
立っていられないほどの症状が改善
元々、腰部脊柱管狭窄症の症状として、間欠性跛行(10分歩くと座って休まなければ歩行が困難になる状態)や、腰部から左下肢にかけての疼痛に悩まれており、「このまま悪化して歩けなくなったらどうしよう」という不安を抱えていらっしゃいました。
日課であった散歩も行えなくなり、身体を動かす機会が減少したことで、日々の生活に活力を見出せなくなっておられました。
整形外科を受診された際には、観血的治療(手術)は行わず、服薬による保存療法で経過を観る方針となりましたが、症状はなかなか改善されなかったとのことです。
そのような折、当院のチラシをご覧になりご来院くださいました。
カイロプラクティックケアを開始されてから10ヶ月が経過した時点で、1時間の歩行でも跛行が出ることはなくなり、ペインスケール(NRS)(10が最大とした時の痛みの度合い)も10→3まで改善されました。
その後も腰部脊柱管狭窄症のケアを目的に通院されておりましたが、ある日、「最近めまいがする」との訴えがあり、ご来院された際に眼振を確認いたしました。
強いめまいを感じていらっしゃったため、その日は施術を行わず、医療機関の受診をお勧めいたしました。
主な症状は、目の焦点が合わないようなめまい感と、立っていることが困難になるほどの不調でした。
まず耳鼻科を受診されましたが、検査では異常は見つからず、処方された薬を服用しても改善は見られませんでした。
続いて脳神経外科にてMRI検査を受けられましたが、こちらでも明らかな異常は認められませんでした。
医療機関にて異常が確認されず、また徒手検査においても陽性反応が見られなかったため、再び当院にてカイロプラクティックケアを実施することとなりました。
首から肩にかけての筋肉のこわばり
腰の筋肉のこわばり
左短下肢
後頭骨~頸椎2番にかけて浮腫感
早期の回復の為に椎間板のレベルと年齢も加味してスケジュール的に来院できる日は来院してもらうことにしました。
初回のケア(アジャストメント)後には、首や肩のこわばりが少し和らぎました。ただし、骨盤の関節(仙腸関節)まわりのむくんだような感じ(浮腫感)はまだ残っていました。
4回目のケアを受けた時点では、「めまいはだいぶ落ち着いてきた」とご本人もおっしゃっていました。ただ、首の上の方(頸椎1番アトラスと呼ばれる部分付近)にはまだ緊張や違和感が見られたため、引き続きケアを行うことにしました。
6回目のケアでは、そのアトラスまわりの緊張や違和感もすっかり消え、ご本人のめまいも完全に感じなくなったとのことです。
ご本人も、カイロプラクティックケアの大切さを実感されており、現在も健康維持のために継続して通院されています。
めまいの一般的な治療としては、まず耳の奥にある内耳の状態を調べる検査が行われます。内耳に異常がなければ、余分な水分を排出するための利尿薬や、神経の炎症を抑えるステロイド、緊張を和らげる抗不安薬などが処方されることが多いです。ただし、こうした薬による治療は、一時的に症状を和らげることはあっても、根本的な改善にはつながらないケースも少なくありません。
私たちの体は、耳の奥にある「三半規管」という器官でバランスを感じ取っています。三半規管の中は「リンパ液」と呼ばれる液体で満たされていて、体が動くとリンパ液も一緒に動きます。この動きによって、「いま体がどの方向に動いているか」を脳が把握する仕組みになっています。さらに、視覚や筋肉、関節などからも情報が神経を通じて脳へ送られ、それらの情報を統合して、脳は最も適切な姿勢や動作を指示しています。このようにして、私たちは無意識のうちにバランスをとっているのです。
しかし、このバランスをとる仕組みのどこかに不具合が起こると、体は動いていないのに「動いている」と錯覚してしまい、めまいが引き起こされます。特に、首や骨盤などにサブラクセーション(神経の圧迫)があると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。その結果、三半規管の中でリンパ液が必要以上に作られてしまい、うまく吸収されずにたまってしまいます。すると、リンパ液が動いていないのに動いているように感じ、体が勘違いしてしまってめまいが生じる、というメカニズムが考えられます。
今回の患者様についても、病院での検査では異常が見つからず、薬を服用しても改善は見られませんでした。当院では体表温度の検査やレントゲン、視診・触診などを行い、原因が副交感神経の働きにあると判断し、首の一番上の骨(C1)や仙骨に対してカイロプラクティックのケアを行いました。その結果、リンパ液のたまりによるむくみが解消され、関節の動きも改善し、体表温度の異常(神経の過剰な反応)も消失。めまいの症状も改善されました。
このように、薬では改善が見られなかった不調でも、神経の働きに着目してアプローチすることで、自然治癒力を引き出して改善することが可能です。
執筆者細井カイロプラクティック細井 康隆
埼玉県さいたま市出身。2011年にスポーツトレーナーとメディカルトレーナーの資格を取得後、2014年に国家資格の柔道整復師資格を取得。接骨院・整体院での臨床と経営経験から多くのセミナー講師を務め、その参加人数は延べ2,000人以上を数える。その後カイロプラクティックと出会い、日本カイロプラクティックのパイオニアである塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.が主宰である塩川スクールで学ぶ。2025年に卒業し、埼玉県さいたま市大宮区にて細井カイロプラクティックを開業。現在は本物の技術を提供するカイロプラクターとして、臨床で多くの患者様と真摯に向き合い施術を行う傍ら、塩川スクールでインストラクターとして後進の指導を行っている。