腹部と腰部で挟まれる形で現れる痛みが改善
日頃から仕事がとても忙しく、ここ3〜5年くらいはピークを迎えていた。お子様の成長もあり育児をしつつ、日々を忙しなく過ごしていた。平日は朝6時前後に起床し、長時間のデスクワークをこなす。帰宅は22時を回ることが繰り返されていた。土日も家族の買い物や外出にともなって運転をしたりと、慌ただしい毎日であった。そんな中、朝起きた際に左のお腹と腰がサンドウィッチされるような形で痛みが出ることに気が付く。それが、日に日に増していき、耐えられないところまで進行してしまった。常に手で押圧していたくなるような痛みで、寝起きは非常に痛む。起きてから数歩歩く時にはかなり悪化するような感じがした。また、昔から左の肩から小指にかけてしびれがあり、左の膝も痛めていて満身創痍になってしまう。仕事もさることながら、育児などにも影響がでてきていよいよまずいと焦り、ネットで色々と対象方法を探っていると、たまたまカイロプラクティックがしびれに効くという記事を見つけ、近くで受けられるところがないかと検索すると当院を知り来院に至った。
仙骨1番周辺に浮腫と強い圧痛
左の胸鎖乳突筋の過緊張
左腹部と背部がサンドウィッチで痛む(腹痛など消化器系の問題は関係ない)
左肩から小指にかけてのしびれ
L1の椎間板はD2~3へと慢性化が始まりつつあり、C6に関してはD3で神経圧迫が慢性化している。そのため初期集中期では週1回のケアを推奨し、ケアを開始した。
3回目のアジャストメントでは、左の手の痺れが気にならなくなってきていた。腰に関しては継続で特に変化がない。左の胸鎖乳突筋の緊張が抜けてきているのは良い兆候。
8回目のアジャストメントでは、お腹のサンドウィッチの痛みがほとんど消失していた。それまで睡眠の質も低下していたが、それも安定してきている。
骨盤のブレイクもかなり落ち着いてきており、仙骨にあった浮腫はほとんど消失している。左肩から腕、小指のしびれに関しても消失した。
現在も腹部と腰、そして痺れに関してケアを続けている。
本症例では、患者さまの生活習慣に着目する必要がありました。普段朝8時から夜の10時まで、長年デスクワークを続けてこられてきました。また、土日も家族サービスのため、長時間の運転をしたりと、総じて座り姿勢が多かったと推定されます。人間が取る体勢のうち、座りというのは立っている姿勢よりも負担が大きく、骨盤の動きを制限したり、椎間板に対しても負荷をかけてしまいます。
今回のケースでは、座り姿勢が長時間続いたことによって、骨盤に神経圧迫が発生し、その影響で腰部の筋肉に強いこりが起こったと考察できます。座り姿勢が続くと、骨盤に負担がかかると同時に、神経圧迫が生じて、大腰筋に強いこりがうまれたと推察できます。
ちょうど、患者様が訴えていた痛みの部位は大腰筋の位置と一致していました。
座り姿勢があまりにも多いと患者様自身も気がつき、度々立つようにしてからはさらに腰の経過は良くなっていきました。
また痺れに関しても、座り姿勢でPCを見続けることで、頸部に負担がかかったことは明白であります。
今回のケースでは左の第一頚椎にも神経圧迫があり、それを取り除くことで、首全体の緊張も取り除かれました。またしびれも寛解していきました。さらには、骨盤と第一頚椎は自律神経のうち、リラックスするために必要な副交感神経と密接な関係があります。その部分の神経圧迫が取り除かれたことで、睡眠の問題も同時に改善されていったと考えられます。
本症例では、長年の座り姿勢によって、骨盤に神経圧迫が発生し、それに伴った大腰筋の強いこりが起こした腹部と腰部の痛みであったと考えられました。また座り姿勢が長いということを患者様が気がついた時に、より寛解していったこともあり、私たちのアジャストメントだけでなく、患者様自身が自分の生活や体に目を向けることで、より良い方向へ向かうことができるという素晴らしい症例でありました。
副交感神経領域で絞ってアジャストメントすることで、頸部全体の筋緊張を取り除き、痺れも寛解していっただけでなく、睡眠の問題も改善していったことも、自律神経を意識したアプローチの重要性が再認識できました。
様々な問題が混在していても、原因が不明だとしても、神経圧迫(サブラクセーション)を見つけ取り除くことに特化し、アジャストメントをしていくことで、良い結果がでてくるということがより判明しました。そして患者様もご自身に目を向けることで、より良くなっていくという哲学的にも学びとなる症例であります。
執筆者NEOCHI関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。