことで様々な症状の改善に繋がったと考えられる。

問題個所を特定するだけではなく、神経系を絞ってアプローチして、体の情報を脳へ届けることの重要性が分かる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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